マイナーチェンジしたレクサス LSに最速試乗! レクサスの原点「老舗の味」を渡辺慎太郎が吟味する

Lexus LS

レクサス LS

人が老舗に定番料理を求めるワケ

知り合いがデビュー直後に現行レクサス LSを購入した。それから約3年が経過したのであらためて感想を聞いてみたら「老舗の和食屋に行ったら、定番メニューじゃなくて創作料理が次から次へと出てきた感じ」と話してくれた。彼の言葉はいつも核心を突いていて感心することが多いのだけれど、LSに対する印象もまた言い得て妙だった。

あえて老舗の料理を嗜もうと思うのは往々にして、ずっと変わらないその味に舌鼓を打ちながら「そうそうこれこれ」と、自分の記憶と照合することで安心感や安定感を抱え込んで満足したい時である。彼は初代LS(日本ではセルシオ)をえらく気に入って2代目に買い換えた後、しばらく輸入車に浮気してから久しぶりにLSへ帰ってきた。

改良新型レクサスLS 500のフロントイメージ

現行LSが明らかにしたレクサスの誤算

「海外出張から帰国したら和食を食べたくなるでしょ」とこれまたうまいことを言って笑った。初代LSで彼の脳裏に深く刻み込まれたのは、圧倒的な静粛性の高さと乗り心地のよさや、機能的で奇をてらわない上質なインテリアなど、とにかくそこに居ればほっとできる空間だったそうで、これを「老舗の定番メニュー」と表現した。ところが現行LSは和洋折衷のようなデザインと乗り味で、これを「創作料理」と感じたようだ。

変わらなかったから支持されたのか、支持され続けたから変えなかったのか、いずれにせよ長きにわたって評価されてきた老舗や伝統の暖簾の奥には、創作者や制作者の計り知れない苦悩があるとよく聞く。その味を求めて来てくださるお客様の期待を裏切らないよう同じ商品を丁寧に供する一方で、クリエイターとしては新しい味や製法や見栄えにも挑戦したいという気持ちが消え去ることはない。

だから現行LSがそれまでとは違う方向へ大きく舵を切ったこと自体はとてもよく理解できる。斬新なスタイリングや華麗なインテリアやスポーティなハンドリングなど、新しい価値観を提供するべく世に問うた現行LSだったが、想像していた以上に市場がLSに対して大きな変革を求めていなかったのは誤算であった。

改良新型レクサスLSのインテリアイメージ

レクサスの原点に立ち返る

そこで今回のLSのマイナーチェンジでは「レクサスのDNAである静粛性と乗り心地の進化」をコンセプトに掲げている。乗り心地の向上にはさまざまな方法があるけれど、手が加えられたのは主にばね下重量、ばね定数、減衰力である。

シャシーにぶら下がって付いているばね下の部分が軽くなると、路面からの入力を受けたタイヤやサスペンションがより動きやすくなるので、ばね上まで振動が伝わりにくくなる。ばね下とはタイヤ/ホイール/ハブベアリング/ブレーキ/サスペンションアームなどを含んでいるが、新型LSではタイヤとサスペンションアームが改良された。

改良新型レクサスLS 500のサイドビュー

足元を軽く、しなやかに

LSの標準装着タイヤはランフラットだが、ご存じのようにランフラットタイヤは空気が抜けてもタイヤが大きく変形しないで走行が続けられるよう、簡単に言えばサイドウォールを硬くして縦ばね剛性が高くなっている。ランフラットタイヤの「サイドウォールが硬い」がもたらす“コツコツ”が、乗り心地にいい影響を与えていないというのはLSに限らずいまや周知の事実であり、自動車メーカー各社がその攻略に手を焼いている。

LSでは縦ばね剛性をあえて落とした新しいタイヤを開発することで対処したという。結果的にタイヤの重量もわずかに軽くなり、ばね下重量の軽減にひと役買った。刷新されたばかりのLCと同様に、前後サスペンションのロワアームをアルミ製に変更したのもばね下重量の軽減を図ったから。結果的に数kgも軽くなったそうだが、届け出重量は10kg単位なのでカタログや車検証の車両重量は従来型と同値だそうである。

改良新型レクサスLS 500のフロント走行イメージ

あえて「動き」を受け入れる

ばね定数と聞くと、コイルスプリングを想起するけれど、スタビライザーもばねの一種である。サスペンションが動いて左右の上下位置がずれたときにスタビライザーがねじれ、これが元に戻ろうとする力によってばね上の動きを安定させる。改良型ではこのスタビライザーのばね定数を低減することで、あえてばね上を少し動くようにして、路面からの入力をダイレクトに受けないよう最適化したという。

