AMGはポルシェの牙城を崩せるか? ハードウェットのサーキットで田中哲也が両モデルをジャッジ!【Playback GENROQ 2017】

Mercedes-AMG GT R × Porsche 911 Turbo S

メルセデスAMG GT R × ポルシェ911ターボS

スーパースポーツの頂点

ノルトシュライフェ7分10秒9という驚異のラップタイムを叩き出しているメルセデスAMG GT R(完全受注生産)がついに日本に上陸を果たした。最先端の空力性能や最高出力585psの強心臓を搭載するスーパースポーツだ。迎え撃つは、本誌のテストでも圧倒的な実力を披露し続けている911ターボS。雨の富士スピードウェイで田中哲也が全開テストを敢行。勝者はどちらだ!?

テスターの田中哲也氏

「AMGは凄まじいエンジンの素性を垣間見せ、911はウェットでも盤石」

スーパースポーツにとってニュルブルクリンク・ノルトシュライフェのタイムというのは、とても大きな指標になる。厳しいアップダウンやタイヤやボディを痛めつける悪条件の路面・・・クルマにとって非常に厳しいあのコースで7分台を出すのは並大抵のことではない。

そのノルトシュライフェでメルセデスAMG GT Rは、FRの市販車最速となる7分10秒9という素晴らしいタイムを記録した。

私は以前、ニュルブルクリンクでニッサンGT-R NISMOの開発ドライバーを務めた。何ヵ月もの間、様々な開発テストを繰り返し行い、ラップタイムを少しずつ更新していく。そこにはごまかしがまったく通じることがない、まるでレースのような世界があった。タイムこそがすべてのシビアな世界なのだ。

だからこそAMG GT Rのノルトシュライフェでのタイムを聞いて、血の滲むようなAMGの努力を容易に想像することができた。

メルセデスAMG GT Rの走行シーン

「ニュルの7分10秒台は、富士の1分48秒台にも相当する」

そして今回、待望のAMG GT Rを真夏の富士スピードウェイでテストできることになった。私の経験から言うと、ノルトシュライフェで7分10秒のポテンシャルを持つマシンは、富士スピードウェイでは1分48秒台を出せる可能性がある。

そんなことを想像しつつ、実はテスト前からAMG GT Rに試乗することを考えるだけで、本当にワクワクしていた。

しかし残念ながらテスト当日は雨、AMG GT Rをテストするには非常に厳しいコンディションだ。ドライでのタイムを確かめられないことが実に残念ではあるが、逆にウェットのサーキットでAMG GT Rを走らせる機会はなかなかないと気持ちを切り替えた。今回はあくまでも秘めたるポテンシャルをレポートすることにしたい。

ポルシェ911ターボSの走行シーン

「911ターボSは質実剛健で、すべてが高次元でバランスのとれたマシン」

今回は比較車にポルシェ911ターボSを用意してウェットでのパフォーマンスをテストする。まず最初に911ターボSからコースイン。今まで何度も911ターボSで富士スピードウェイを走ったことがあるが、ウェットでの走行は初だ。だから慎重にテストを進めることにした。最初に話しておきたいが、ウェットコンディションで一番大事な要素は装着タイヤだ。タイヤの銘柄によって、ウェット性能は大きく変わる。911ターボSはウェット性能の高いピレリPゼロを装着していたので、雨の富士でもグリップレベルは高かった。

ヘビーウェットの中、911ターボSは素晴らしいポテンシャルを披露した。911ターボSのボディは剛性が非常に高い。そしてグリップレベルが非常に高く、雨の中でも全開で走ることができる。4WDということも大きなアドバンテージだ。トラクションレベルが非常に高く、コーナー出口でアクセルを思い切り踏んでいくと当然リヤがスライドするが、スライドが始まると駆動トルクが増えてフロントタイヤにトラクションがかかり、コーナー出口に向かってフルパワーで加速することができた。580psを発揮するエンジンもターボラグが非常に少なくてレスポンスが素晴らしい。911ターボSは質実剛健で、すべてが高次元でバランスのとれたマシンである。

メルセデスAMG GT Rの走行シーン

「AMG GT Rのコーナー出口におけるテールスライドは迫力満点」

次はAMG GT Rでコースイン。585psの4.0リッターV8ツインターボを搭載するハイパワーなFRなので、ウェットでどのような挙動を見せるかは容易に想像できだ。

また、AMG GT Rはドライ時のサーキットが本籍であるミシュラン・パイロットスポーツカップ2を装着していたので、タイヤが温まるまでグリップレベルはなかなか上がってこない。

特にコーナー出口においてパワーをかけたときのテールスライドは迫力満点。9段階調整可能なAMGトラクショコントロールのスイッチをオフにすると、トラクションはまったくかからない状況になる。逆にスリップ量の最も少ないレベル1で走行してみたが、ウェット路面では電子制御の介入が多すぎてクルマが前に進まないほどである。このトラクションコントロールはGT3マシンに装着されているクラスのもので、サーキット走行においてその調整幅の細かさはとても実戦的である。

メルセデスAMG GT Rのエンジン

「当日混走したフェラーリ488GT3よりも、AMG GT Rは速かった」

搭載されるV8ツインターボエンジンは、カタログ値よりもパワーが出ているように感じた。パワーだけでなくエンジンレスポンスも素晴らしく良い。当日、フェラーリ488GT3と混走する機会があったが、最終コーナーから1コーナーまでの区間はウェット路面であったにもかかわらず、AMG GT Rのほうがが速かったのには驚いた。

ちなみにマシンバランスやグリップレベルについては雨では判断しにくい。連続走行をしているとタイヤが少しずつ温まりグリップが増してきたが、本来のパフォーマンスを発揮するまでには至らなかった。

実は雨が降る前にクローズドエリアでアクセルを大きく開けたりコーナリングを試してみたが、ステアリングの重さやレスポンスはとても自然なフィーリングであった。そしてトラクションが素晴らしいと感じた。次回は、ぜひドライの富士スピードウェイで試したいと思う。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG GT R

ボディサイズ:全長4550 全幅1995 全高1285mm
ホイールベース:2630mm
トレッド:前1695 後1685mm
車両重量:1660kg ※1※2
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
圧縮比:9.5
最高出力:430kW(585ps)/6250rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1900-5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前390 後360mm ※3
タイヤ&ホイール(リム幅):前275/35R19(10J)後325/30R20(12J)
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.6秒
CO2排出量:259g/kg
燃料消費率:11.4リッター/100km

車両本体価格:2300万円

※1 AMGカーボンセラミックブレーキ装着車は-20kg。
※2 AMGパフォーマンスシート装着車は+30kg。
※3 AMGカーボンセラミックブレーキ装着車は前402 後360mm

ポルシェ911ターボS

ボディサイズ:全長4507 全幅1880 全高1297mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1541 後1590mm
車両重量:1660kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:3800cc
圧縮比:9.8
最高出力:427kW(580ps)/6750rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/2250-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前410 後390mm ※3
タイヤ&ホイール(リム幅):前245/35ZR20(9J)後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:2.9秒
CO2排出量:212g/kg
燃料消費率:9.1リッター/100km
車両本体価格:2630万円

※GENROQ 2017年 10月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。