ニューガーデンより一枚上手だったディクソン。勝利数を冷静に確実に伸ばした王者の戦いぶり

 インディカーシリーズ2020シーズンのチャンピオンを争うふたりの予選は、ポイントランキング1位のスコット・ディクソンが11番手、同2位のジョセフ・ニューガーデンが8番手と、中団に埋もれた。ニューガーデンはポールポジションボーナス1点の獲得はならず。

 しかも、8番手からのスタートでは、優勝も現実的に難しく、最多ラップリード(ボーナス2点付与)を記録するのも難しい状況と映っていた。

 予選を終えた段階でのディクソンとニューガーデンの差は32点。ニューガーデンが優勝しても、ディクソンは11位以上でフィニッシュすれば、6度目のタイトル獲得が決まる。ディクソンがスタート位置の11番手より後方でゴールするということもかなり考えにくく、ニューガーデンが圧倒的に不利という状況だった。

 しかし、ニューガーデンは100周のうちの80周を使ってトップに立った。ニューガーデンはアグレッシブさと注意深さを絶妙なさじ加減で発揮。最後のリスタート直後のターン1からターン2にかけて、2番手コルトン・ハータ、トップのアレックス・パロウと続けざまに攻略し、先頭に躍り出た。

 パワーのような爆発力を見せることは少ないが、チーム・ペンスキーの今季のラインナップで唯一2度戴冠しているのがニューガーデン。今季のシーズン終盤戦で見せていたスピードと安定感はストリートレースでも変わらず、シリーズ初優勝を目指したパト・オーワードのアタックを何度か退けた後、2秒以上の差をつけてゴールした。

 ニューガーデンは「チャンピオンのためには、勝たないと始まらない」という条件のもと、ベストの仕事を遂行したが、それでもタイトルに手が届かなかった。戦った相手が一枚上手だったということだ。

 ニューガーデンがひとつずつポジションを上げていくのを見ていたディクソンは、ニューガーデンほどのリスクをとることなく、相手を確実に視界のなかに留める戦いを続けていた。ピットタイミングもほとんど同じとして、フルコースコーションによる有利・不利の影響も同じとなるよう注意が払われていた。

 もしニューガーデンが3ストップ作戦に出ていたら、ディクソンもそうするつもりだったという。

 ニューガーデンが80周目にトップに立ったとき、ディクソンはそのすぐ背後でパト・オーワード、シモン・パジェノー、セバスチャン・ブルデイといった面々を相手に、3番手にポジションをアップしていた。

 今季初のストリートレースは最終戦ということで未勝利ドライバーたちが普段以上に激しく争い、序盤からやたらに荒れた展開となっていた。そんななかで超接近戦を行ないながらも、研ぎ澄まされた危険察知能力で接触を回避。チャンスが来たときはすかさずポジションをゲインするという戦いに徹していた。

 それは、キレキレのスピードを見せながらも序盤の単独クラッシュで姿を消したウィル・パワー、レース序盤にトップ3を占めながらも次々と脱落していったアンドレッティ軍団とは異なる、冷静かつ円熟味溢れる戦いぶりだった。