スポーツ度を増した硬派な乗り味に転換? 新型アルピナ B3が見せた従来とは異なるフィーリングとは

BMW Alpina B3 Limousine

BMWアルピナ B3 リムジン

意外性いや増す新型BMWアルピナB3の感触

新型G20型3シリーズベースのアルピナがついに日本にも上陸した。462psを搭載する3.0リッター直6ツインターボにAWDを組み合わせた、最新アルピナの乗り味はいかなるものか。モータージャーナリストの高平高輝がBMWアルピナ B3リムジンをストリートで確かめた。

アルピナ B3リムジンのリヤスタイル

「快適に移動できるスイートスポットが上の方に移動したようだ」

カメラマンとの待ち合わせ時間を気にしてコクピットドリルもそこそこに、慌ただしく出発してきたことをちょっと後悔し始めていた。走り出すや否や、これまでに経験したことのあるB3、さらには他のBMWアルピナ各車とも異なる第一印象にいささか混乱したからだ。

フルデジタルのメーターを含めたインパネの仕立ては最新世代BMW同様で、青と緑の差し色がアルピナであることを主張するものの、何よりもステアリングホイールのリムが太いことに戸惑った。BMWの「M」ならばいざ知らず、とうとうアルピナも流行りの太いリムに宗旨替えしたのだろうか、と首をかしげながら走り続けると、乗り心地もはっきりと以前より硬派である。

路面の凸凹をダンダンと踏み潰すようなMモデルに対して、あんなに大きなホイールに極薄のタイヤを履いているにもかかわらず、あくまでしなやかでジェントルな乗り心地がアルピナ各車の最大の特長だった。わずかな上下動をシュッと抑える、しみじみたおやかな洗練された足さばきがMとの大きな違いだったはずなのだが、新型はタウンスピードではビシッとソリッド。もちろんゴツゴツとした直接的な入力などは皆無だが、どうやら快適に移動できるスイートスポットが上の方に移動したようだ。

アルピナ B3リムジンのインテリア

「看板モデルは玄人好みの端正で控えめな高性能セダンだ」

現行G20型3シリーズをベースにしたBMWアルピナ B3は、2019年の東京モーターショーで世界初公開されたアルピナの主力モデルである。今ではディーゼルターボのSUVもラインナップする同社だが、やはり看板モデルは玄人好みの端正で控えめな高性能セダンだろう。

念のために復習すると、2015年に創立50周年を祝ったアルピナは歴代のBMW各車をベースにきわめて端正で高品質、そして高性能なセダンとクーペ(最近ではSUVラインナップも拡充中)を造り続けて来たユニークな自動車メーカーである。多少の上下はあるもののアルピナの年間生産台数は現在も1600台程度。ちなみに、E12型5シリーズをベースにしたB7ターボが初めて日本に上陸してから昨年2019年でちょうど40年だが、こだわりエンスーが多い日本市場は、そのおよそ2割が上陸するお得意様である。

一方、BMWモータースポーツ社が設立されたのは1972年のこと。Mの文字を冠した最初の市販モデルは78年のあのM1で、93年からはBMW M社と名称を変更、BMW本体のモデルをベースにしたスペシャルモデルを送り出して来た。近年はモデルラインナップの拡充が著しく、Mブランドの年間生産台数は13万台以上に達している。文字通りBMWアルピナとは桁が違う。これが最大の相違点と言えるだろう。

アルピナ B3リムジンのフロントシート

「前輪を手掛かりに制御できる感覚は、M3や後輪駆動時代のM5に似ている」

山道に入るともうひとつ疑問が膨らんだ。新型B3は当然ツインターボで“アルラッド”すなわちAWDのはずなのだが、AWDを示唆する立ち居振る舞いがまったくない。それらを示すエンブレムのようなものも車内外のどこにもなく、センターコンソールのプレートにも単にB3リムジンと刻まれているだけだ。もしかして? と思ったのだが、もちろんAWDである。

サーキット走行も考慮するM各車に対して、これまでのアルピナはグランドツアラーとしての快適性やスタビリティをより重視しており、ハンドリングのキャラクターもそれに沿ったものだったが、新型B3はコーナーで追い込んでもフロントタイヤが音を上げず、ギリギリまで接地感を伝えてくれる。最後まで前輪を手掛かりにコントロールできるこの懐の深さはどこかで覚えがあると思ったら、M3や後輪駆動時代のM5に似ているのだ。

アルピナ B3リムジンのエンジン

「新型B3はこれまでよりもサーキットに近い場所に生まれたと言える」

エンジンは3.0リッター直6ツインターボだが、もちろんN55型をベースにしていた従来型から一新され、ボア×ストロークと2993ccの排気量などから判断すると、既にX3M/X4Mに積まれているS58型をベースにしているようだ。間もなくデビューするはずの新型M3に搭載されると言われている同ユニットは、X3Mコンペティション用で510ps、600Nmを生み出すが、B3用は462psと700Nmを発生する(従来型B3Sは440psと660Nm)。もちろん、ECUをいじった程度のものではなく、アルピナ独自のタービンや吸排気系、冷却系を採用した専用品である。

トランスミッションは例によってZFと共同開発のスイッチトロニック付き8速ATで、0-100km/h加速は3.8秒、最高巡航速度は303km/hという。ターボパワーの炸裂がMより多少明確だったのがアルピナ流だったが、新型B3は4000rpmぐらいから明らかなトルクの奔流がもう一本加わるように盛り上がる。といっても、もちろんそこは単純なドッカンターボなどではなく、あくまで洗練されたパワーデリバリーだが、ドライバーをその気にさせるダイナミックな性格を備えている。新型B3はこれまでよりもサーキットに近い場所に生まれたと言えるだろう。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

【SPECIFICATIONS】

BMWアルピナ B3リムジン

ボディサイズ:全長4720 全幅1825 全高1445mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1860kg
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
圧縮比:9.3
総排気量:2993cc
最高出力:340kW(462ps)/5500-7000rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2500-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR19(8.5J) 後265/35ZR19(9.5J)
最高速度:303km/h
0-100km/h加速:3.8秒
車両本体価格:1229万円

【問い合わせ】

アルピナ 青山ショールーム

TEL 0800-2220-250

アルピナ 世田谷ショールーム

TEL 0120-866-250