理想のスポーツ4WDはどちらか? アウディ R8とポルシェ911ターボSがサーキットで激突!【Playback GENROQ 2016】

Audi R8 V10 Plus × Porsche 911 Turbo S

アウディ R8 V10プラス × ポルシェ911ターボS

4WDバトル勃発!

ミッドシップに4WDという新しいスポーツカーの方程式を実現したのは4WDの老舗であるアウディであるのはあらためて言うまでもない。そこで新型R8の実力を確かめるべく、対抗馬に911ターボSを用意。富士スピードウェイを舞台に、この両雄に田中哲也が対峙した。

ポルシェ911ターボSの走行シーン

「驚くべき旋回性能の高さ。もはやリヤエンジンを意識させない」

ポルシェ911の代名詞といえばリヤエンジンだ。それ故に911は後輪のトラクションが非常に高いのは当然である。とはいえ、500psを超えればハイパワーと言われていた時代は過ぎ去り、600psすらも普通と思えるのが現代である。さすがにこれほどのパワーともなると、後輪駆動だけでは、ある程度の腕前がないとコントロールしきれないのが現実だ。

そこで911の場合、ターボSのような4WDが効果を発揮するのだが、そこはさすがにポルシェである。自らがスポーツカーメーカーであることは絶対に忘れない。サーキットで911ターボを走らせていると、ある意味4WDであることを忘れてしまうほど旋回性能の高さに驚かされるのだ。それでいてパワーをかければ、しっかりフロントが駆動して引っ張ってくれることを実感できる。4WDシステムのセッティングも、911本来の後輪駆動がベースにあって、あくまでも邪魔にならないくらいの配分でフロントの駆動を使うのである。

ポルシェ911ターボSのインテリア

「4WDからイメージされるアンダーステア傾向はまったく感じられない」

具体的に説明しよう。たとえばFSWの100Rを例に挙げると、コカ・コーラコーナー立ち上がりから100Rにかけて全開でアプローチしていく時、アンダーステアが発生し自然と外に膨らんでいく。そこでアクセルをすこし戻してやると、タックインのようにフロントグリップが回復して、アンダーステアが消える。タイミングによってはオーバーステア気味にもできる。

一般的に4WDからイメージされるアンダーステア傾向はまったく感じられない。さらに、そのタイミングでアクセルを踏み込み、パワーをかけてやれば、フロントタイヤが適度に引っ張ってくれて、ニュートラルステアでヘアピンの入口に向けて加速できるのである。

とはいえ、ターボSがスライドした時の慣性は、リヤの重さもあってミッドシップ車と比較してどうしても大きくなる。そのため、高速でオーバーステアが発生した時のリヤの収まりが本来なら遅くなるはずだが、まったくリヤの不安定さを感じないのだ。このあたりにリヤステアの出来のよさが感じられる。最近の911はもはやリヤエンジンを強く意識させないくらいにバランス良く曲がってくれる。

ポルシェ911ターボSの走行シーン

「もしかするとこれがスポーツカーの理想形なのではないか」

これは、ボディ剛性の高さからくる部分も多いように思う。すべての部分にしっかり感があるから前述のような100Rで、あいまいなグリップや挙動変化がなく、しっかりしたグリップのインフォメーションを感じることができるのだ。この剛性感は最近のポルシェではニューモデルになるほど体感することができ、ステアリングにもしっかりしたグリップと重みを感じられる。

ポルシェはいつの時代も今までの次元を超えて、そのパッケージの中でどれだけ速く、スタビリティを高め、コーナリング性能を高め、そして安心感のあるクルマが造れるか目指しているかが明確に感じられた。ターボSというリヤエンジン4WDカーに乗ると、室内の広さも含めて、もしかするとこれがスポーツカーの理想形なのではないか、と思えてならないのだ。

アウディ R8 V10プラスの走行シーン

「R8の本質はやはりクワトロ。それが素晴らしく賢い」

クワトロがアウディの代名詞であることは今さら言うまでもない。そしてミッドシップスーパースポーツとして生まれたR8の大きな特徴は4WDであることだ。

初代R8初試乗の感動は未だに鮮明に脳裏に焼き付いている。当時としては驚くほど洗練されたミッドシップ・クワトロは、ボクにとって衝撃的だったのだ。それまでのハイパワーミッドシップは“優しい”乗り味を想像できなかった。しかし初代R8はそれを完全に覆したのである。そして、それを受け継いだのが新型R8だ。

