ベントレー、2030年までに全ラインナップのフルEV化を決断! 長期計画「ビヨンド100」戦略を発表

持続可能な高級自動車メーカーを目指す20年間の長期計画

ベントレーモーターズは2020年11月5日、持続可能なラグジュアリーモビリティのグローバルリーダーを目指し、新たな企業戦略「ビヨンド100(BEYOND100)」を発表した。

ベントレーは真に持続可能なラグジュアリーを提供するためあらゆる側面から事業を見つめ直し、次の100年に向け組織全体で二酸化炭素の排出量をゼロにすることと、あらためてエンドツーエンド(端から端まで)でのカーボンニュートラルの達成を目標に掲げた。

この目標達成に向け、ベントレーの事業全般及び製品全般を対象とする変革プログラムを実施。2026年までに全ラインナップをプラグインハイブリッドとバッテリー電気自動車(BEV)に切り替え、2030年までにBEVのみをラインナップする計画を推進する。

ベントレーは今回の発表により、次の100年も希少価値がありながら汎用性を持つクルマを作り続けていく姿勢を明確に打ち出した。12気筒ガソリンエンジンの世界ナンバー1メーカーが、今後10年で内燃エンジンを搭載しないクルマを生産するメーカーへと進化し、持続可能なラグジュアリーモビリティのリーダーとして生まれ変わることになる。

「ビヨンド100」戦略は、先進的かつ革新的な経営目標が盛り込まれた20年にわたる長期計画。ベントレーは自社の事業活動が環境、社会、経済に与える影響に対して社会的責任を果たすという強い自覚を持って、80年の歴史ある本社工場のカーボンニュートラル化を英国高級自動車メーカーで初めて実現する。

こうした取り組みと並行して、グローバル市場において過去最高となる68の地域へと事業を拡大。長期的に安定したビジネスモデルを構築し、新たな100年に向け確固たる基盤を築いてきと言えるだろう。今回のビヨンド100に関して、ベントレーモーターズのエイドリアン・ホールマーク会長兼CEOは以下のようにコメントした。

「ベントレーは1919年以来、常にラグジュアリー・グランドツーリングの在り方を示してきました。かつてのベントレー・ボーイズがパイオニアでありリーダーであったように、私たちも最前線で進化し続けるDNAを受け継いでいます。そして今、『ビヨンド100』戦略に沿って生まれ変わろうとしているベントレーは、今後もラグジュアリーカーメーカーの世界的ベンチマークとして業界をリードしていきます」

「生まれ変わるのはベントレーの製品だけではありません。信頼される誠実な経営を行いつつ、事業全体を劇的に転換するパラダイムシフトを実現します。100年の歴史を誇るラグジュアリーカーメーカーが今後10年で持続可能かつ倫理に根差したロールモデルへと姿を変え、皆様に新たなラグジュアリーをお届けします」

ベントレーが新たな企業戦略「ビヨンド100」を発表

2025年にベントレー初のフルEVモデルを投入

ベントレーは事業活動全体を対象にした体系的なサステナビリティプログラムを土台とし、ラグジュアリーカーブランドとして2030年までに「エンドツーエンド」におけるカーボンニュートラルの達成を目指す。このサステナビリティプログラムには、全ラインナップを対象とした電動化モデルの開発をはじめ、事業活動とティア1サプライチェーンが環境に与える影響への改善、販売ネットワークとの協力体制の改善などが含まれている。

ビジネスモデルの再定義の根幹をなすのは、電動化へのさらなる加速だ。2023年までに全ラインナップにハイブリッドモデルを導入し、2025年にはベントレー初となるピュアEVモデルの発売を予定していることはすでに発表済みだが、さらに一歩踏み込んだゼロエミッションモビリティの内容が明らかになった。

まずは2021年に新たなPHEVを2モデル発表。さらに2025年に発売が予定されているベントレー初のピュアEVモデルが完全なカーボンニュートラルを実現するための重要な転換点となり、2026年にはラインナップのすべてがPHEVとBEVに。そして2030年には全ラインナップがBEVのみとなる。

ベントレーは創立100周年に電気自動車のコンセプトカー「EXP 100 GT」を発表し、電動化の未来の形を示した。このコンセプトカーには持続可能な素材を数多く採用。5千年前の倒木に銅を溶け込ませた「リバーウッド」木材や、伝統的な方法で生産されたウールカーペット、ワイン醸造過程で生まれる副産物を原料としたレザーなどがインテリアに採り入れられている。そして、ベントレーは現在生産中のクルマはもちろん、今後生産するクルマにおいても持続可能な方法で調達された材料のみを使用していくことになる。

ベントレーの生産拠点である英国・クルー工場は昨年、英国高級自動車メーカー初となるカーボンニュートラル認証をカーボントラスト社から取得。この認証取得に向け、ペイントショップで使用する水のリサイクルシステムの導入、地域での植樹活動、本社駐車場へのソーラーパネル1万枚の設置(既存のソーラーパネルとの合計で3万枚)、再生可能電力への完全移行など、20年にわたり革新的な取り組みが行われてきた。

