TCRヨーロッパ最終戦:ミケル・アズコナ連勝も、世界戦から転身組のベナーニがタイトル獲得

 2020年TCRヨーロッパ・シリーズのシーズンフィナーレを飾る第6戦が、11月6~7日にスペイン・ハラマで開催され、2018年シリーズ王者で現在はWTCR世界ツーリングカー・カップに参戦するミケル・アズコナ(セアト・クプラTCR/ボルケーノ・モータースポーツ)がレース1を制し、スポットの第5戦から続く3連勝を達成。

 そして2020年ファイナルヒートのレース2は、ジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)がシリーズ初勝利を挙げ、2位に入ったモロッコの英雄メディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)が逆転でチャンピオンの座を手にした。

 全6戦で争われたタイトル争いも、ここスペイン・ハラマで雌雄を決する。欧州で再燃する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響でイベント自体が危ぶまれるなか、パドックではさらに徹底した感染対策を採り入れてのレース開催となった。

 そんな最終戦にも各国からゲストドライバーたちの参戦が相次ぎ、FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRを走らせるPSSレーシングは、アルゼンチンのスーパーTC2000で戦うフランコ・ジロラミを召集。WTCR世界ツーリングカー・カップのレギュラーである兄ネストールと同じく、28歳の弟もホンダのTCR車両をドライブすることとなった。

 また、SMCジュニア・モータースポーツが2台のプジョー308 TCRでエントリーするなど、タイトル争いの行方にも影響を及ぼす可能性のある実力派が揃った。

 その重要な予選セッションで主役を演じたのは、前戦に続いて速さを披露したアズコナで、世界戦の愛機とは異なる旧型クプラをドライブした地元スペイン出身のスピードスターは、テディ&ジミーのクレーレ兄弟(プジョー308 TCR/チーム・クレーレ・スポーツ)をコンマ7秒近くも引き離す圧巻のタイムでポールポジションを獲得。

 4番手にマット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR/BRCレーシングチーム)、5番手にベナーニのトップ5グリッドとなる一方、この最終戦に選手権首位として臨んだマイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/プロフィ・カー・チーム・ハルダー)は、15番手タイムでQ1敗退とまさかの窮地に追い込まれた。

 迎えた日曜午前のレース1は、夜間の雨がダンプ路面を演出したことでアクシデント満載の荒れた展開となり、上位3台がクリーンにスタートを決めた一方で、9番手発進だったシリーズ初の女性勝者ジェシカ・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)がコントロールを失いクラッシュ。

 その際、トップ10圏外から迫っていた世界戦経験者ペペ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ブルタル・フィッシュ・レーシングチーム)のマシンにTボーン状態で衝突し、オリオラは精密検査のためすぐさま市中の病院へと搬送される事態となる(その後無事に退院)。

テディ&ジミーのクレーレ兄弟(プジョー308 TCR/チーム・クレーレ・スポーツ)をコンマ7秒近くも引き離す圧巻のタイムでポールポジションを獲得したミケル・アズコナ(セアト・クプラTCR/ボルケーノ・モータースポーツ)
テディ&ジミーのクレーレ兄弟(プジョー308 TCR/チーム・クレーレ・スポーツ)をコンマ7秒近くも引き離す圧巻のタイムでポールポジションを獲得したミケル・アズコナ(セアト・クプラTCR/ボルケーノ・モータースポーツ)
選手権首位で臨んだマイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/プロフィ・カー・チーム・ハルダー)は、キャリア最低の週末を過ごすことに
選手権首位で臨んだマイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/プロフィ・カー・チーム・ハルダー)は、キャリア最低の週末を過ごすことに
「2度のリスタートで(レインを履く)リヤタイヤの温度管理に気を使った」と語るアズコナが、前戦からの3連勝を達成した
「2度のリスタートで(レインを履く)リヤタイヤの温度管理に気を使った」と語るアズコナが、前戦からの3連勝を達成した

■レース2はウエットの難しいコンディションに

 7周目にレースが再開されると、その2周後にはなんとポイントリーダーのハルダーが1コーナーでコースオフ。フランコ・ジロラミを道連れに自身のレースを終え、タイトル獲得が遠のく結果となってしまう。

 残り5周でセーフティカーが解除されると、首位アズコナは悠々レースをコントロールし、そのままライト・トゥ・フラッグでトップチェッカー。脱落したプジョーのジミー以外、トップ4の顔ぶれは変わらぬままフィニッシュとなり、4位ベナーニが8点差で選手権首位に立って、シーズン最終ヒートを迎えることとなった。

 午後14時のレース2スタートを前に再びシャワーがサーキットを濡らし、グリッド各車は“ミックス・タイヤ”のセットアップでレースへ。ここで優位に立ったのはリバースポール発進のフィリピで、彼のヒュンダイは熾烈な2番手争いにも助けられ、序盤からみるみるギャップを広げていく。

 その背後では、ヒュンダイのナジーがアンドレアス・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)やアウディのベナーニ、プジョーのブリシュ、そして10番手から早くもポジションを上げてきたクプラのアズコナに責め立てられる展開に。

 そんなバトルの渦中にあった4周目。マイク・ハルダーのシビックが再びコースオフを喫してバリアにクラッシュ。今季TCRドイツから急遽転身し、タイトル争いを牽引したハルダー兄弟の兄は、自らのドライビングエラーで欧州チャンピオン獲得の可能性を潰してしまう。

 8周目のリスタート以降、ジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR/JSBコンペティション)らとの攻防を繰り広げたベナーニが、最終的に勝者フィリピの背後2位で17周のチェッカーを受け、前戦勝者アズコナも4位までカムバック。この結果、昨季までWTCRに参戦していたベナーニがTCR規定シリーズでの初タイトルを獲得した。

「このカテゴリーでヨーロッパのチャンピオンになり、本当に競争の激しい分野で栄冠を手にするのは最高の気分だ」と、喜びを語ったベナーニ。

「競争相手には多くの有名トップランナーが揃っていたし、今季は未勝利でタイトルを獲得したが、つねにトップ3に入っていたことが結果につながった。その一貫性こそ成功のカギだったね。私の夢を実現させてくれた、モロッコ国王の継続的なサポートに感謝している」

一時はプジョーのジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR/JSBコンペティション)らに先行されるも、自らの手でレース2の2位フィニッシュを決めたメディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)
一時はプジョーのジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR/JSBコンペティション)らに先行されるも、自らの手でレース2の2位フィニッシュを決めたメディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)
「ミックスタイヤのトリッキーなレースで勝てて良かった。ターゲットと仕事ができて最高だ」と、レース2で初優勝のジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)
「ミックスタイヤのトリッキーなレースで勝てて良かった。ターゲットと仕事ができて最高だ」と、レース2で初優勝のジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)
「非常に優れたドライバーのマイク・ハルダーにも感謝を捧げたいが、今週彼の身に起こったことは本当に残念」と、ライバルを気遣ったメディ・ベナーニ
「非常に優れたドライバーのマイク・ハルダーにも感謝を捧げたいが、今週彼の身に起こったことは本当に残念」と、ライバルを気遣ったメディ・ベナーニ