ホンダF1山本MD「1年目であれだけ上がれるドライバーは、なかなかいない」角田の去就にも期待/FIA-F2第10戦

 FIA-F2イタリア2連戦では、3レースでノーポイントと苦しい戦いが続いた角田裕毅(カーリン)。しかし第10戦ロシアではポールポジションを獲得し、レース1で2位表彰台、赤旗中断となったレースも6位入賞を果たし、ドライバーズ選手権でも6位から3位に躍進した。

 とはいえ上位陣は、僅差の接戦が続く。今季残りはバーレーンでの2戦4レース。その結果次第で、角田の来季が決まる。F1昇格の有無について、「まだ結論は出ていない」というホンダの山本雅史マネージングディレクターだが、「角田くんの速さには期待していますし、(ヘルムート・マルコ博士は)F1昇格を考えていると僕は信じています」と、語っていた。

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──イタリア2連戦では3レースでノーポイントと、苦しい展開でした。今週末のロシアは、どうご覧になりましたか。

山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):これまで失敗もしていますが、着実にそこから学んでいる。今回のソチでは、レース前にふたりで話した際に、残り3戦6レースでは後悔のないレースをすると誓ってくれていた。実際に始まってみると、予選もレースも速さが光りましたね。

 一方でタイヤも、最後までしっかり残せていました。ただレース1ではアーテム・マルケロフ(BWT HWAレースラボ)を抜く際に、タイヤカスを拾ってしまった。それで順位を落としたわけですが、そこから挽回して、最終周にカラム・アイロット(ユニ・ヴィルトゥオーシ)を抜き返した。そこは良かったと、本人も言っていました。僕もあのタイヤカスさえなかったら、最後までいい戦いができていたと思います。

 レース2も赤旗がなかったら、少なくとも(3位表彰台の)ミック・シューマッハー(プレマ・レーシング)に追いついていたでしょう。区間の速さを見ても、3位、あるいは4位は確実でした。

2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1 角田裕毅(カーリン)
2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1 角田裕毅(カーリン)

──前回話を伺った際、特にムジェロの2戦はいい走りができていたのに結果が出ず、そういう時は本人はメンタルがかなりきつい、自信を失う恐れがあると言っていました。ロシアでの角田選手は、そういう心配はなかったですか?

山本MD:なかったですね。実はムジェロからイギリスに帰ってから、ふたりでステーキランチに行ったんですよ。そこでいろいろ話して、思った以上に引きずっていないと感じました。

──ムジェロ後の山本さんは、「F1に乗りたい気持ちを、誰よりも強く持つ必要がある」とも言っていました。そんな話も、ランチの席でしたのでしょうか。

山本MD:角田くんも、F1に乗りたい気持ちはもちろん強く持っています。その気持ちの強さを、実際にコース上でいかにしっかり出せるか。そこはルーキーのなかでは十分頑張っているのですが、たとえばロシアのレース2もそうでしたが、角田くんの周りのドライバーは全員F2の2年生以上でした。その意味では何というか、クルマから発する気迫というか迫力、力強さ、そういうものがもう少し必要かもしれないね、みたいな話はしました。

──終盤のバーレーン2連戦まで、スケジュールが2カ月空きます。それもあって山本さんは「ロシアの結果が非常に重要になる」と以前言っていましたし、一方でヘルムート・マルコ博士も「10月までには、来季の去就が決まる」とコメントしている。ところがF2のタイトル争いは、ポイントリーダーのシューマッハーは少し独走体制ですが、角田くんを含め2位以下6位までは僅差の接戦です。ロシアの結果では、判断つきかねるのでは?

山本MD:そうだと思います。レース終了後にマルコさんとも話しましたが、彼も「(赤旗中断は)ちょっともったいなかった」と、言ってました。ロシアは2位と6位。これで選手権3位に上がりましたが、勝負は終盤2戦に持ち越しになった。その間角田くんはイギリスで、カーリンとレッドブルのシミュレーターをじっくり乗りこなすと言っていました。後悔のないように、準備したいと。僕らも彼の速さに期待しながら、見守りたいと思います。

──ロシア後に、何か発表があるとか?

山本MD:それはないでしょう。

──いずれにしてもリタイア、ノーポイントといった最悪の結果にはならなかった。

山本MD:はい。ポールポジションで速さを見せて、レースも2位表彰台に上がった。レース2は残念でしたが、連続してポイントを取った。レース後に会った時もいい顔していましたし、バーレーン2連戦に期待ですね。

2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1表彰式
2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1表彰式 ミック・シューマッハー(プレマ・レーシング)、角田裕毅(カーリン)、カラム・アイロット(ユニ・ヴィルトゥオーシ)

■マルコ博士は角田を高評価「F1昇格も考えていると信じています」

──今年スーパーライセンスを取れた場合、あるいは取れなかった場合どうするか、レッドブル側とは話しいてますか。

山本MD:もう10月ですし、マルコさんとはいろんな可能性を話しています。ただ結論には至っていません。

──F1への昇格も、視野に入っていますか?

山本MD:マルコさん個人は、角田くんのことを非常に気に入っている。ルーキー1年目であれだけ上がって行けるドライバーも、なかなかいませんしね。なのでF1昇格も考えていると、僕は信じていますよ。

2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1 角田裕毅(カーリン)
2020年FIA-F2第10戦ロシア レース1 2位に入賞した角田裕毅(カーリン)

──ロシアの週末、ホンダの和食を提供していましたね。

山本MD:F2ドライバーはチームとホテルが別だったりして、一方で僕は苦楽を共にしたい。モンツァのホテルがひどくて、あまり眠れないし、食事もかなり簡素だったようなんです。朝ごはんをちゃんと食べたいけど食べられないとのことで、「じゃあ、ロシアだけはトレーナーとふたり分、ホンダの和食を用意してあげる」と。レース前にはげんを担ぐ意味で、カツ丼とかステーキを食べさせました。

──写真だけ見ても、すごい量ですね。

山本MD:僕も食べ切れるかなと思ったんですが、「これぐらい、軽いです」と彼自身が2食分頼んだのです。

──その効果が出ましたか?

山本MD:多少はあったのか、僕は「実力だよ」と言いましたけど、あるいは日本食だから気分は上がったかもしれませんね。

ホンダF1山本MD「1年目であれだけ上がれるドライバーは、なかなかいない」角田の去就にも期待/FIA-F2第10戦
ホンダから角田へ食事を提供。角田自身が2食分を頼み、レース前に完食したという