7週間で10レースに出場する“鉄人”2世ドライバーが感じるのは、苦労ではなく感謝

 新型コロナウイルスの影響により、2020年のレーススケジュールは世界中でさまざまな変更を強いられている。本来、春から始まるシーズンが軒並み夏からスタートしたことにより、とくに複数カテゴリーにエントリーするドライバーにおいては、過密な参戦スケジュールに直面している者も多い。

 だが、7週のうちに10ものレースに出場しているドライバーはなかなかいないだろう。ましてやそこに『2週連続で24時間レースに出場』、そして『同じ週に国をまたいで2つのレースに出場』というスケジュールが含まれるとしたら……それはもはや“鉄人”と呼べるのではないだろうか。

 ベントレーのファクトリードライバー、ジュール・グーノンこそ、そのスケジュールの渦中にいるドライバーだ。

 現在25歳のグーノンは、元F1ドライバーのジャン-マルク・グーノンを父に持つフランス人。IGTCインターコンチネンタルGTチャレンジでは、マキシム・スーレ、ジョーダン・ペッパーとベントレー・コンチネンタルGT3をドライブし、2020年第1戦のバサースト12時間レースでは優勝を飾っている。

バサーストで優勝を挙げたベントレー。左端がグーノン
バサーストで優勝を挙げたベントレー。左端がグーノン

 彼は現在の多忙なスケジュールを「誇りに思い、感謝している」という。

 ここ最近のグーノンのスケジュールを追ってみよう。

 8月29日にニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)の6時間レースにフェニックス・レーシングのアウディR8 LMS GT3 Evoで出場したグーノンは、翌々週にはフランスのマニクールでGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ/スプリントカップのダブルヘッダーにベントレーのカスタマーチームであるCMRから出場し、2レースをこなした。

 そのままフランスに留まったグーノンは、ル・マンへと移動。リシ・コンペティツィオーネのフェラーリ488GTE EvoをドライブしてLMGTEプロクラスで24時間レースを戦った。

 翌週はニュルブルクリンク24時間レースと、GTWCヨーロッパ/スプリントカップのザントフールト戦を掛け持ちする7名のドライバーのうちのひとりに。ザントフールトからニュル決勝への帰路は、(アウディドライバーらと同様)ヘリコプターで移動した。

 そしてグーノンは大西洋を渡り、今週末(10月2〜4日)にアメリカ・インディアナポリスでのIGTC第2戦インディアナポリス8時間レースにアメリカ籍のK-PAXレーシングから出場する。

 さらに翌週に待ち受けるのはGTWCヨーロッパのスプリントカップ。バルセロナでのトリプル・ヘッダーが予定されており、再び大西洋を渡るグーノンはそこで3レースを戦うことになる。

 ここまでで7週/10レースというスケジュールだが、翌週にようやく1週の休みが巡ってきたあとにも、IGTC第3戦のスパ24時間レースが待ち受けている。

「クレイジーな期間だよね」とグーノンはSportscar365に語っている。

「COVID-19のせいでカレンダーが変更されたため、たくさんのカテゴリーに参戦している僕のようなドライバーにとっては、非常に複雑なことになってきている」

「僕は文句を言ってはいないよ。僕のような人生を夢見ているすべてのドライバーは、(状況への)リスペクトがもっと必要だ」

「このような人生を生きることができることは誇りだ。いまのところ僕には妻も子どももいないから、問題ない。ただ自分の人生を楽しんでいるだけだよ」

 オランダとドイツの地方政府の法律により、先週だけで4日間に3回ものCOVID-19の検査を受けたというグーノンにとって、コロナ禍での移動もまた非常にチャレンジングなものとなった。

「クレイジーだったね。今週(インディアナポリス)が終わってヨーロッパに戻るには、またCOVID-19の検査を受けなければならない」

「ジョーダン、マックス、そして僕にとって、アメリカへの移動はかなり困難だった。ブリュッセルから移動してきたけど、空港ではいろいろあって2時間半以上も足止めされてしまった」

「ブリュッセルの空港係員は、僕らがリストに載っていることを確認するため、アメリカのCBP(米国国土安全保障省 税関・国境取締局)に電話しなければならなかったんだ。(IGTC/GTWCを運営する)SROの助けがなければ、僕らはここ(インディアナポリス)にたどり着けなかったと思うよ」

 グーノンはまた、このような多忙なスケジュールを維持できたことに感謝しているという。

「人々はこのスケジュールを苦労のように言うけど、正直なところ、僕にとってはこれが夢なんだ」とグーノン。

「僕は自分の仕事に情熱を傾けている。“仕事”という感じでもないよ」

「僕は毎週末を楽しんでいる。しかも、それでお金をもらっているんだ。信じられないことにね」

「こんな人生を生きていることを誇りに思うし、感謝しているよ」

ル・マン24時間レースでは、LMGTEプロクラスにフェラーリから出場
ル・マン24時間レースでは、LMGTEプロクラスにフェラーリから出場

IGTCインディアナポリス戦では、チームをK-PAXへと移り、開幕戦優勝メンバーで参戦する
IGTCインディアナポリス戦では、チームをK-PAXへと移り、開幕戦優勝メンバーで参戦する