軽量化を徹底したロータス エキシージ スポーツ350を、スーパーGTレーサーが鈴鹿で評価する!【Playback GENROQ 2016】

Lotus Exige Sport 350

ロータス エキシージ スポーツ350

研ぎ澄まされた斬れ味を鈴鹿サーキットで探る

ライトウエイトスポーツのホットモデルとして君臨するロータス エキシージSが、新たに“エキシージ・スポーツ350”の名称を受けて公道に放たれた。約51kgものダイエットを果たしたNewエキシージの潜在能力を鈴鹿サーキットで探る。

ロータス エキシージ スポーツ350の走行シーン

「体脂肪をギリギリまで削りとった真価はドライバビリティとハンドリングに宿る」

エキシージ スポーツ350のステアリングを握ったほとんどの人が「重い!」と感じるのではないかと思う。もちろんその重さは、相応の筋力とドライビングテクニックを持ったドライバーが、相応の速度域に持ち込めば「極上のリニアリティ」へと昇華されるわけだが・・・。スポーツカーをドライブするということが、本当の意味で「スポーツ」なのだと実感させられる瞬間である。ロータスを駆って(買って?)完璧なドライビング体験を享受したいなら、肉体改造が欠かせないのかもしれない。

クルマ好きのオジサンにとっては耳の痛い話かもしれないが、肉体改造の第一歩は、筋肉をつけることより、体重を落として体脂肪率を適正にすることなのだという。筋肉量は変わらなくても、体重が落ちれば動きが軽快になるし、相対的には筋力がアップしたのと同じコトになる。

ロータス エキシージ スポーツ350のエンジン

「元々アスリート体質のロータス、さらなる減量は並大抵の話ではない」

今回ロータスが、エキシージSを刷新するかたちでエキシージ スポーツ350と、そのオープンモデルであるスポーツ350ロードスターを生み出した手法もこれと同じ。車両全体を見直すことで、50kgの軽量化を果たしているのである。サラリと「50kg軽量化」と書いてはみたが、食事を抜けばアッという間に落ちるオジサンの体脂肪率とは話が違って、元々アスリート体質のロータスが、さらに減量するというのは並大抵の話ではない。それはまるで試合に臨むボクサーが行う、乾いた雑巾から一滴を絞り出すような努力が必要になるのである。

スポーツ350のパワーユニットはエキシージSからキャリーオーバーされた350psを発揮する3.5リッターV6スーパーチャージドである。エヴォーラ400が証明したように、過給機のセッティング次第で400psを絞り出すこともできるのだが、パワーアップよりも軽量化を第一義にするあたりが実にロータスらしい。実際にロータス社のテストトラックであるヘセルでは、スポーツ350はエキシージSより2秒も速いラップを記録しているという。

ロータス エキシージ スポーツ350のインテリア

「重箱の隅レベルで細々とした改良が施されている」

エキシージ スポーツ350とエキシージSの外観上の最大の違いは、リヤのエンジンフードがガラスからブラックアウトされたコンポジット素材に換えられたことである。後方視界を得るためのスリットが入れられたこのエンジンフードは、ロータスのかつてのフラッグシップカーであるエスプリ・ターボのそれを彷彿とさせるものだが、視覚的な効果以外にも、車両の高い位置に配されるボディワークの軽量化、そしてスーパーチャージドV6エンジンの熱を効果的に排出できるなど、性能向上にも貢献している。

フード自体の軽量化は3kg程度と言われているので、つまりそれ以外のグラム・レベルの軽量化が凄いのである。例えばMTモデルではラジエーターの形状も変更されているし、バッテリーも軽量なものに交換、新たに登場したタータンチェック・ファブリックのインテリアも、革素材と比べれば軽いはずだ。ダッシュパネル右端のライトスイッチ周りも、アルミ製のノブが樹脂製のスイッチに替わるなど、重箱の隅レベルで細々とした改良が施されているのである。とはいえ、ロータス社が謳う「マイナス50kg」は快適装備を省いた突撃仕様の話で、我が国に導入されるモデルはカーペットやエアコン、オーディオが装備されるので、ご安心を。つまり、スポーツ350日本仕様の車重はエキシージS比でマイナス40kgぐらいだろうか。

