メルセデス・ベンツ GLB vs BMW X3のディーゼル対決。売れ筋SUVの名対局を渡辺慎太郎が読む!

Mercedes-Benz GLB 200 d × BMW X3 xDrive 20d

メルセデス・ベンツ GLB 200 d × BMW X3 xDrive 20d

SUVファミリーの構成に見る戦略眼

BMWとメルセデス・ベンツのSUVの変遷を振り返ってみると、どちらかと言えばBMWのほうが戦略的に見える。BMWのSUV(BMWはSAV=スポーツ・アクティビティ・ビークルと呼ぶ)はX1からX7までの7種類を展開していて、奇数はいわゆるオーソドックスなSUVで、偶数はクーペライクなスタイリング重視のSUVというようにとても分かりやすく分類されている。

一方のメルセデスは、Gクラスを除くとMクラスが最初のSUVだったが、途中で“MLクラス”と呼び名を変えたり、MLより大きな“GL”を追加した後(GLKなんていうモデルもあった)、SUVの車名の頭には“GL”と付け、GLCやGLEから派生したクーペライクなモデルには“クーペ”と添え、GLは“GLS”と名乗るようになった。

セダンは3とC、5とE、7とSというように、両社の競合車が価格もボディサイズもエンジンバリエーションもほぼ同じところにあるものの、SUVではBMWのX2に対抗するメルセデスのモデルが長らく欠けていた。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dのフロント走行イメージ

X2に対するメルセデスの刺客

X2は全高が1550mmに収まっていて、SUVというよりはちょっと背の高いワゴンのようなスタイリングが特徴で、メルセデスの初代GLAもこれに似たコンセプトだった。そこで、メルセデスはGLAとGLCの間をどんなモデルで埋めてくるのかが注目されていたのである。

結果としてGLBは機能性やパッケージを重視したSUVとして登場し、セールスポイントは3列シートの7人乗りとした。同時にGLAもオーソドックスなスタイリングに変更している。GLAはX1とガチンコで勝負するつもりなのかもしれないが、GLBはX2との直接的な対決を避けたようにも窺える。

順列でいけば、GLBとの比較対象はX2なのだろうけれど、両車のコンセプトがあまりにも異なるため、編集部がその相手として選んだのはX3だった。

BMW X3 xDrive 20dのフロントイメージ

遠目にはほぼ同等のサイズ感

ボディサイズを比べてみると、X3のほうが80mm長く55mm幅広く25mm低く、ホイールベースは35mm長い。2台を比べてみると、近くで見ればX3のほうがやや大きいが、遠くから走っているのを見るとほとんど同じ、というくらいのサイズ感である。個人的には街中でX1とX3を瞬時に見分けるのはなかなか難しくいつも迷ってしまうけれど、GLAとGLBとGLCはとりあえずすぐに区別できる。

もちろん偶然だが、BMWのX1とX2、メルセデスのGLAとGLBはいずれもエンジンを横置きにした前輪駆動ベースのSUVである。そしてX3から上、GLCから上はいずれもエンジンを縦置きにした後輪駆動ベースのSUVであるというのが面白い。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dのリヤビュー

GLBの“異例”なホイールベース

MINIとプラットフォームを共有するX1とX2はいずれもホイールベースが同じであり、通常のクルマの作り方であれば、Aクラスとプラットフォームを共有するGLAとGLBもまたホイールベースは同じであるはず。

ところがメルセデスはGLBのホイールベースをわざわざGLAより延長している。3列目シートと、2列目シートを倒してそこへアプローチするスペースを確保するには、ホイールベースを延長せざるを得なかったのである。したがって今回の2台はボディサイズこそ似たようなところにあるものの、X3のエンジンは縦置き、GLBのエンジンは横置きとなる。

BMW X3 xDrive 20dのエンジンコンパートメントイメージ

守備範囲の広いGLBのディーゼル

試乗車のエンジンはいずれもディーゼルで、そのスペックも似通っている。X3のユニットは1995ccの直列4気筒ターボで190ps/400Nmを発生、GLBは1949ccの直列4気筒ターボで150ps/320Nmを発生する。注目すべきはそれぞれの発生回転数で、X3は190psを4000rpm、400Nmを1750-2500rpm、GLBは150psを3400-4400rpm、320Nmを1400-3200rpmと設定している。

つまりパワーの若干少ないGLBは出力/トルクの発生回転数に幅を持たせて守備範囲を広くしているのである。瞬発力はX3のほうがあるが、どこから踏んでも同じような加速感が得られるのはGLBということになる。

BMW X3 xDrive 20dのフロント走行イメージ

ディーゼルの完成度に見る「一日の長」

そうはいっても、一般道での日常生活領域で両車にパワーの大きな差は認められなかった。その理由はおそらく車両重量だろう。X3のほうがパワーもトルクもGLBを上回るのに車重は120kgも重いので相殺されていると考えられる。

欧州勢はディーゼルとの付き合いが長いから知見も実績も豊富なので、まあとにかく出来がいい。運転している限りはディーゼルであることを実感する場面などほとんどない。音も振動も見事に抑え込まれているいるから、ディーゼルだと知る唯一の手段はタコメーターのレブリミットがガソリンよりも明らかに低くなっている点くらいだろう。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dのコクピットイメージ

