マクラーレン 720Sで辿る、しまなみ海道ロードトリップ。720psのスーパースポーツはGTたりうるか? :前編

McLaren 720S Test Drive in Shimanami kaidou

マクラーレン 720S テストドライブ in しまなみ海道

晩夏のしまなみ海道を島下泰久がマクラーレンで味わう

マクラーレン 720S&720Sスパイダーで、夏と秋の狭間のしまなみ海道を行く。そんな楽しそうなお誘いが来たら断る理由なんてない。とりわけ今年の前半はステイホームを強いられて、どこにも出掛けられないストレスが溜まっていたから、落ち着いたらどこか気持ちの良い所までリスク最小のドライブ旅行を・・・と考えていたのだ。まさにクルマも、舞台も完璧と言うほかない。

万全の準備をして久々の飛行機に乗り、愛媛県の松山空港へ。荷物をピックアップして空港の外に出ると、陽射しはまだまだ強く、西に来たなという思いを新たにする。そして駐車場へと歩くと、そこには720S、そして720Sスパイダーの2台が準備万端、待っていてくれた。

マクラーレン 720Sのサイドビュー

ホオジロザメをモチーフにした威圧的な姿とは反する快適な室内

同行の渡辺敏史氏とあとで乗り換えようと約束して、まずは目の覚めるような美しい青、その名は“パリ ブルー”の720Sスパイダーのキーフォブを受け取る。荷物はフロントのラゲッジスペースへ。容量は150リットルあるから1泊の荷物には十分以上である。リヤウインドウの下にレザー製のストラップが見えるように、シートの背後にも荷物を置ける場所があるから、2人で2泊以上の旅になったとしても不足はなく、帰りにはしっかりお土産まで買って帰れるはずだ。

右側のディヘドラルドアを開けて室内へ足を踏み入れると、薄いブラウンのインテリアの美しさに、またまた溜息させられた。右ハンドルということで、モノケージIIに押されてペダルはやや左にオフセットされているが、2ペダルということもあり、ポジションは案外しっくり決まった。

見た目には、まあ物々しいクルマである。何しろホオジロザメをモチーフにしたというのだから威圧感は強い。それなのに実際に乗り込んでみると、スカットルが低く視界が開放的なのが効いていて、物怖じせずに動かすことができる。駐車場の料金を払う時なども、長く伸びたドアミラーのステーがガイドの役割を果たしてくれて、自信を持って寄せていけた。後方、そして斜め後方もこの手のクルマとしては望外に視界が開けている・・・というわけで走り出す前の緊張感はどこへやら、一般道へ合流する頃にはすっかりリラックスした気持ちになっていたのだった。

マクラーレン 720Sの走行シーン

磨きをかけたプロアクティブシャシーコントロールII

空港を出てしばらくは一般道を行く。国道196号線に入ったらひたすら北上。道は途中、海沿いにも差し掛かり、そうすると広いフロントウインドウの向こうにキラキラ輝く水面が映ったりもして、つい気分が盛り上がる。

乗り心地も上々。ボディはいかにも軽やかなのに凄まじく強靭で、しかもサスペンションが決して長くはないだろうストロークの中で、実にしなやかに入力をいなしてくれるから、舗装の荒れたところでもまったく苦にならない。マクラーレン オートモーティヴの処女作、MP4-12Cの頃からの美点であるこの高い快適性、プロアクティブシャシーコントロールIIを採用した720Sでは、ますます磨きがかかったように思える。

路面とタイヤのコンタクトを極限まで維持しながら、路面の入力はできる限り排除し、いなす。足元ではドライバーが感じるよりも速く、高度なアルゴリズムによってサスペンションが制御され、このまさに相反することを両立しているのだ。

マクラーレン 720Sの走行シーン

過給エンジンであることを忘れさせるリニアな4.0リッターV8

そんなわけで、まったく疲れも退屈もしないまま気づけば今治市へ。そして予讃線に沿うかたちで高縄半島に入っていき、今治北ICの料金所をくぐれば、しまなみ海道ドライブのスタートである。

料金所を過ぎ本線に合流したらアクセルオン。これまで回せていなかったエンジンを思い切り歌わせて・・・と言いたいが、このクルマで全開になどしたら一瞬で法定速度のはるか先にまで到達してしまう。目立つクルマでもある。あくまでジェントルに、流れに乗っていく。

ここまでの一般道でも感じていたが、キャビンの背後に積まれたV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンのドライバビリティは本当に素晴らしい。最高出力720psというハイチューンにも関わらず、低回転域でもむずがる様子を見せることなく淡々とクルージングをこなせるし、追い越しなどの際にには右足にほんのわずかに力を加えれば、まさに思った通りに速度が上乗せされる。反応が遅れたり、逆にいきなりパワーが立ち上がったりといったことがまったく無く、とにかくリニアで、その点では過給エンジンであることを忘れさせる。

もちろん、単に躾がいいだけではない。ちょうど良いよりわずかに多くアクセルを踏み込めば、鋭いピックアップでパワーが立ち上がり、まさに吸い込まれるかのような加速が始まる。この辺りは、まさに過給ユニットらしい刺激。乗り手次第でジキルにもハイドにもなる。

マクラーレン 720Sのリヤスタイル

秘めたパワーを開放せずとも無類の一体感でGT性能は高い

これまで私は色々なところで「マクラーレンはF1を見てもわかる通りシャシー屋で・・・」 と書いてきた気がするが、そろそろこのフレーズは封印するべきなのかもしれない。シャシーも相変わらず素晴らしいが、彼らはスポーツエンジンの調律においても目覚ましいものを見せてくれているのだから。

こんなエンジンなので、やはり思い切り踏みたい気持ちに抗うのは難しい・・・という常套句でもそろそろ使うべきかもしれないが、この720S、法定速度で流れに乗って走っているだけでも望外の気持ちよさで、速度を上げたいという気持ちになど、まったくなっていなかった。速く走ろうと思えば、いつでもいけるという気持ちの余裕もあるが、やはりその優れたドライバビリティがもたらすクルマとの無類の一体感が、そう思わせるのだろう。

途中、工事渋滞にまで遭遇してしまったが、それすらまったく苦にならず、待ち合わせの生口島南ICまでのドライブは、思いのほか充実したものになった。気づけば、一度もアクセルを全開にすることなく・・・。クルマとの対話があまりに楽しくて、試すつもりだったBowers and Wilkinsのオーディオ、聴きそびれてしまったのだけが、唯一の心残りである。

後編へ続く)

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/マクラーレン・オートモーティブ・ジャパン

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン720S

ボディスペック:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両乾燥重量:1419kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:537kW(720ps)/7500rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30R20
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒

マクラーレン 720Sスパイダー

ボディサイズ:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1468kg
エンジンタイプ:V型8気筒ツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:527kW(720ps)/7250rpm
最大トルク:770Nm(61.2kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤ&ホイール:前245/35R19 後305/30R20
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒

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