池沢早人師、21世紀の狼「アルピーヌ A110S」を駆る!【第2回:ロードインプレッション編】

Alpine A110S × Satoshi IKEZAWA

アルピーヌ A110S × 池沢早人師

現代に蘇ったライトウェイトスポーツで思い出の峠を駆け巡る

名作『サーキットの狼』で主人公として登場する“風吹裕矢”は小排気量の「ロータス ヨーロッパ」を駆って、パワーに勝るフェラーリやランボルギーニ、ポルシェたちと互角以上のバトルを繰り広げる。その「柔よく剛を制する」主人公の姿は、作者である池沢早人師先生そのものであり、軽量さとクイックなステアリングフィールを武器に活躍した実際の愛車、ロータス ヨーロッパとの蜜月がきっかけで描かれた物語でもある。

そして今回、「ロータス ヨーロッパの再来」との呼び声も高いピュア・ライトウェイトスポーツ「アルピーヌ A110S」を連れ出し、池沢先生がロードインプレッションを敢行。果たしてアルピーヌ A110Sはライトウェイトスポーツとして十分な性能、そして楽しさをもたらしてくれるのだろうか?

アルピーヌ A110Sの走行シーン

独自のスタイルを貫く個性的なスタイル

前回、話した通り、アルピーヌ A110Sはデザイン的に奢ることなく、シンプルな素材で勝負していることに好感を持った。元祖A110のイメージを踏襲しながらも、現在の環境に合わせたデザインは素晴らしいものだ。

最近のクルマは流行やイメージに流され過ぎて、エンブレムを外したらメーカーさえも判別できないような類似性が与えられている。だが、このA110Sは日和ることなく独自のスタイルを貫いているのが堪らない。オマージュするオリジナルA110のボディデザインを尊重し、余計な飾りを削ぎ落としているのも大きな魅力だ。

アルピーヌ A110Sと池沢先生

軽量なボディと優れた空力性能を兼ね備えた現代スポーツ

とは言え、現代モデルらしくスポーツカーとしての機能を向上させるため、リヤエンドの下面にはリヤアクスル付近まで到達するディフューザーを与えて強烈なダウンフォースを発生させる。ちなみにメーカーからの発表によると高速域での走行時に発するダウンフォースは、フラットフロアとリヤディフューザーの合計で275kgとなり、この値によってリヤスポイラーに頼ることなくハイスピードでの安定性を手に入れたという。

ガレージに佇む現代に蘇ったライトウェイトスポーツを眺め、最初に連れ出す先を箱根と御殿場を結ぶ「長尾峠~箱根スカイライン」と決めた。その理由はロータス ヨーロッパを手に入れて初めて走った道であり、軽量なボディ重量を武器に小さなカーブを駆け抜ける楽しさが味わえる最高のシチュエーションだからだ。「アルピーヌA110S」の実力を試すには最適なテストコースになるはずだ。思い出の地を巡り、記憶に残る元祖ライトウェイトスポーツとの比較をしてみたい。

アルピーヌ A110Sの走行シーン

高速道路では優秀なツアラーとして活躍!

太いサイドシェルを越えてコクピットへと滑り込む。サベルト製のバケットシートはホールド製に優れるものの、ボクの体型には少しばかり大きい印象がある。日本仕様とするならば、もう少しだけタイトさが欲しいところか。

センターコンソールにあるスターターを押してエンジンを始動させると、ミッドシップされた1.8リッターの排気量を持つ4気筒DOHCエンジンが唸りを上げる。スポーツカーとしては決して官能的とは言えないが、その静粛性は実用を考えれば大きな武器になるはずだ。

高速道路での印象は思ったよりもイージードライブが楽しめ、レーンチェンジではハンドルの操舵に対してボディ全体がクイックに反応してくれる。そしてアクセルに対して素直に応答するエンジンは心地よく、ターボチャージャーで武装されているにも関わらずタイムラグも感じさせない。最高出力292psを発生するパワフルさを持ちながらもNAエンジンを思わせる素直な味付けは、ピュアスポーツでありつつロングドライブを快適にこなすツアラー的な性能を押し上げているようだ。

