レッドブル・ホンダ分析:ボッタスのスリップを有効活用。セクター1で0.3秒縮めたフェルスタッペンのラストアタック

 2020年F1第10戦ロシアGPの予選、最後のアタックを終えたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に、担当レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼが興奮気味にこんな無線を送った。

「フロントロウだ。フロントロウを獲ったぞ、マックス。ナイス・ジョブ(いい仕事)だった」

 この無線を聞いたフェルスタッペンは、「イエス!!」と叫んだ後、「ハハハッ、ナイス・ジョブ(いい仕事)だったろ」と笑った。すると、そこにチーム代表のクリスチャン・ホーナーが割って入って、こんな言葉をフェルスタッペンに贈った。

「グレート・ジョブ(最高の仕事)だったぞ、マックス。うまく(バルテリ)ボッタスのスリップストリームを利用したな」

 このやりとりが何を意味しているのかを説明しよう。Q3の1回目のアタックを終えた段階で、フェルスタッペンのポジションはメルセデス勢2台に次ぐ3番手だった。トップはルイス・ハミルトン(メルセデス)で1分31秒391、2番手はボッタスの1分32秒184、そしてフェルスタッペンは1分32秒360だった。

 最後のアタックとなる2回目はメルセデス勢が真っ先にコースインし、フェルスタッペンは一番最後にコースインした。一番最初にアタックを開始したのがボッタスで、ボッタスがアタックラップを終えようとした最終コーナー手前にさしかかったとき、フェルスタッペンはアウトラップを終えて、これからアタックに入る直前となっていた。フェルスタッペンは進路を妨害しないようラインを外してボッタスに譲ったが、その直後、一気にダッシュ。最終コーナーを立ち上がったボッタスを追うようにして、メインストレートを駆け抜けていったのである。

 このとき、いかにボッタスのスリップストリームがフェルスタッペンにとって効果的だったのかは、セクター1の区間タイムを見るとわかる。それまでQ1からQ3の1回目まで、フェルスタッペンは6回アタックに出ており、セクター1のタイムは以下のような推移をたどっていた。

【マックス・フェルスタッペンのセクター1のタイム】
■Q1
1回目 34.671秒
2回目 34.245秒
3回目 34.078秒

■Q2
1回目 33.879秒
2回目 33.933秒

■Q3
1回目 33.836秒

 Q3の2回目は路面状況が最も良くなっていることを考えれば、タイムアップすることが多いものの、もうすでに5〜6回アタックしているので、タイムの上がり代もQ1やQ2と比べて大きくならないことが多い。

 そんななか、フェルスタッペンは最後のアタックで、セクター1を33.513秒で通過。つまり、フェルスタッペンはセクター1だけで0.323秒もタイムを縮めたのである。

 セクター1はコントロールラインから5コーナーの76m手前までなので、2コーナーから4コーナーまでのドライビングも影響していたと思うが、セクター1は最もストレート区間が長く、ここでボッタスのスリップストリームを利用できたことが、大幅タイムアップにつながったことは間違いない。

2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 さらにフェルスタッペンが素晴らしいのは、ボッタスのスリップストリームを利用した後のセクター2とセクター3でもそれぞれ約コンマ1秒ずつ区間自己ベストを短縮していたことだ。

 こうして、コントロールラインに帰ってきたフェルスタッペンのタイムは、約90秒前にコントロールラインを通過したボッタスよりも約コンマ1秒速く、ボッタスを逆転して、ポールポジションのハミルトンとともに、フロントロウに並ぶこととなった。

 メルセデス勢が圧倒的に有利だと思われていたロシアGPで、2台の間に割って入ったフェルスタッペンは、こう言った。

「ロシアGPの予選で2番手に入れるとは予想していなかった。こういうことはあまり言わないけど、今日は僕のこれまで予選のなかでもベストのひとつだったと思う」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第10戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第10戦ロシアGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)