マクラーレン 720Sで辿る、しまなみ海道ロードトリップ。720psのスーパースポーツはGTたりうるか? :後編

McLaren 720S Test Drive in Shimanami kaidou

マクラーレン 720S テストドライブ in しまなみ海道

待望だった720S スパイダーの感触

マクラーレン720S&720Sスパイダーで、しまなみ海道を行くドライブ。松山空港から生口島までの往路をマクラーレン720Sで走り、いよいよ帰路はマクラーレン720Sスパイダーへと乗り換える。クーペはこれまでもサーキットを含めて何度かステアリングを握っていたがスパイダーは今回が初めてで、密かに楽しみをあとに取ってあったのだ。

こちらのボディカラーは“スーパーノヴァ シルバー”。一見、単純な銀かと思いきや実車はとても深みがあり、また美しく輝く色で、この地味派手な感じも気に入ってしまった。

マクラーレン 720Sの集合写真

前方視界はパノラマ級に広いスパイダー

左ハンドルということで、さっきまでとは反対側のディヘドラルドアを開ける。クーペとは違ってルーフ側には支点がないので、ドアの開き方は微妙に異なる。マニアだけが知るポイントである。室内へと乗り込むと、さすがにペダル類のオフセットも無く、ドライビングポジションはぴたりと決まる。ミラーの位置などを調整したら、居ても立っても居られずすぐさま走り出した。

せっかくのスパイダーなのにルーフは開けないのかって? いやいや実は720Sスパイダー、リトラクタブルハードトップでありながら走行中でもルーフはスイッチひとつで開閉可能。だから走り出してからオープンにすればいいという算段である。

開閉所要時間はわずか11秒。室内に海の匂いのする風が心地よく入り込んできた。風の巻き込みはよくコントロールされているが、室内は完全に無風になるわけではなく、適度に髪を撫ぜる感覚である。オープンらしさを、ストレス無く堪能できる。

クーペと同じくシートポジションは地面に座っているんじゃないかというぐらい低く、それなりにスカットルも思い切り低くされているから前方視界はパノラマ級に広い。しかも見上げれば青い空である。気持ち良くないはずがない!

ちなみに試乗車はオプションのエレクトロ・クロミックガラスルーフを装着していたから、クローズ状態でもスイッチひとつで室内に明るい陽光を採り入れることができた。天気や気温で、楽しみ方は自由自在だ。

マクラーレン 720Sスパイダーの走行シーン

管楽器から奏でられているようなエキゾーストノートに昂る

この辺りには短いながらもワインディングロードがあったので、軽くコーナリングも楽しんだ。小径のステアリングを切り込んでいくと、クルマは余計なロールなどを感じさせることなく、まさに“スーッ”という音を立てるがごとくスムーズにノーズをイン側へと向けていく。これまた気持ち良い!!

クルマが想像以上の鋭さで勝手に曲がっていくわけではなく、思った通りのラインを忠実にトレースしていく。まさに意のままになる感覚は、別に飛ばさなくたって、ゆっくり走っていても味わえる。このコーナリング感覚が720Sとまったく変わらないのは、CFRP製のバスタブであるモノケージII-Sを採用したボディの強靭さの賜物だろう。

実際には4輪のダンパーを連関させたプロアクティブシャシーコントロールIIや、アクティブ・ウイングなど満載された最先端のテクノロジーによって統合制御されたシャシーなのだが、そのふるまいはあくまでナチュラル。人の感覚に寄り添い、まさに人馬一体という言葉を使いたくなるような走りを堪能できる。

そうした印象には絶品のステアリングフィールも大いに貢献している。タイヤに、地面に、直接触れているかのようにダイレクトで、それでいて雑味なく非常にクリアな操舵感は、クルマとのコネクト感をこの上ないレベルにまで高めているのだ。

エンジンの印象もクーペで感じたのと同様で、やはりアクセル操作に対するリニアリティが素晴らしい。しかもオープンボディということで、音の魅力が倍増しているのがこのスパイダーなのだが、その音にしても演出めいたブーミーな低音ではなく、まさしく完全燃焼した排ガスがきれいに抜けていく音という感じで、少々誇張気味に言えば管楽器から奏でられているかのよう。踏み方、走らせ方に応じて音色が変化するのが小気味よく、押し付けがましい音じゃないから聞いていて飽きない。こちらもまた回しても、回さなくても、とても耳ざわりが良いのである。

インタビューをする島下泰久氏

本国のマネージャーにオンラインインタビュー

そんな具合で720Sスパイダーでの心地よいドライブに大満足してこの日の宿に入ると、イギリスはウォーキングとネットが繋がっていて、オンラインでインタビューすることができた。お相手はグローバルプロダクトマネージャーのMr.Ian Howshallだ。

話はちょうど発表されたばかりの、将来の電動化に向けた新しい軽量アーキテクチャーについて、あるいは昨今の市況についてなど多岐に渡った。その中で私が訊いたのはマクラーレンの考える“スポーツカーが持つべき走りの質、テイスト”とはどんなものか」ということ。果たしてその答えは、まさに我が意を得たりというものだった。

「私達はドライバーがどんな体験を得られるのか、そしてその質を重視しています。その大切なキーのひとつがステアリングフィールです。マクラーレンは敢えて電動油圧式のパワーステアリングを使い続けています。これには理由があって、私達としてはクルマと人、ドライバーと路面がしっかりコミュニケーションしてほしい。その一助となるべきものがステアリングシステムで、電動油圧式では、路面のミクロレベルのバイブレーションまで敏感なドライバーの指先に伝えてくれるので、まるで路面とつながっているかのような感触が得られるのです」

マクラーレン 720Sの集合写真

闇雲に飛ばさないからこそ神髄に触れることができた

マクラーレンというブランドには、モータースポーツからのフィードバック、最先端のテクノロジーというイメージがどうしても強くなる。実際、それは事実なのだが、ロードカーづくりの根底にあるのは、あくまで人間の感覚を大事にするという哲学だったというのは、なかなか興味深い話ではないだろうか?

行程すべてが一般道ということで、思い切り飛ばせるわけではないはず。さて、一体どういった印象を得ることができるのかと、実は事前には不安もないではなかった今回の試乗。終わってみれば、まさに闇雲に飛ばすのではないからこそ、マクラーレンの真髄に触れることのできる機会となった。

高速道路でも基本的には100km/hまでの日本でスーパースポーツに乗る意味。少なくともマクラーレン 720S&720Sスパイダーには、十二分にある。この旅を経て、私はそう断言したい。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/マクラーレン・オートモーティブ・ジャパン

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン720S

ボディスペック:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両乾燥重量:1419kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:537kW(720ps)/7500rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/30R20
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒

マクラーレン 720Sスパイダー

ボディサイズ:全長4543 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1468kg
エンジンタイプ:V型8気筒ツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:527kW(720ps)/7250rpm
最大トルク:770Nm(61.2kgm)/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンコンポジット)
タイヤ&ホイール:前245/35R19 後305/30R20
最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒

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