AMG GT R×コルベット Z06×911 ターボSを雨中で吟味! リアルスポーツのウェット性能とは? 【Playback GENROQ 2017】

Mercedes-AMG GT R × Chevrolet Corvette Z06 × Porsche 911 Turbo S

メルセデスAMG GT R × シボレー コルベット Z06 × ポルシェ911 ターボS

パワーの向こう側を垣間見るリアルスポーツ

サーキットテストに続き、いま輝きを放つ最新スーパースポーツ3台がオープンロードにおいて、どのようなパフォーマンスを魅せてくれるのか。それを探ることが当パートの主たる目的であったが、富士スピードウェイでのタイムアタック同様、天候に恵まれなかった。しかし悪条件だからこそ、普段顔を出さない各車の素性が明らかになったと、筆者は語る。

メルセデスAMG GT R、シボレー コルベット Z06、ポルシェ911 ターボSのリヤスタイル

「ブランドの個性と特徴を活かしGT3カテゴリーを彷彿とさせる3モデル」

それぞれの格闘技のチャンピオンクラスの大物が顔を揃えたというのに、これではぬかるんだ田んぼの中で戦わせるようなものだ。土砂降りの中では例え軽自動車であっても、水膜に乗らないように注意しなければならないのに、最も穏当なパワーが911 ターボSの580ps、タイヤは全車20インチ(FR2台の前輪は19インチ)というのだからお手上げである。しかし、ミラーに映る他のクルマを見てどっきり胸が高鳴った。

水煙の中に見え隠れするGT RのLEDヘッドライトも、衝立のようなリヤスポイラーを生やしたコルベットの後ろ姿もカッコいい。ずっと基本的な形が変わっていない911は別格として、雨に煙る山道を行くGT Rもコルベットもニュルブルクリングやル・マンなどの耐久レース、あるいは伝説の公道レースから抜け出してきたように見えたのだ。団塊の世代ではないが、スーパーカー世代からもちょっと外れている私にとっては、公道を走るレーシングカーという位置づけが大好物である。ミッレミリアやタルガ・フローリオ、トゥール・ド・フランス(もちろん自動車のほう)、そしてモンテカルロなどのラリーにも出場していたようなホモロゲ・ベース車に弱いのだ。

歴史は繰り返すというが、現在のGTレースは、1960年代のようにレースでミラーとミラーを擦り合わせているようなスポーツカーの名門ブランドが、実際の路上でもプライドをかけて競い合っている。サーキットを走るレースカーと実際の市販モデルとの間のダイレクトなリンクを顧客に納得させることが重要で、レーシングカーとロードカーが隣り合っていた時代が再び巡ってきたような感じさえする。各ブランドの個性と特徴を活かしたGT3カテゴリーが盛り上がることで、それを活かした高性能スポーツカーを富裕層にアピールできるのだ。

メルセデスAMG GT Rの走行シーン

「手に余るほどの操りがいを分かっている人だけが乗るクルマである」

後れを取っては沽券にかかわるということでメルセデスAMGが投入したGT Rの縦桟グリルはGT3マシンから拝借したものだが、もともとは「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」を制した300SLプロトタイプがオリジナルである。

少しでも雨が弱い場所を探して山道を移動しているうちに雨は止んだが、それを幸いというべきかどうか。依然として道はじっとり濡れており、とても安心して踏めるような状態ではなかったが、一方でトリッキーな路面コンディションでは、素性がはっきり現れるということも事実。緊張の中にも“怖いもの見たさ”の気持ちにちょっぴりワクワクする。

中でもメルセデスAMG GT Rは585psの後輪駆動車の上に、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2という事実上のドライターマック専用タイヤを履いている。最新のスタビリティコントロールシステムが備わっているのは当然だが、だから安心などとは考えないで欲しい。たとえコンフォートモードでも、濡れた路面では少しでも油断すると、いや十分に注意していても、状況次第でたちまちズルリと滑る。この種のスポーツカーを完全に抑え込んでしまっては本末転倒というもの。手に余るほどの操りがいを分かっている人だけが乗るクルマである。

メルセデスAMG GT Rのエンジン

「AMG GT Rはやる気満々の武闘派フラッグシップモデル」

AMG GT3譲りのノウハウを注いで開発したGT Rは、そのロードゴーイングモデルという位置づけだ。もともとこのGT用に開発されたM178型4.0リッターV8ツインターボエンジンは、GTSに対して75ps/50‌Nmの増強に当たる585ps/700Nmを発生する。さらにカーボン製ルーフやトルクチューブを採用し、GTSよりも15kg軽量化したという。ボディの全幅もさらに拡大された上に、フロント部にはアクティブエアロダイナミクスも備わる。とにかくやる気満々の武闘派フラッグシップモデルである。

コルベットと同様、ロングノーズのバルクヘッド側にV8ツインターボエンジンを押し込み、前後重量配分を最適化するためにトランスアクスルレイアウトで7速DCTをリヤに配置したFRクーペは、3.6秒という0-100km/h加速よりも、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで7分10秒9というFR車最速の記録のほうがその性格を示しているだろう。

メルセデスAMG GT Rのインテリア

「恐ろしく強靭な足腰がガシガシ高速道路を踏みしめていく」

ESPを切ればトラクションコントロールを9段階に調節可能なダイヤルがダッシュ中央に備わるが、レースカー同様のそれを試す気にはなれなかった。何しろESPをオフにしなくても、低い速度でもテールスライドを試せたからだ。滑りやすい状況でのスライドはコンローラブルと言えるものの、問題はボディサイズだ。全幅はGT Sよりもさらに55mm拡大され、ほぼ2mに達するため余裕がほとんどない。また長大なノーズがドライバーの前方視界の大半を占めるから、街中ではさすがにちょっと憂鬱である。