ロータス エキシージ スポーツ350をドライブする加藤選手

「スポーツ350の真価を、加藤寛規選手のドライブでジャッジ」

それでもエキシージ スポーツ350が現行ロータスで最もスパルタンなモデルであることに疑う余地はない。今回は体脂肪率を削った真価を体感すべく、鈴鹿サーキットにおいて、レーシングドライバーの加藤寛規選手にステアリングを委ねた。スーパーGTではSGTロータス エヴォーラを、ロータス カップ ジャパンではゲストドライバーとしてエキシージSを駆る加藤選手は、軽くなったスポーツ350をジャッジするドライバーとして適任である。

「軽くなった効果を体感するのは難しいですよね」と謙遜する加藤選手だが、彼の主戦場であるスーパーGTでは20kgのウエイトハンデが致命傷となる世界である。

猛暑の鈴鹿で淡々とラップを重ねる加藤選手。湿った海風と気温を考えれば、スーパーチャージド・ユニットが最高のパワーを発揮しているとは言えない。だが数多くのロータスと混走する走行会を、エキシージ スポーツ350は圧倒的なストレートスピードで駆け抜けていく。

ロータス エキシージ スポーツ350の走行シーン

「ロータスの特徴をスポイルせず、明らかに乗りやすいし速くなった」

「穏やかになりましたね」走行後の加藤選手の第一声は、軽量化と直接結びつくものではなかった。果たして「穏やか」の理由は?

「やっぱり軽くなったことが効いているんです。特にリヤフードとか。軽いので以前よりもピッチングがマイルドになっているんです。以前はもう少し姿勢変化に気を使ってドライビングする必要がありました。でもロータスの特徴であるハナの入りの鋭さとか素直さはまったくスポイルされていない。明らかに乗りやすいし、速くなっています」

スポーツ350への進化の中で、ロータスはフロントのアライメントをより攻撃的な方向に仕立て直しているという事実を加藤選手に伝え損ねていたのだが、そこをいきなり言い当てられてしまった。

「鈴鹿のようなテクニカルなサーキットでは、低速コーナーだけではなくフルスピードで抜けるコーナーでも接地感が安定していることが重要です。前後のエアロが効いているんだと思いますが、このクルマはその点も非常に優秀です。ダウンフォースを感じるというより、変なリフトを感じないので、安心して攻められるんです。フロントの接地感が安定しているから、リヤが多少ブレークしても余裕をもって修正できます」

ロータス エキシージ スポーツ350、クーペとロードスターのリヤスタイル

「スポーツカーの本質とロータスのクルマつくりのスタンスに変化はない」

エキシージ スポーツ350の体脂肪率は3%ぐらい? これ以上削ぎ落とすなど不可能というレベルに違いない。しかしこの超辛口ともいえるモデルには、ストイックな体躯だからこそ得られるハンドリング、ドライバビリティが確実に宿っていることが確認できた。

足し算ではなく、徹底的に引き算をすることで究極のライトウエイトスポーツカーを造り出す。時代が移り変わっても、スポーツカーの本質とロータスのクルマつくりのスタンスに変化はないのである。

TESTER/加藤寛規(Hiroki KATOH)
TEXT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

ロータス エキシージ スポーツ350〈ロードスター〉

ボディサイズ:全長4080〈4070〉全幅1800 全高1130mm
ホイールベース:2370mm
トレッド:前1499 後1548mm
車両重量:1125〈1115〉kg
エンジン:直列6気筒DOHCVVT-I+スーパーチャージャー
ボア×ストローク:94×83mm
圧縮比:10.8

総排気量:3456cc
最高出力:258kW(350ps)/7000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/4500rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:ラック&ピニオン
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドクロスドリルドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前205/45ZR17(7.5J) 後265/35ZR18(9.5J)
最高速度:274〈233〉km/h
0-100km/h加速:3.9秒
車両本体価格:972〈972〉万円

※GENROQ 2016年 10月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。