【コラム】近藤真彦監督終盤戦参加見合わせに思う、モータースポーツメディアのひとりからの意見

 11月11日、文春オンラインに掲載された『「ジャニーズの長男」近藤真彦 25歳下女性社長と「沖縄不倫ゴルフ旅行」』。タレントとしての顔ももつKONDO RACING近藤真彦監督についての不倫報道だが、11月17日、チームが近藤監督のスーパーGT最終戦、スーパーフォーミュラ第5〜7戦への参加見合わせを表明するなど、モータースポーツ界へも余波が及びはじめている。

 近藤監督は、アイドルとして人気絶頂の最中モータースポーツに挑戦を開始。レーシングドライバーとして国内最高峰の全日本F3000/フォーミュラ・ニッポンにも参戦したほか、国内外のレースで活躍した。そんな最中、2000年には自身のチームであるKONDO RACINGを立ち上げ、Fニッポン、さらにスーパーGTに参戦。2019年はニュルブルクリンク24時間にも挑戦を開始している。そんななか、5年間に渡って不倫関係にあったというのが報道の中身だ。

 今回の一件は、近藤監督自身が認めているとおり事実としてはあったのだろう。これについての是非は筆者は論じる立場にはない。モータースポーツを報じる身からすれば、監督やドライバーについてのプライベートは依頼があれば記事にしたり、犯罪や事故が絡めば取材することはあるが、基本は関与しないのが筆者のスタンスだ。いかにコース上で“話題”を提供してくれるかが重要で、サーキットからの帰路、空港で出会っても挨拶をするレベル。誤解を恐れずに個人的な意見を言えば、人の色恋沙汰など、その人が解決すればすむ話で、どうでも良いことだ。ただ、近藤監督はタレントとしての顔ももっている人物。現在の日本の世間からすれば、やはり風当たりが強くなるのはやむを得ないことなのだろう。

 ただ今回の報道のなかで、モータースポーツに関わる身として、ふたつ納得できない部分がある。まず、一連の記事内や、これに対し数多くの読者のコメントがつけられているが、そのなかで「趣味のカーレース」という趣旨の発言が見受けられることだ。近藤監督のドライバーとしてのキャリアの初期こそ趣味の延長だったかもしれないが、国内外のトップカテゴリーで戦い続け、さらに現在の日本のトップカテゴリーで活躍するチームを作り上げるのは並大抵の努力でできることではない。

 ファクトリーを立ち上げ、スポンサーを募り、数十名ものスタッフを動かし、年間数億円もの活動資金を調達し動かすことが、決して日本ではメジャースポーツとは言いがたい環境のなかで、どれほどの辛苦をともなってきたか。近藤監督とスタッフは、その困難に立ち向かい、日本のモータースポーツを盛り上げてきてくれた。「ならば不倫するな」というのは簡単な話なのだが、趣味や片手間でできるようなことではないことを成し遂げてきているのはまずご理解いただきたい。

 そしてもうひとつ、今回の記事内の取材方法を問いたい。記事中、関係を近藤監督に尋ねるくだりが写真付きで紹介されているが、文中にも「11月7日」に聞いたことが記されている。モータースポーツファンならお気づきの方も多かったと思うが、この日はスーパーGT第7戦もてぎの予選日だ。写真から見るに、近藤監督が宿泊した、サーキット敷地内のホテルツインリンクのロビーで取材しているのは間違いないだろう。このホテルは、ゲートを通らなければ入ることはできない。

 タレントにしてレーシングチームの監督という立場である近藤監督に話を聞くのであれば、サーキットというのは非常に手軽だったのかもしれない。ただ、この週末のレースに、週刊誌からの取材申請はされていないのは確認している。

 今季、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、レースを取材するメディアは70名に人数制限がされている。手前味噌な話だが、実績から選ばれ、モータースポーツを愛する方が協力してくれて実現した、PCR検査を受けたライター/フォトグラファーだけがサーキット内での取材を認められていて、レースの取材ができた。まして、レースウイークの近藤真彦監督は、あくまで“監督”であって、タレントではない。我々がネット媒体内で近藤監督の写真を使えるのは、あくまでレーシングチームの監督としての写真だからだ。

 では件の取材者は、チケットを購入してサーキットに入ったのだろうか? この日のもてぎのゲートを通過するには、完売だったスーパーGTのチケットを所持していたか、ホテルツインリンク宿泊者か、またはツインリンクもてぎ内のアトラクション等の施設を使用するための入場料を払う方法があった。

 しかし、この日パドックはたとえチケット購入者でも入場はできなかった。新型コロナウイルス感染防止のため、来場者と関係者は接触しないようにされていたのだ。スーパーGTでは、今季新型コロナウイルス感染者をひとりも出さずにシーズンをやり遂げようと、1500人以上の関係者が一致団結して努力し、ファンも間近で関係者に会えるのを我慢しながら協力していた。トヨタ自動車豊田章男社長でさえ、毎日の体温測定を行って今季前半戦のサーキットに来場していたのだ。

 また、ホテルツインリンクを利用していたスーパーGT関係者に対しては、ホテル内で施設利用のために入場した利用客とは接触しないよう“お達し”が出ていた。どういった手段でホテルツインリンクのロビーまで来たかは分からないが、シーズンをやり遂げるために極力接触を避けようと関係者、さらに言えばファンが努力を続けてきたなかで、ホテルのロビーという“グレーゾーン”を使ってこういった形で取材活動が行われたのは、モータースポーツ界のルールからすれば残念としか言いようがない。

 そんなルールなど、芸能記者からすれば関係ないのかもしれない。彼らも仕事だ。筆者もこの記事を最初に目にしたとき、同じメディアという立場から「ここまでするのか」と正直驚いた。しかし、数字のためならば何をしても良いわけではないだろう。

 これまで、近藤監督が“タレント”としての側面を活かしながらチームを発展させてきた面はあるが、こういった件で一般的な世間から信用が失われてしまったのは残念でならないが、レース界で築いた実績、そして信用が失われたわけではない。いまやモータースポーツ界には欠かせない人物のひとりで、チームの精神的な支柱だ。モータースポーツ側からの意見という“願い”が強くなってしまうが、活動自粛という“禊”を終え、早い現場復帰を願ってやまない。

フィニッシュ後、笑顔でチームスタッフたちと初年度の好結果を喜び合う近藤真彦監督
2019年ニュルブルクリンク24時間 フィニッシュ後、笑顔でチームスタッフたちと初年度の好結果を喜び合う近藤真彦監督