ポルシェ911 Tを華麗に操る美人インスタグラマーは、ハリウッドでも活躍する女性プレシジョンドライバー

Porsche 911 T

ポルシェ911 T

911 Tで光あふれるパシフィック・コーストへ

ララは、インスタグラムにおいて「@thatporschegirl」として知られている。今回はポルシェを心から愛する彼女と一緒に、ポルシェ911 Tでカリフォルニアをドライブしよう。

日々、ロサンゼルスをドライブしている人なら誰でも、いつもの渋滞の後には開けた気持ちの良い道を走りたくなるだろう。ロサンゼルスから南に向かうとキラキラ輝く波とともに走れるパシフィック・コースト・ハイウェイがある。右側の車窓には白い砂浜が真珠のようにアスファルトに寄り添い、ここではナビゲーションシステムなんて必要ないと、改めて思うはずだ。

沖ではクジラが青空に水しぶきを上げている。80kmほど走るとニューポートビーチに到着。ここはふたつの桟橋が海に突き出ていて、西海岸最大級のヨットハーバーが広がっている。信号が変わるとサーファーたちがボードを持って裸足でハイウェイを横切っていった。ようこそ、ララの世界へ。

ポルシェ 911 Tでドライブを楽しむララ

3万人のフォロワーを持つインスタグラマー

薄手のスウェットに日焼け止めと控えめなリップグロス、髪をさっととかしてスマートフォンとクルマのキーを持ったら出発。ララが息子とボーイフレンドと共に暮らす家はシンプルで合理的だ。

「あまり家にはいないんですよ。とにかくほとんどの時間は外にいますね。私は家の装飾よりも、クルマや旅行に興味があるんです」

“girl”は、ネット上での彼女の名前だ。「@thatporschegirl」というアカウントを立ち上げて以来、彼女は多くのフォロワーとデジタル空間を介してポルシェへの情熱を共有している。「スポーツカーの世界での女性のイメージを変えたいんです」と、ドレッシーなミニスカートでエンジンフードに座るモデルの写真を見ながら彼女は呟いた。

インスタグラムでも「女性がステアリングを握っていたり、登録書類に彼女の名前が記載されているのを見たいんです」と彼女は肩をすくめる。彼女自身は、3万人のフォロワーを持つ自身のアカウントで、クールなポルシェの写真を投稿したり、技術的な質問に答えたりしている。

ポルシェ 911 Tでドライブを楽しむララ

ララが愛する3台のポルシェたち

彼女のガレージに収められた「ポルシェ マカンS」は、家族でのドライブのためのクルマ。そのすぐ隣には1982年製「ポルシェ911ターボ 3.3」がある。人気のタイプ930は湧き上がるパワーで漲っている。しかし今回の企画は、あくまでもゆったりとしたクルージングだ。ララが選んだ相棒は、艶やかなリーグリーンの1969年製「ポルシェ911 T」だった。

「このボディカラーは私たちが塗りました。完璧な状態で欲しいクルマを買う余裕がないので いつもそうなんです(笑)」

ボーイフレンドのリーが多くの時間をかけて、この911 Tをレストアした。東海岸で見つけたこのクルマは、カリフォルニアに到着した時は悲惨な状態だったという。彼女が想像していた以上に修理が必要だったのだ。しかし、彼女は諦めなかった。

空冷ボクサーエンジンを始動し、ララは窓を開けてアクセルを踏みこむ。海岸沿いの道路で渋滞に合流。ニューポートビーチでは高級車やヨーロッパ製スポーツカーが普通に走っているのに、彼女のクラシックなポルシェはすぐに注目を集める。そして人々はま、たステアリングを握っている女性にも目を止める。

「ほとんどの男性は、私が父からクルマを借りてきたと思っているんですよ」。アクセルを踏み、追い越し車線に入ると、彼女は首を振る。

「そんなことを言われても、私はいつもフレンドリーに自分の考えを口にしないようにしています。人々がクラシックポルシェをドライブする女性に感動している様子に、逆に私自身が驚いているんですけどね(笑)」

