覚えていますか「横断歩道は歩行者優先」。無視して通過すると大事故や罰則も! 

■横断中の歩行者無視は違反行為

自動車教習所では必ず「横断歩道は歩行者優先」と習いますが、実際はどうでしょう?

ロードサービスを手掛けるJAFが、2020年8月12日〜8月26日に行った実態調査では、なんと全国で約8割のクルマが、信号機がない交差点で歩行者が横断歩道を渡る際に一時停止をしなかったそうです。

横断歩道は歩行者優先を無視すると大事故や罰則に
信号機がない横断歩道に歩行者がいれば一時停止が原則

実際に、こういった行為は法令違反として罰せられる行為ですし、歩行者をはねてしまう交通事故の原因として最も多いといわれています。そこでここでは横断中の歩行者優先について、改めてその実情や、違反するとどうなるのかをまとめてみました。

●信号機がない交差点での実情

まず、JAFの調査内容を簡単に説明しましょう。

これは全国の各都道府県2箇所ずつ、合計94箇所の信号機が設置されていない横断歩道で、JAF独自に実施されました。調査期間は、前述の通り、2020年8月12日〜8月26日で、そのうち月曜日から金曜日の平日のみ、10時〜16時の時間帯で実施されています(横断歩行者はJAF職員が担当)。

JAFが発表した調査結果によると、期間中に全国の信号機がない交差点を通過した車両9434台のうち、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は2014台(全国平均21.3%)。前年度の調査よりも4.2ポイントの増加にはなったものの、依然として約8割のクルマが「止まらない」という結果だったそうです。

ちなみに各都道府県別の一時停止率ベスト5では、1位が長野県の72.2%で2位は兵庫県の57.2%、3位が静岡県の54.1%、4位が新潟県の49.4%、5位は島根県の43.2%。逆にワースト5は、1位が宮城県の5.7%、その次が東京都の6.6%、岡山県の7.1%、徳島県11.8%、香川県12.1%といった順番になっています。

●大都市の方が歩行者無視が多い?

JAFでは、調査場所は各都道府県内で2箇所ずつのため、都道府県内すべての市町村の箇所で同様の数値(傾向)とは限らないとしています。

ただ、大都市圏では、一時停止率が比較的低い傾向にあるということはいえるでしょう。

たとえば、日本の人口の約30%が集中するという首都圏(1都3県)では、ワースト2位の東京都と12.4%の埼玉県が全国平均を下回っており、神奈川県も23.4%、千葉県26.7%と軒並み低い割合に。ほかにも、大阪府が11.8%、愛知県32.5%、福岡県31.4%と、大都市圏ではあまり一時停止率が高くありません。

横断歩道は歩行者優先を無視すると大事故や罰則に
人もクルマも多い大都市の方が、歩行者優先は守られにくいのかもしれない

原因は定かではありませんが、恐らくクルマの交通量や渋滞が多いことが関係しているのかもしれません。せわしない都会の道を走るドライバーの方が、歩行者に注意を配る余裕がないことも考えられます。もちろん、だからといって歩行者の横断を無視したり、妨害するのは御法度ですが。

筆者はかつて、アメリカの西海岸や中西部、東海岸など、様々な都市を取材などで旅をした経験があります。そしてほとんどの街で筆者が歩行者として横断しようとすると、必ずといっていいほどクルマは一時停止してくれました。

横断歩道は歩行者優先を無視すると大事故や罰則に
ニューヨークのタイムズスクエア周辺。イエローキャブ(タクシー)は歩行者にとってちょっとやっかいな存在?

アメリカで歩行者が歩けるような住宅街などは(昼間でも歩くと強盗に遭うような危険なエリアもある)、あまり道が混雑しておらず、ドライバーにも心の余裕があったのかもしれません。

ただしニューヨークだけは例外。特にタクシーは最悪で、信号機がない狭い路地などで道を横断しようとしても全く止まる気配がなく、ちょっと怖い思いをしたこともあります。

そう考えると、あくまで想像ではありますが、国を問わず、クルマの交通量とドライバーの歩行者への配慮には、何らかの因果関係があるかもしれません。

●歩行者優先違反は罰則もある

いずれにしろ、JAFの調査で分かることは、信号機がない交差点で歩行者を無視して通過するクルマが多いという事実です。

道路交通法では、第38条第1項で、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合は一時停止をして、その通行を妨害しないように定めています。また、横断歩道がない交差点でも、第三十八条の二で、「車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない」としています。

横断歩道は歩行者優先を無視すると大事故や罰則に
横断歩道がない交差点でも歩行者優先がルール

つまり、信号機がない交差点では、横断歩道があってもなくても、「歩行者が優先」ということは変わらないのです。

なお、横断歩道がある場所とない場所のいずれも、歩行者優先を守らない(歩行者の横断を妨害する)と、

罰則:3月以下の懲役又は5万円以下の罰金
反則金:大型車1万2000円、普通車9000円、二輪車7000円、原付車6000円
反則点数:2点

といった厳しい処分が待っています。

●死亡事故の約7割は歩行者横断中

警察庁の発表では、平成27年(2015年)から令和元年(2019年)までの過去5年間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故は5931件。そのうち、約7割の4278件は歩行者が横断中の事故だったといいます。

横断歩道は歩行者優先を無視すると大事故や罰則に
2015年から2019年までの間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故5931件中、約7割の4278件は歩行者が横断中の事故(出典:警察庁)

また、横断中の事故のうち、約7割の2923件が横断歩道以外の場所を歩行者が横断している時に発生しているそうです。

これらデータからも、信号機がない横断歩道はもちろん、横断歩道のない交差点でも、それらの手前では十分に減速し、いつでも止まれる準備をする必要があることが分かります。ちなみに、前述の横断歩道以外の場所で発生した死亡事故2923件のうち、約8割は歩行者が走行中の自動車の直前直後を横断していたといいます。

道路交通法では、第十三条で「歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない」と定めています。つまり歩行者が横断中の事故では、歩行者側に法令違反があったケースも多いのです。

かといって、クルマを運転中に歩行者と衝突してしまえば、ドライバー側も注意義務違反など、何らかの責任を問われることは間違いないでしょう。

当たり前のことですが、特に信号機がない交差点や細い路地では、歩行者や自転車がいつ飛び出してくるか分からないので、改めて十分に注意することが必要なのです。

(文:平塚直樹 *写真は全てイメージです)