今後もクルー工場は環境を意識した活動をさらに進めていくことになる。関連サプライヤーは2020年末までにサステナビリティに関する監査に合格し、サステナブルなサプライヤーであることを証明。また、エネルギー消費削減、CO2や廃水の排出量削減、塗装工程における溶剤の使用廃止、プラスチックニュートラルの実現などを中心に、2025年末までに製造工程が与える環境負荷のさらなる低減を目指していく。

こうした活動を通して、2030年までに「クライメートポジティブ」な工場、つまり温室効果ガスの排出量よりも削減量が上回る工場へと移行。大気中への炭素放出を積極的に削減しつつ、再生可能エネルギーや植林活動への投資も行っていく。

ベントレーが新たな企業戦略「ビヨンド100」を発表

財務面の復原力を強化、不況に強い体質に

持続可能なラグジュアリーモビリティを実現するには、持続可能なビジネスモデルが必要不可欠となる。ベントレーは財務面の復原力を強化し、不況に強いラグジュアリーカーメーカーとして世界的ベンチマークとなることを目指している。

2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行が経済にマイナスの影響を及ぼしていることを受け、ベントレーはこの100年で最大となる変革プログラムを導入した。

ベントレーが推し進めたのは、事業全体の生産性を迅速に向上させつつ、抜本的な構造改革に取り組み、財務面での復原力を維持すること。当初は正社員1000人を削減する方向で希望退職者を募ったが、その後、請負社員約200人を含めた800人の削減に変更している。

希望退職者を募ったことにより、解雇の対象となる人員数は当初の予定を大幅に下回るわずか10人に減らすことが可能になった。現在も解雇を回避するための対応策を検討中だという。

このようにコストと投資を包括的に見直した結果、厳しい外部環境にも関わらず、2020年は通年で良好な業績を達成できる見込みとなった。この新たな組織構造が、今後100年も安定的に収益を上げることができる持続可能なビジネスモデルの基盤となる。

ベントレーが新たな企業戦略「ビヨンド100」を発表

今後のベントレーを支える優秀な人材の育成

持続可能な価値の創造を担うのは優秀な人材であり、積極的に人材を育成してその力を発揮してもらうことが重要だが、今後クルマの設計と製造には今まで以上に多様な人材が必要となる。一部の分野では再訓練を実施することで人材を確保することになり、デジタル分野に精通するスタッフを含む幅広い人材の育成と採用も必要とされている。

ベントレーは、本社を置くチェシャー州の学校や大学と協力して人材の育成に努め、ベントレーが創設に関わった「クルー・エンジニアリング&デザインUTC」ともさらに緊密な関係を築いていく。

ベントレーブランドの経営理念や将来のビジョンを明確に示し、働きたい企業とみなされる自動車メーカーとなることにも尽力。多様な人材を受け入れ、管理職におけるダイバーシティを現在の2割から2025年までに3割へと引き上げることも目指している。

ベントレーは今後100年もクルー工場にてハンドクラフトによるクルマ作りを継続するが、デジタル化に備え、研究開発棟として車両テストセンターとローンチクオリティセンターの2棟を新設する計画を持つ。

事業拡大とデジタル化への重点的な取り組みによって、ベントレーが価値主導型の企業であることを印象づけ、デジタル化が進む世界においてサステナビリティやイノベーション、コラボレーションといった点をこれまで以上に重視し、カスタマーの価値観の変化に対応していくことになる。

ベントレーが新たな企業戦略「ビヨンド100」を発表

100年間の歴史を未来へとつなげる「ビヨンド100」戦略

デジタル化の再定義は組織内だけでなく、ベントレー・ブランドのカスタマーが利用するシステムにも及ぶことになる。ベントレーでは「プロダクト・ビジュアライゼーション」「コ・クリエイション」「デジタルジャーニー」など、カスタマーと直接つながるコネクテッドサービスネットワークを現在積極的に構築中。これらのシステムによって、全方位に行き届いたカスタマーサービスを提供できるようになるという。

また、「ビヨンド100」は電動化を加速するだけでなく、ベントレーのビスポーク部門であるマリナーの役割もさらに強化される。マリナーは現在「マリナークラシック」「マリナーコレクション」「マリナーコーチビルド」という3部門で構成。最近発表された「バカラル」はマリナーの新時代を象徴する1台となった。バカラルはマリナーコーチビルドが手掛けた最初の作品であり、EXP 100 GTと同じ持続可能な素材が採用されている。

これまで100年間、ベントレーはグランドツーリングを定義してきた。今後もカスタマーに最高の体験を提供することで、高い評価を受けてきたベントレー・ブランドの魅力を維持。さらに、ラグジュアリーカーを求める潜在的なカスタマーにアピールするため、パイオニア精神を忘れずサステナビリティにおけるロールモデルとなり、社会的責任を果たすブランドのリーダーを目指していく。

今回発表された「ビヨンド100」戦略を通して、ベントレーは変革の波にさらされている自動車業界において、先進的で確固たる地位を築いていくことを宣言したと言えるだろう。