ロータス エキシージとポルシェ718ボクスターS、選ぶべきミッドシップスポーツはどっちだ!? 【Playback GENROQ 2016】

Lotus Exige Sport 350 × Porsche 718 Boxster S

ロータス エキシージ スポーツ350 × ポルシェ718ボクスターS

 

 

悩ましきミドルサイズの選択。

ミッドシップスポーツを手軽に愉しめるミドルクラスのモデルは、ロータスとポルシェの両雄が激しく鎬を削っている。時代の要求に合わせて進化を続け新たな魅力を獲得した2台を持ち出し、その哲学から実際のパフォーマンスまで吉田拓生が考察する。

ポルシェ718ボクスターSの走行シーン

「60年前からブレない両雄のスタンス。どちらも個性に忠実な伝統のミッドシップだ」

ポルシェとロータス、ドイツとイギリスを代表するスポーツカー専業メイクスの戦いは1950年代後半からスタートを切っていた。驚くべきは、両者のスポーツカー造りのスタンスが、60年ほど経過した今日までまったくぶれていないという点だろう。ポルシェはGTとしての完成度を高めることで評価されてきたし、一方のロータスは軽さを武器に類稀なる個性を獲得してきた経緯がある。伝統に裏打ちされたスポーツカーは今なお個性に忠実なのだ。

ポルシェ718ボクスターSとロータス エキシージ スポーツ350。ミッドシップ・2シーターという共通のシャシーレイアウトを持つ2台は、各々のブランドの精神に忠実につくられている。今回特に着目すべきは、双方のちょっとした「心変わり」が含まれている点だろう。

ロータス エキシージ スポーツ350とポルシェ718ボクスターSの走行シーン

「両車の邂逅は、ポルシェとロータスの距離が縮まった瞬間といえる」

ポルシェは時代と共に排気量や気筒数を拡大してきたブランドだが、今回は時代を汲むかたちでダウンサイジング(ポルシェはこれをライトサイジングと呼ぶ)を敢行し、ボクスターに新開発の水平対向4気筒ターボエンジンを搭載している。

一方のロータスは現行のエキシージに至って、軽さ至上主義だけでなくパワーコンシャスな世界にも足を踏み入れている。この2台の遭遇は長い歴史の中で初めてにして少しだけ、ポルシェとロータスの距離が縮まった瞬間といえるのである。

ポルシェ718ボクスターSの走行シーン

「718ボクスターSはプラットフォームのカタさが増している」

911の前身となった356で基盤を確立して以降、ポルシェが4気筒モデルでブレークしたことはない。しかしワーゲン・ポルシェと言われた914はミッドシップスポーツカーとして時代を超越した完成度を誇っていたし、924にはじまるFRポルシェはトヨタをはじめとする世界中のメーカーがお手本として崇めていた。911のコンポーネンツを可能な限り流用するというコンセプトによってフラット6が搭載されてきたボクスターだが、車格を考えれば4気筒こそ本来のサイズであるという考え方も成り立つ。

718ボクスターSをドライブしてすぐにわかるのは、プラットフォームのカタさが増していること、そして身のこなしが軽快であることだ。これは「2気筒分軽い!」という固定観念があるからだと考えてしばらく無視していたのだけれど、やっぱり軽い。スペックを調べてみると、マイナス10-20kg程度という、クルマとしては誤差のような重量差しかないにもかかわらずである。

ポルシェ718ボクスターSのインテリア

「気兼ねなく、自信を持って振り回せる予感に満ちている」

軽いと走りがどう変化するのかと言えば、リヤタイヤのグリップ感が生々しく伝わってくるのだ。今回はウエット路面で試乗する場面が多かったのだけれど、これまでの6気筒モデルなら「ミッドシップだからこれくらいなら大丈夫だろう」という経験則で大雑把にスロットルを踏んでいたような場面でも、ちゃんとグリップを感じながらリニアに加速していける。軽快感の源はエンジンが軽くなったからではなく、シャシーが煮詰められたから? ともあれ、4気筒になったボクスターはBMWの2シリーズとか、ハチロクみたいに気兼ねなく、自信を持って振り回せる予感に満ちているのである。

2.5リッターフラット4ターボエンジンは、ブランドネームから想像されるほど鋭く吹け上がるわけではないし、僅かながらターボラグも存在している。それでもまったくストレスなく走り込めるのは、7速PDKの達者なギヤ捌き、豊潤な中間トルク、そしてターボエンジンでありながら、高回転域で寸詰まることなく、7500rpm付近のリミットまで一気に回ってくれるからである。