アルピーヌ A110Sをドライブする池沢先生

思い出のワインディングで若き日へとタイムスリップ

高速道路でのドライブを満喫し、懐かしさが色濃く漂う思い出の地へと到着。ここ長尾峠は道幅が狭くタイトなコーナーが続く走り屋の聖地でもある。アクセルをブリッピングし、ワインディングへとアプローチを開始。元祖A110のエンジン搭載位置はRRだったが、最新のA110SはMRへと変更されている。

その恩恵はタイトなコーナーで現れ、ブレーキを残しながら進入しアクセルの開閉でコントロールを図れば、ドライバーを中心にした最小限の弧を描いて走り抜けてくれる。またコーナーからの立ち上がり加速も良く、それが登りであってもパワー不足を感じさせることはない。

さらにスピードレンジの高い箱根スカイラインに入ると、A110Sは本領を発揮する。意思とリンクしたかのようなハンドリングがコーナーの数だけ楽しい。そしてコーナー間のストレートでもしなやかなサスセッティングのA110Sは、まさにこういうワインディングを走るために生まれたクルマだ。これほどまでにクルマと一体感のあるA110Sだから、45年前のロータス ヨーロッパとどうしてもシンクロしてしまう。

アルピーヌ A110Sの走行シーン

A110Sの走りはロータス ヨーロッパを彷彿とさせる

A110Sはアクセルの追従性にややシビアさがあり、アクセルを1cm踏み込めばエンジンとボディはリニアに反応する。これは、アクセルとブレーキで荷重移動を行い、コーナーを攻略するドライビング上級者にとって最大の武器となるが、腕に自信のないドライバーにとっては敏感過ぎると錯覚することもあるはずだ。

45年前に辿ったロータス ヨーロッパとの思い出とA110Sの挙動が重なり、ボディの軽さを武器にドライブを楽しんでいた当時のボクが目の前を走っているような気持ちにさせてくれる。とかく思い出は美化されてしまう傾向にあるが、A110Sの走りは正しくロータス ヨーロッパを彷彿させると言って過言ではない。

1110㎏というボディの軽さを武器に292psのエンジンが繰り広げる世界は「現代に蘇ったロータス ヨーロッパ」という表現に相応しいものだと思う。本家のロータスにはヨーロッパの名前を受け継いだモデルがかつて存在したし、ライトウェイトの称号はエリーゼやエヴォーラ、エキシージなどに受け継がれているようだが、本当の意味での継承者はA110Sなのかもしれない。

アルピーヌ A110Sと池沢先生

半世紀前にタイムスリップしたような感動

今回、アルピーヌ A110Sを駆り、思い出のワインディングを駆け抜けた時間はまるで半世紀前にタイムスリップしたかのような楽しいひと時だった。環境問題や燃費の良さだけが注目され「走る楽しさ」を忘れてしまったクルマたちのなかで、近代ライトウェイトスポーツとして操る楽しさを主張する珠玉の一台は稀有な存在であり、クルマ趣味人にとって大きな存在価値を持つ。

これは巨大産業として成長し過ぎた自動車メーカーではなく、ルノーのプロダクトではあっても「アルピーヌ」のスピリットが継承されたからこそ成し得たサプライズなのかもしれない。次回はアルピーヌ A110Sを相棒として楽しむカーライフとはどうなのか? 使い勝手やツーリング時などの印象をレポートしたい。

TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)

PHOTO/森山良雄(Yoshio MORIYAMA)

【SPECIFACATIONS】

アルピーヌ A110S

ボディサイズ:全長4205 全幅1800 全高1250mm

ホイールベース:2420mm

車両重量:1110kg(※グリ トネール マットのみ1120kg)

エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ+ターボ

総排気量:1798cc

最高出力:215kW(292ps)/6420rpm

最大トルク:320Nm/2000-6420rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

ディスク径:前後320mm

タイヤサイズ:前215/40R18 後245/40R18

最高速度:260km/h

0-100km/h加速:4.4秒

車両本体価格(税込):899万円~

【問い合わせ】

アルピーヌ コール

TEL 0800-1238-110