名アシスト役を務める8速AT

今回は奇しくも両車とも8速ATだったが、このシフトプログラムも秀逸だった。エンジンの美味しいところを常に引き出しつつ、シフトアップとダウンのタイミングが完璧なのでマニュアル操作をしようという気なんてまったく起こらない。

アクセルペダルを深く踏み込めば、エンジンは気持ちよく吹け上がり、スムーズにシフトチェンジしながらスピードに乗っていく様はX3でもGLBでもほとんど変わらなかった。

BMW X3 xDrive 20dのオフロードイメージ

BMWならではの“FR”的コーナリング

X3のほうが重い最大の理由は駆動形式の違いにある。X3はxDriveの4WDだが、試乗車のGLBは前輪駆動だったからだ。BMWのxDriveという機構はデフォルトの前後駆動力配分というものが基本的に存在せず、状況に応じて常時可変する。とはいえ全般的には後輪寄りの駆動力配分になっていて、これはBMWのお家芸でもあるFRの乗り味を堪能して欲しいというメッセージでもある。

実際、前輪が駆動していると感じるのは発進時やコーナリングの脱出時の再加速の時くらい。ターンインからの旋回ではフロントがイン側へ入ると同時に後ろからボディを回すFRのような挙動を見せるから、こうした一連の動きを「スポーティなハンドリング」と思うならばその通りである。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dのオフロード走行イメージ

GLBは“FF”のネガを払拭

GLBは前輪駆動なので、当然のことながらフロントのほうが重くなる。車検証によれば前軸重は1010kg、後軸重は730kgで前後重量配分は58:42。X3は48:52だから、X3と比べてもフロントヘビーである。

ところが不思議なことに、運転していてそれを痛感することはほとんどなかった。それはおそらくリヤの接地性が高いからだと推測できる。コーナーの入口で制動してもリヤにもしっかりと荷重が残って路面を捉えているので、フロント荷重過多に陥りにくいのである。

リヤに適度な荷重を残したままターインしていくので顕著なアンダーステアも見られないし、再加速時にはもちろんトルクステアも露呈しない。コーナリングにおけるFFのネガな部分はしっかりと処理されていた。プラットフォームが刷新された現行のAクラスから同様の操縦性を示すようになったのだけれど、Aクラスよりも重く重心も車高も高くホイールベースも長いGLBでもそれを実現した技術力はたいしたものである。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dのテールランプイメージ

電制ダンパーいらずの良質なアシ

加えてGLBの特筆すべき点は乗り心地のよさにある。ホイールベースが長く車重も重いX3のほうが物理的には乗り心地に有利のはずだが、GLBのほうがしっとりとした乗り心地を提供してくれるのである。

そしてこの乗り心地は、タウンスピードから高速巡航までほとんど変化がない。試乗車には電制ダンパーが装着されていなかったが、普通のメカサスでこの乗り心地というのは評価に値する。電制ダンパー付きの個体にも試乗したことがあって、それはそれでばね上の動きをうまく制御していたが、個人的にはメカサスの自然の乗り味のほうが好感が持てた。

BMW X3 xDrive 20dのリヤシートイメージ

機能性も動力性能も負けず劣らず

ラゲッジスペースの容量はX3が550〜1600リットル、GLBが500(3列目シート使用時は130)〜1680リットルで似たような広さだが、子供ふたりの4人家族がたまにおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に食事に出掛けるといった使い方をする人にとって、GLBの7人乗りはきっと重宝するだろう。

ちなみにメルセデスは3列目の推奨最大身長を168cmまでとしている。安全性を考慮した正直な申告であり、ジェットコースターの推奨最大身長みたいでもある。

メルセデス・ベンツ GLB 200 dおよびBMW X3 xDrive 20dの2台イメージ

前述のように、セグメントという観点からすれば今回の2台は比較対象にならないのかもしれないが、動力性能や操縦性、使い勝手や機能性は拮抗していると思った。乗車定員以外に両車の差が明らかに大きかったのは車両本体価格。X3の742万円に対してGLBは512万円である。セグメントが違うとはいえ、それでもこの価格差はちょっと開きがあり過ぎるようにも感じた。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/峯 竜也(Tatsuya MINE)

【SPECIFICATIONS】

メルセデス・ベンツ GLB 200 d

ボディサイズ:全長4640 全幅1835 全高1700mm

ホイールベース:2830mm

車両重量:1740kg

エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ

総排気量:1949cc

ボア×ストローク:82.0×92.3mm

最高出力:110kW(150ps)/3400-4400rpm

最大トルク:320Nm/1400-3200rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:FWD

サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク

タイヤサイズ:前後235/55R18

車両本体価格(税込):512万円(テスト車:538万円)

BMW X3 xDrive 20d

ボディサイズ:全長4720 全幅1890 全高1675mm

ホイールベース:2865mm

車両重量:1860kg

エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ

総排気量:1995cc

ボア×ストローク:84.0×90.0mm

最高出力:140kW(190ps)/4000rpm

最大トルク:400Nm/1750〜2500rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:4WD

サスペンション:前ダブルジョイントスプリングストラット 後マルチリンク

タイヤサイズ:前後245/50R19

車両本体価格(税込):742万円(テスト車:827万5000円)

【問い合わせ】

メルセデス・コール

TEL 0120-190-610

BMW カスタマー・インタラクション・センター

TEL 0120-269-437