ロータス エキシージ スポーツ350の走行シーン

「条件が揃えば地球からガソリンが枯渇するまで走り続けたくなるエキシージ」

ポルシェからロータスに乗り換えると、夏から冬に季節が急変してしまったくらいに空気感が変わる。寒いわけではなくて、身が引き締まるような緊張感に満ち溢れているのだ。横方向に余裕がなく、ステアリングポストの位置も低め、エキシージ スポーツ350のコクピットはフォーミュラマシンの如しである。

先に記したように、ポルシェはあくまでGTの精神を中心に据えて、ラグジュアリー方向とスパルタン方向に味付けしたモデルをリリースし続けているのだが、ロータスは軽さ一辺倒。だからポルシェの場合は年齢やドライビングスキルに合ったモデルを選べるのに対し、ロータスは顧客にへつらうことなく「乗りこなしてみぃ!」という強気な姿勢を崩さない。特に切り込み隊長であるエキシージは、現行の量産車では最もスパルタンな1台なので、ドライバーの体調や腕、路面やカーブの曲率がいいと地球からガソリンが枯渇するまで走り続けたくなるが、コンディションが整わなければ分厚いサイドシルを跨ぐのすら億劫になる。

ロータス エキシージ スポーツ350のインテリア

「しっかり車重を削ってきているあたりも実にロータスらしい」

ドライバーの背後に横置きされる3.5リッターV6のベースはトヨタの平凡なエンジンだが、ロータスによってスーパーチャージャーが組み合わされ、超絶なスポーツカー・ユニットに生まれ変わっている。空ぶかしの感覚は、抜けのいいエキゾーストと相まってレーシングカーそのもの。驚くべきは、実際に走らせてみても、空ぶかしと似たような迫力で猛然と加速してくれる点である。

今年でデビュー4年目となるV6エンジン搭載のエキシージにも年次改良が施されている。スポーツ350を名乗る現行モデルでもクーリングシステムが最適化され、リヤフードも刷新するなど、完成度が高められているのである。それでいて、しっかり車重を削ってきているあたりも実にロータスらしい仕事といえる。

ロータス エキシージ スポーツ350とポルシェ718ボクスターSのリヤスタイル

「2台をハカリにかけて迷っている人がいればお薦めするのはエキシージ」

とはいえウエットコンディションの山道が主体だった今回の試乗だけで結論を下すならば、勝者は4気筒エンジンを得てドライバビリティが増したポルシェである。だが路面がドライであれば、結果は逆転する。

同じくミッドシップレイアウトを採用する両車だが、エキシージの走りは溢れんばかりのエンジンパワーをしっかり路面に伝えてこそ成立する。フォーミュラカーでドリフトする人がいないように、エキシージのドライビングに「振り回す」という表現は似合わない。

それでも、2台をハカリにかけて迷っている人がいればお薦めするのはエキシージである。ポルシェはいつでも乗れるが、ロータスを愉しむにはタイミングが重要だし、習熟するための時間も必要になる。

「自動運転」という言葉が日に日に存在感を増してきている今だからこそ、クルマ好きは「本当のドライビング体験」に立ち向かうべきだ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田中秀宣(Hidenobu TANAKA)

【SPECIFICATIONS】

ロータス エキシージ スポーツ350

ボディスペック:全長4080 全幅1800 全高1130mm
ホイールベース:2370mm
トレッド:前1499 後1548mm
車両重量:1125kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHC VVT-I+スーパーチャージャー
総排気量:3456cc
ボア×ストローク:94×83mm
圧縮比:10.8
最高出力:258kW(350ps)/7000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/4500rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:ラック&ピニオン
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前205/45ZR17(7.5J)後265/35ZR18(9.5J)
最高速度:274km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃料消費率(NEDC複合):-
CO2排出量(NEDC複合):-
車両本体価格:972万円

ポルシェ718ボクスターS

ボディスペック:全長4379 全幅1801 全高1280mm
ホイールベース:2475mm
トレッド:前1515 後1540mm
車両重量:1410kg
エンジンタイプ:水平対向4気筒DOHC+ターボ
総排気量:2497cc
ボア×ストローク:102×76.4mm
圧縮比:9.5
最高出力:257kW(350ps)/6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/1900-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール(リム幅):前235/40ZR19(8J)後265/40ZR19(10J)
最高速度:285km/h
0-100km/h加速:4.4秒
燃料消費率(NEDC複合):7.3リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):167g/km
車両本体価格:904.4万円

※GENROQ 2016年 11月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。