残り2戦、トヨタのダブルタイトルに暗雲か。警戒すべきヒュンダイ&ヌービルが有利なワケ

 WRC第6戦ラリー・イタリアサルディニアでダニ・ソルドが優勝、ティエリー・ヌービルが2位と、ヒュンダイがワン・ツー・フィニッシュを果たした。3位は、ヌービルと1秒差でトヨタのセバスチャン・オジエ。同じくトヨタのエルフィン・エバンスは4位でフィニッシュし、ドライバー選手権ではエバンスが1位、オジエが2位の座を守った。しかし、マニュファクチャラー選手権ではヒュンダイがトヨタを追い越し、首位に浮上した。

 今回のサルディニアのポイントは、ソルドのスポット起用が成功したことだ。トヨタが全戦をレギュラー3人で戦うのに対し、ヒュンダイは3台目をフレキシブルに変更。直近ではエストニアでクレイグ・ブリーンを、トルコではセバスチャン・ロウブを起用し、それぞれ2位と3位に入った。今回優勝したソルドも含めて、スポット参戦選手の活躍により、マニュファクチャラーポイントの大量加算に成功した。

 では、なぜヒュンダイがスポット投入を続けるのかと言えば、もちろんそのラリーに合った選手を選んでいるのもひとつの理由だが、もう1点、大きな理由がある。それは、有利な出走順を得るためだ。

 直近の3戦はいずれもグラベルであり、大雨でも降らない限り、出走順が後方の選手のほうが、ルーズグラベルの「掃除役」を免れ、有利となる。フルデイ初日の出走順はその前のラリーが終了した時点でのドライバー選手権ランキングに準じ、今回のサルディニアではエバンスが1番手、オジエが2番手、ヒュンダイのオィット・タナックが3番手だった。

 そして、優勝したソルドの出走順は10番手と、WRカー勢のなかで後ろから2番目。ソルドが走るころには、出走順の早い選手たちが滑りやすい表層のグラベルをしっかりと掃除し、ソルドはクリーンな路面でタイムを伸ばした。初日の順位を振り返ると、ソルドは6ステージのうち4ステージでベストタイムを記録。

 初日終了時点で、初日を3番手で終えたヌービル(出走順5番目)に約35秒差、同4番手で終えたオジエに36秒差、同5番手で終えたエバンスに約52秒差を築いていた。この時点で、トヨタ勢の勝機はほぼ失われたと言える。

 しかも、今回のイタリアは新型コロナの影響で全体のステージ距離が昨年より70kmほど短くなった。デイ1は全体の40%の距離を占める。デイ2では、デイ1の順位のリバースとなるため、トヨタのふたりは出走順の不利からはほぼ解放されたが、大差を挽回するには距離が短すぎた。

 オジエはデイ2の6ステージで4本のベストタイムを刻んだが、それでも差を埋め切れなかった。これが、昨年のように310kmのSS距離だったら、まだ挽回できたかもしれない。つまり、初日の重要性が例年以上に高まったグラベル3戦で、優位な出走順を得られるランキング下位選手を投じたことが、ヒュンダイのマニュファクチャラー選手権トップ浮上につながったのだ。

 もちろん、スポット出場の3選手は完璧な仕事をした。彼らは胸を張るべきだが、フル出場し、頑張って選手権上位に着ける選手たちは面白くないだろう。それでも現行ルール的には何も問題ない。チームの「スポーツ」に対する考え方の違いで、ヒュンダイは勝ちと選手権を最優先し、トヨタは正攻法を貫いていると言えそうだ。

 しかし、状況的にはトヨタにとってやや不利な流れにある。というのも、本来カレンダーに含まれていなかったベルギーのイープル・ラリーが追加され、さらに最終戦としてイタリアのラリー・モンツァも最近加わったからだ。

 この2戦はいずれもターマックであり、通常出走順は前方のほうが有利となる。しかし、問題なのは両ラリーともWRC初開催で、過去にヒュンダイが積極的にドライバーを送り込んでいたということだ。

 コースに対する知識とドライバーの経験はヒュンダイがトヨタを圧倒。3人目のドライバーに経験がある選手を採用するのは確実だ。モンツァでは、ヒュンダイだけでなくフォードも常連。マニュファクチャラー選手権のみならず、ワン・ツーを守ったドライバー選手権でもトヨタにとっては向かい風である。選手権争いは、さらに混とんとした状況になってきた。