フェラーリの新時代を築く488GTB&488スパイダー。ターボ論争に決着をつける【Playback GENROQ 2017】

FERRARI 488GTB × 488 SPIDER

フェラーリ 488GTB × 488スパイダー

 

 

究極の跳ね馬2台を徹底検証

V8エンジンをミッドシップに搭載するモデルは、常にその時代のフェラーリの中でも最も硬派なスポーツマシンとして強烈な存在感を放っている。現在、その役を担うのは488GTBと488スパイダーだ。久しぶりとなるV8ターボエンジンを採用して実現した圧倒的なパワーとフレキシビリティ。その魅力を改めてレーシングドライバーの田中哲也とGENROQ編集長の永田元輔が検証する。

フェラーリ 488GTBの走行シーン

田中哲也「強烈なパワーを受け止めるシャシー性能が走りの完成度の高さを生み出す」

フェラーリといえばまず走りの素晴らしさ、そして透き通っていて官能的なサウンドが大きな魅力だろう。特にサウンドは絶品で、もはやエンジンサウンドというより芸術的な音楽といっても過言ではない。その絶品のサウンドを生んでいたV8エンジンは、現行の488からターボを装着するに至った。

そのことに違和感を持つフェラーリオーナーやファンは、おそらくターボラグやサウンド面のことを気にしているのだろう。しかしこれからの時代にスーパースポーツカーが生き残っていくには、フェラーリもダウンサイジングターボにシフトしていく必要があるのだ。今回、改めて488を様々なシチュエーションで試すことで、その特性、そして楽しさを明らかにしてみたいと思う。

まず一般道での488は、発進のスムーズさが印象的である。ギクシャク感がまったくなく、快適。そして坂道発進もまったく気にならない。乗り心地は街中の荒れた道でも突き上げがなく、とてもスムーズで快適のひと言に尽きる。これならば毎日の買い物の足としても気楽に使うことが出来るだろう。

フェラーリ 488GTBのエンジン

「意のままに反応するハンドリングの楽しさは十分に味わうことができる」

そしてワインディングに踏み込んだ時に印象的なのは、速さだけではない。その時の気分によって、走りの特性を大きく変化させることが可能な点だ。ゆったりとした気分のときは物凄く快適に走ることが出来る。おそらくその時には488が持つポテンシャルをほんの少ししか使っていないのだろうが、それでも意のままに反応するハンドリングの楽しさは十分に味わうことができる。そして、その実力をすべて引き出して走ることを楽しもうとすると、488はまた違う一面を見せてくれるのだ。

このV8、3902ccのターボエンジンは、ボクが今まで体験したターボエンジンの中でも最もターボラグが少なくてレスポンスの良いエンジンである。1500rpmからブーストがしっかり掛かりだしていることが体感でき、とても扱いやすい。7速のギヤもクロスレシオになっているので、そのレスポンスの良さをより一層引き立たせてくれる。

さらにアクセルを踏み込んでいくと、ゆったりと走っているときとは別人のように激しい表情が現れる。といってもさまざまな電子制御により、誰でもまるで自分の運転が上手くなったかのような錯覚に陥るくらい破綻なく走れてしまうだろう。しかしひとたび制御をオフにした時には、その爆発的な性能はプロのボクでも緊張感がみなぎってしまうくらいのポテンシャルがある。それはもはや扱いやすいというようなレベルではなく、コントロールはとてもシビア。さすがに670ps&760Nmは一筋縄では手なずけることはできない。

フェラーリ 488GTBのブレーキ

「タイヤのグリップレベルも含めてマシン全体のバランスがマッチングしている」

しかし誤解しないでほしいのだが、488はその強烈なポテンシャルを持つターボパワーをしっかり受け止めるだけのシャシー性能があるのだ。

ステアリング操作に対するレスポンスは鋭く、ボディ剛性はスパイダーでも十分に高い。そのパワーを受け止めるサスペンションが生み出すスタビリティの高さは恐ろしいほどだ。マシンからのインフォメーションも自然でダイレクトであり、タイヤのグリップも手に取るように素直に伝わってくるので、思い通りのドライビングが可能である。素直に開放すると凶暴に感じるほどのエンジンパワーではあるが、488はタイヤのグリップレベルも含めてマシン全体のバランスが非常に上手にマッチングされているのだ。

そしてサーキットにステージを移すと、最も感動するのは488のダウンフォースの大きさだ。可変ジオメトリー機能が付いたリヤディフューザーの効果は絶大。ボクが200km/リッター以上でダウンフォースの変化を大きく体感出来た初めてのロードカーである。速度が上がるほどマシンの安定感も大きく増していく、ずっしりした感覚が素晴らしい。その速度域でもマシンのコントロール性能は非常に高いので、楽しく攻め込むことができるのだ。

フェラーリ 488GTBのインテリア

「すべての速度域で非常に高い完成度を実現した、究極のV8フェラーリだ」

電子デバイスを含めたシャシーまわりの進化、そしてターボエンジンが488の最大の進化点だが、中でも一番大きなポイントであるターボエンジンについては、性能的に458を大きく上回っていることを断言しよう。確かに、その回転フィールにNAほど透き通った感覚はないかもしれないが、ピックアップの鋭さはとてもターボエンジンとは思えぬほどで、あらゆる領域で458のNAエンジンよりも乗りやすく、速い。サウンドについても想像していたより軽快で、フェラーリサウンドとしてまったく違和感を持たなかった。