スーパースポーツの王道とも言えるミッドシップレイアウトは、ご存知の通りエンジンをクルマの中心寄りに搭載することでマシンのコーナリングバランスを高められる。単純にエンジンをミッドに積めば走りやすいかというと一概にはそうではなくて、バランスが悪く、乗りにくいミッドシップもある。

アウディ R8 V10プラスのエンジン

「R8はまるでFFのようにフロントタイヤでクルマを前に前に進めていく」

R8に乗ってボクはふたつの部分に素晴らしさを感じた。ひとつめはミッドに積んだエンジンが低重心に感じられること。それはコーナリング中に感じられ、ロールが低いところで発生しているような印象を受ける。それによりキビキビした挙動を体感できる。ふたつめは4WDの素晴らしさである。特にレインコンディションでテストした際、フロントの駆動のかけ方が明らかに前モデルより上手になっていたのだ。

4WDをスポーツカーに使う時の一番のメリットは4輪すべてを使って限界を高め、コーナー出口で有効にトラクションをかけることである。反面ブレーキングからエイペックス付近にかけて曲りにくい。つまりアンダーステアが発生しやすくなる。R8はミッドシップの旋回性能をうまく利用して、その曲がりにくい部分を薄めている。おそらくサスペンションや4WDシステムをうまくバランスさせ、曲りやすさを実現しているのだ。

エイペックスを抜けて、コーナー出口でパワーをかけていく時もフロントの引っ張りをスムーズにし、唐突感をあまり出さないようにしている。しっかりと駆動力を発生させ、リヤがスライドすることもなく、もっとも駆動をかける部分ではまるでFFのようにフロントタイヤでクルマを前に前に進めていくのだ。ステアリングを切っている方向にどんどん進んでいくイメージだ。

アウディ R8 V10プラスの走行シーン

「ミッドと4WDの美味しいところをすべて使って最高レベルを実現したR8」

テスト車がV10プラスという上位グレードということもあって、全体にスポーティな仕上がりになっているが、R8の本質である4WDはやはり素晴らしく賢い。

つまりR8はミッドと4WDの美味しいところをすべて使って、最高レベルのコーナリング性能を実現しようとしたクルマだ。それにより500psを超えるハイパワーでありながら、驚くほど安心感があるミッドシップ4WDのスーパースポーツができあがった。

実際に走らせているとNSXと少しイメージが重なる部分があるものの、R8のほうが明らかに4WDとしての挙動がはっきりしている。初代で感動したミッドシップ・クワトロの好印象は、新型になって今まで以上に強くなった。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/森山俊一(Toshikazu MORIYAMA)/服部真哉(Shinya HATTORI)

【SPECIFICATIONS】

アウディR8 V10 plus クーペ 5.2 FSIクワトロ

ボディスペック:全長4426 全幅1940 全高1240mm
ホイールベース:2650mm
トレッド:前1638 後1599mm
車両重量:1630kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC40バルブ
総排気量:5204cc
ボア×ストローク:84.5×92.8mm
圧縮比:12.5
最高出力:449kW(610ps)/8250rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前380 後356mm
タイヤサイズ:前245/30R20 後305/30R20
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.2秒(スポーツタイヤ装着時=3.1)
燃料消費率(EU複合):12.3リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):287g/km
車両本体価格(税込):2906万円

ポルシェ911ターボS

ボディスペック:全長4507 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1541 後1590mm
車両重量:1600kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC24バルブツインターボ
総排気量:3800cc
ボア×ストローク:102×77.5mm
圧縮比:9.8
最高出力:427kW(580ps)/6750rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2100-4250rpm
最大トルク(オーバーブースト時):750Nm(76.5kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前410 後390mm
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後305/30ZR20
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.9秒〈スポーツクロノパッケージ装着時)
燃料消費率(EU複合):9.1リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):212g/km
車両本体価格(税込):2599万円

※GENROQ 2016年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。