そしてAVSは新しいソレノイドバルブを用いることでオイルの流路をあらためた新開発の電子制御式ダンパーに変更、特にピストンスピードの遅いところから幅広い領域でしっかり減衰するとともに、減衰力を低減してばね上が動いてから止まるまでの減衰速度をゆったりさせた。要するに、これまでのLSはどちらかといえばハンドリングを重視したサスペンションのセッティングになっていて、ばね上の動きを抑え込む傾向にあったものを、今回は操縦性を著しく変化させることなく、ばね上の動きを少し許容することでマイルドな乗り心地にしたというわけである。なお、前輪も駆動することでフロントのNVが不利になるAWD仕様のみ、液封エンジンマウントの特性を変更している。

改良新型レクサスLS 500のリヤ走行イメージ

ガソリン車とハイブリッドの違い

試乗車はLS500hのEXECUTIVEとLS500のF SPORTで、後者には後輪操舵を含むLDHやアクティブ・スタビライザーなどが装備されていた。

LS500hは路面からの入力に対してタイヤがよく動くようになり、サスペンションでの吸収量が増えたように感じる。同時に、ばね上の動きは穏やかになった。減衰が以前のように速くなく、ゆったりとフェードアウトする。ただし、確かにばね上の動きは減衰していくものの、ボディのブルブルとした振動のほうが長く残ってしまい、これが完全に消える前にまた次の入力があって、結局断続的にブルブル振動が居座っていた。

LS500はF SPORTなのでLS500hよりも減衰が速く乗り心地も若干硬めだが、従来型よりは乗り心地が改善されている。こちらもボディのブルブル振動があるものの、LS500hよりも消え去るまでの時間が短いため、少し硬めのF SPORTのほうがEXECUTIVEよりも乗り心地の印象が全般的にはいいという結果になってしまった。ちなみに、ウレタンパッド部分に新たに低反発素材を採用したシートは座り心地もホールド性も向上していた。

改良新型レクサスLSのホイールイメージ

老舗の「あの味」まで、あとちょっと

縦ばね剛性を落としたとはいえ、両車ともに依然としてランフラットタイヤ特有の当たりの硬さが若干残っているのも事実。オプションでノーマルタイヤも選べるらしいけれど、例えばEXECUTIVEにはノーマルタイヤを標準装備してもいいかもしれない。F SPORTを選ぶ人はオーナードライバーで、サスペンションの設定がすにでスポーティになっているから、今回のランフラットタイヤならEXECUTIVEと直接比較しない限りほとんどその硬さは気にならないかもしれない。一方のEXECUTIVEはショーファードリブンなどの使用が想定できるわけで、より乗り心地を重視して最初からノーマルタイヤを履かせておくというのもアリだと思う。

バッテリーのアシスト量を増加させたというLS500hは、特に発進時や中間加速時にスムーズな瞬発力を手に入れたので、使い勝手がよくなっている。モーターのアシストが入ればエンジンの回転数は下げられるので、通常域の静粛性も向上していた。しかし今回のテストコースのようにアップダウンのある状況下では、エンジンが唸る場面(登り坂での高負荷時、下り坂でのエンジンブレーキ使用時)が何度かあった。常に心地よい感じでエンジン音が遠くで聞こえているLS500に対して、LS500hは普段が静かなだけに、そのギャップでエンジン音がことさら気になったのかもしれない。V6は低回転域でのトルクの細さが気にならなくなり、全域で瞬発力と十分な加速力を発揮するようになった。ずいぶんと熟成されて印象が好転したユニットである。

改良新型レクサスLS 500hのリヤビュー

LCと同様にLSも着実な進化を遂げていることは確認できたが、老舗の味の完全復活までにはあともう少し時間がかかりそうだ。そしてその頃には、ライバルとの差が縮まるどころか凌駕するレベルに達していて欲しい。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

【SPECIFICATION】

レクサス LS500h EXECUTIVE

ボディサイズ:全長5235 全幅1900 全高1450mm

ホイールベース:3125mm

トレッド:前1630 後1635mm

車両重量:2320kg

エンジン:V型6気筒DOHC

総排気量:3456cc

最高出力:220kW(299ps)/6600rpm

最大トルク:356Nm/5100rpm

モーター最高出力:180ps

モーター最大トルク:300Nm

トランスミッション:電気式無段変速機

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

レクサス LS500 F SPORT

ボディサイズ:全長5235 全幅1900 全高1450mm

ホイールベース:3125mm

トレッド:前1630 後1615mm

車両重量:2230kg

エンジン:V型6気筒DOHCターボ

総排気量:3444cc

最高出力:310kW(422ps)/6000rpm

最大トルク:600Nm/1600〜4800rpm

トランスミッション:10速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

【問い合わせ】

レクサス インフォメーションデスク

TEL 0800-500-5577