ポルシェ 911 Tでドライブを楽しむララ

映画で活躍するプレシジョン・ドライバーに

ララがポルシェに乗りたいと思ったのは12歳の時。母親の友人である独身のキャリアウーマンが、自分のポルシェをドライブしているのを見た日のことだったという。それまで彼女が知っている大人の女性は、ステーションワゴンに乗っている主婦ばかりだった。ララはお金を貯めて、クルマの広告をチェックし続けた。そして夕方になると、誰もいない道で母親のクルマで運転の練習をした。

ララの強みは粘り強さと決断力だ。16歳で運転免許を取得すると、すぐにフォルクスワーゲン ビートルを購入した。「ビートルは超キュートでしたけど、本当にパワーがありませんでした」。ビートルは非力だったが、彼女に自由を与えてくれた。窓を閉めて音楽をかけ、ララはカリフォルニアをドライブした。そして17歳で高校を卒業するとニューヨークへと移り住む。

身長は180cm近くあり、スレンダーで美しいブロンドの髪を持つ彼女は、その後ハリウッドでモデルデビューする。ハリウッドでのキャリアアップを目指してカリフォルニアへと戻ったものの、エキストラの仕事ばかりにうんざりしてしまう。

運転が得意だった彼女は映画やドラマ制作で活躍する「プレシジョンドライバー」になった。「この仕事は、スタントドライバーのように燃えているクルマで宙返りを要求されることはありません(笑)。カメラを轢いたり、誰かを危険にさらしたりしないことが重要ですね」と、彼女は笑う。

彼女は縦列駐車が苦手だったり、運転が怖かったり、運転免許を持っていないハリウッドスターのためにステアリングを握っている。20代半ばになると、ジュリア・ロバーツ、ジェニファー・コネリー、メアリー・ルイーズ・パーカーといったスターのために作中でドライブした。やがてその仕事が評価され、スタジオから専用のモービルホームを与えられるようになった。

「運転中にオムツだって交換できますよ(笑)。もちろん冗談ですけど。私たちの子供は、もうそんな年齢じゃありませんからね」

ララの娘と息子はすでに成人しており、彼女は現在もプレシジョンドライバーや、制作段階の洋服を実際に試着するフィッティング・モデルとして活躍している。

ポルシェ911 Tでドライブを楽しむララ

女性が心からスポーツカーを楽しめるように

ララは、苗字はもちろんのこと個人情報を一切公開していない。彼女のインスタグラムアカウント「@thatporschegirl」を立ち上げて間もなく、厄介なファンとの不快な経験があったからだ。その後、彼女はウェブ上からすべてのプロフィールを削除した。

今回、彼女は10年前のある話を語ってくれた。当時のボーイフレンドと別れた時、彼女は誰よりも信頼できる「親友」を欲していた。そう、「親友」としてシルバーの911カブリオレを探そうと決めたのだという。

「でも、911カブリオレを見に行った中古車ディーラーで『ひやかしかい?』と言われたんです」

次に訪れた店では、買いたかったカブリオレよりも3年古いブラックの911と出会う。汚れたままの911をすぐに試乗し、多少のディスカウンドで購入。最初のポルシェを家へと持ち帰った。このブラックの911は7年間乗り続けた。

最初に訪れたディーラーでの失礼な態度を今では笑い話にしているが、ララは多くの男性がクルマの専門知識を持つ女性を受け入れていない現状に苛立ちを感じ続けているという。そんなララは、女性スポーツカードライバーのための案内役兼交渉役となっている。多くの女性カーエンスージアストが、入手困難な交換パーツやイベントの情報を欲しているのだ。

現在、ララの「@thatporschegirl」は、多くのメディアやイベント主催者から注目を集めるようになった。今年オンラインで開催された「カリフォルニア・フェスティバル・オブ・スピード(California Festival of Speed)」では、ララが番組のホストとして出演している。

「次のサプライズに向けて、気楽に流れに身を任せています」と、ララは911 Tのステアリングを切りながら語ってくれた。複雑なワインディングロードでも、ララは軽やかにポルシェをコントロールする。その姿は、まさに正確無比(precision)と呼ぶに相応しかった。