NAだとかターボだとかは、もはや関係ない。488はすべての道、すべての速度域で非常に高い完成度を実現した、究極のV8フェラーリだといえるだろう。

フェラーリ 488GTBと488スパイダーのリヤスタイル

永田元輔「488の進化は極めて正しい。ターボ論争はもう終わりにしよう」

フェラーリのV8ミッドシップというだけで、どこか心が踊り、ワクワクし、ある種の興奮状態に陥ってしまうのは、クルマ好きのどうしようもない性だ。流れるような美しいフォルム、圧倒的な速さと五感を刺激する操縦性とサウンド、そして何よりもその背景にあるストーリー。308から連綿と続くV8ミッドシップフェラーリには、人を虜にしてしまう何かがある。

そこにはもちろん、世界のスーパースポーツカーの指針となる走りの実力もあるのだろう。だから人は12気筒モデルの圧倒的存在感は認めつつも、V8ミッドシップフェラーリに惹かれてしまうのである。

最新のV8ミッドシップは488GTBと488スパイダーだが、この488ほどファンの間で物議を醸したV8モデルはない。フェラーリのスポーツカー作りの転機となった355から360モデナへの移行の時も、ここまでその是非が話題になることはなかったと記憶している。

フェラーリ 488GTBのインテリア

「F1マチックのスムーズさはまるでトルコンATのようだ」

その最大の要因はもちろんエンジンだ。スポーツカーファンは原理主義者が多いから、V8がNAからターボとなっただけで懐疑的になったりする。V8ミッドシップフェラーリへの憧憬とターボ化したエンジンへの懐疑が入り混じった思い。ともすれば自分自身も陥ってしまいそうな余計な雑念はひとまず置いておいて、真っ新な気持ちで488GTBのコクピットに収まった。

ステアリング上のスタートボタンを押すと迫力の咆哮とともに3.9リッターのV8は目覚める。いささかボリュームが大きいのでは、とも思うが、心は昂ぶる。街中での走りは驚くほど穏やかだ。F1マチックのスムーズさはまるでトルコンATのようだし、不快な突き上げもほとんど感じない。最近のスーパースポーツカーは低速域での扱いやすさも重視しているが、もちろん488もその例に漏れない。

高速道路に入ってアクセルを踏みこんでいくと、V8ターボはいよいよ真価を発揮し始める。まずアクセルに対するレスポンスが素晴らしい。パーシャルスロットルから僅かに右足に力を込めただけで、瞬時に回転が跳ね上がる。その瞬間に感じる回転の軽さは正直NAエンジンにはやや劣るが、即座に発生するパワーとトルクはターボエンジンならではの美点。どこまでも回転が伸びていくので、右足の力をなかなか緩める気にならないのが困ったものだ。

フェラーリ 488GTBのシート

「自在にアクセルコントロールできるのも操る楽しさを倍増させる」

ワインディングでの488は、まさに最速のサラブレッドだ。エンジンの吹けは、さすがフェラーリ自身がターボラグ・ゼロを謳うだけのことはある。また回転落ちが素早いのも特筆すべき点だ。加えてギヤチェンジの素早さは史上最速。コントロール自在のブレーキを踏みながらシフトダウン、ステアリングを切り込みスロットルを開けていく。この一連の動作が楽しくて仕方がない。ステアリングはクイックだが、最近よくある切り始めの必要以上の過敏さはないので、じっくりと切り増していくことができるし、その時の姿勢変化も実にわかりやすい。

調子に乗ってちょっと踏みすぎると670ps、760Nmが炸裂して焦ることもあるが、アクセルでオーバーステアやアンダーステアをコントロールできるのも操る楽しさを倍増させる。もちろん数々の電子制御システムが上手にサポートしてくれているのだが、それをまったく感じさせないのには感心する。

フェラーリ 488GTBと488スパイダーの走行シーン

「その進化が正しかったことは、後の歴史が証明してくれるだろう」

GTBの直後にスパイダーに乗ると、やや上屋の緩さを感じるが、単品で乗ったらおそらく気づかないレベルだ。そしてこれはGTBにもスパイダーにも共通するが、488には金属ボディならではの味がある。カーボンコンポジットのボディは軽くて硬いためか、どうしても安っぽい振動を感じることがある。その点、金属フレームのボディは各部がしなやかに振動を吸収してくれるので乗り味がしっとりしているのだ。もちろん軽さは絶対の価値だが、ストリートカーの味わいはそれだけでは語れない部分もある。

できるだけ真っ新な気持ちで488を味わった結果感じたことは、もうターボ論争は終わりにしてもいいのでは、ということだ。確かに原理主義者は、回転上昇の瞬間や超高回転域でのサウンドなどに感じるターボらしさを指摘するのだろうが、もはやそれがどうした、と言いたくなるほど488は素晴らしい。

そもそも歴史的に見てもフェラーリは過給機に積極的だったし、V8ターボを搭載して今や伝説となっている288GTOやF40という先達もいる。そして488が歴代V8モデルと同じく、スーパースポーツカーの指針となる実力を持っていることもまた事実。その進化が正しかったことは、後の歴史が証明してくれるだろう。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)、永田元輔(Gensuke NAGATA)

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ 488GTB

ボディスペック:全長4568 全幅1952 全高1213mm
ホイールベース:2650mm
トレッド:前1679 後1647mm
乾燥重量:1370kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3902cc
圧縮比:9.4
最高出力:492kW(670ps)/8000rpm
最大トルク:760Nm(77.5kgm)/3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR20
燃料消費率(欧州複合モード):11.4リッター/100km
車両本体価格:3070万円

フェラーリ 488スパイダー

ボディスペック:全長4568 全幅1952 全高1211mm
ホイールベース:2650mm
トレッド:前1679 後1647mm
乾燥重量:1420kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3902cc
圧縮比:9.4
最高出力:492kW(670ps)/8000rpm
最大トルク:760Nm(77.5kgm)/3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR20
燃料消費率(欧州複合モード):11.4リッター/100km
車両本体価格:3450万円

※GENROQ 2017年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。