ただし、それを除けば予想以上に快適だった。専用サスは無論締め上げられているが、気になる振動やハーシュネスは一切感じられず恐ろしく強靭な足腰がガシガシ高速道路を踏みしめていく感覚だ。他のメルセデスとほぼ同じ安全運転支援システムも備わっている。それも考えてみれば当たり前で、左右だけでなく上下にうねるノルトシュライフェを一昼夜走らなければならないクルマが快適性に配慮していないはずはない。ミスをできるだけ招かないことも優れたレーシングカーの条件である。

シボレー コルベット Z06の走行シーン

「意外なほど当たりが柔らかいコルベットZ06」

ビシッと路面を踏みしめて直進するGT Rに対して、意外なほど当たりが柔らかいのがコルベットZ06。ただし細かな上下動が残ることと、路面のアンジュレーションにもチョロチョロと敏感に反応するステアリングがやや気になる。ゆっくり流すよりもメリハリつけて飛ばした方が好転するタイプと見た。

2013年にデビューした現行型C7コルベットの中の最強モデルがZ06であり、659ps/881Nmを誇るスーパーチャージャー付き6.2リッターV8を搭載する。GT R同様のアルミスペースフレームにカーボン素材を多用したボディ、トランスアクスルの8速ATなどの構成は最新スペックで、日本仕様の標準モデルとなるZ51よりワイドなボディ(全幅1970mm)の仕立てには、かつての大らかなゆるさなど欠片もない。

ただし、軽く、どちらかと言えばピーキーなステアリングホイールを切りながら加速する際は要注意である。スーパーチャージャーが一拍遅れてグワッと唸りを上げると、暴力的なまでのパワーが噴出し、後輪が滑り出せばGT Rよりも大げさにテールを振り出す。トラック及びマニュアルモードを選んでいればまだしもツーリングモードでは驚いてスロットルを緩めたとたんにシフトアップしてふらつくこともある。怪力を使いこなすには繊細さと大胆さが必要なのである。

ポルシェ911 ターボSの走行シーン

「悪コンディションで魅せた最上のパフォーマンス」

FRの2台に比べて911ターボSの安心感は絶大である。911の最高峰モデルであるターボSに乗ってホッとしたのは初めてかもしれない。普段ならそのワイドボディに気を遣うところだが、全幅がわずか(?)1880mmに抑えられているおかげで、ずっと幅の広い2台から乗り換えるとまず心理的なハードルが低い。911はとにかくボディのコンパクトさが印象的で、視界の良さも手伝って身体にフィットしたサイズの服に着替えた感覚だ。しかもRRによる駆動輪の荷重が大きいAWDであるせいで、じっとり濡れて黒光りするコーナーへの進入でも安心感は別次元である。

とはいえ3.8リッターフラット6ツインターボは580ps/750Nmを生み出すモンスター。最もターボラグを感じさせないリニアなパワーの湧き出し方と、即応するレスポンスが乗り手に自信を与えてくれるのだ。カテゴリーやレベルは時代によって異なるが、デビュー当時からもう40年以上もモータースポーツの現場にずっと身を置いてきた911に一日の長があるのは当然と言えば当然、そのロードゴーイングモデルもきわめて実用的だ。

だが、時にはヒリヒリした緊張感も味わいたいという欲張りなユーザーが、相対的に低いレベルで“瞬間芸”を試せるGT Rやコルベットに惹かれる気持ちもよくわかる。スポーツカー乗りは難しいほどより満足する、という実に厄介な人種なのである。それを止める気はないけれどくれぐれもご注意を!

TEXT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG GT R

ボディサイズ:全長4550 全幅1995 全高1285mm
ホイールベース:2630mm
トレッド:前1695 後1685mm
車両重量:1660kg ※1※2
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
圧縮比:9.5
最高出力:430kW(585ps)/6250rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1900-5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前390 後360mm ※3
タイヤ&ホイール(リム幅):前275/35R19(10J)後325/30R20(12J)
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.6秒
CO2排出量:259g/kg
燃料消費率:11.4リッター/100km

車両本体価格:2300万円

※1 AMGカーボンセラミックブレーキ装着車は-20kg。
※2 AMGパフォーマンスシート装着車は+30kg。
※3 AMGカーボンセラミックブレーキ装着車は前402 後360mm

シボレー コルベット Z06

ボディスペック:全長4515 全幅1970 全高1230mm
ホイールベース:2710mm
車両重量:1610kg
エンジンタイプ:V型8気筒OHVスーパーチャージャー
総排気量:6153cc
最高出力:485kW(659ps)/6400rpm
最大トルク:881Nm(89.8kgm)/3600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前394(オプション装着車) 後388mm(オプション装着車)
タイヤサイズ:前P285/30ZR19 後P335/25ZR20
最高速度:未公表
0-100km/h加速:未公表(0-60mph:2.95秒)
車両本体価格(税込):1485万円

ポルシェ911ターボS

ボディサイズ:全長4507 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1541 後1590mm
車両重量:1660kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3800cc
圧縮比:9.8
最高出力:427kW(580ps)/6750rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前410 後390mm ※3
タイヤ&ホイール(リム幅):前245/35ZR20(9J)後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.9秒
CO2排出量:212g/kg
燃料消費率:9.1リッター/100km
車両本体価格:2630万円

※GENROQ 2017年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。