「S13シルビアに愛を込めて」職人気質のビルダーが手がけた極上美麗RBスワップ!

職人魂ほとばしる美しきRBスワップマシン

S13の魅力を純正以上に引き出すビルダーの信念と技

「こんなクルマがあったら乗ってみたい」。クルマ好きなら誰しも夢想するそんな想いを、自分の手で現実のものにできるところがビルダーの醍醐味だ。

広島県広島市で『Total Create E.PRIME(トータルクリエイト イープライム)』を経営する大東英嗣さんもまた、他人とは被らないカッコ良いクルマを作りたいという信念の元、理想とする車両をいくつも製作してきた職人である。

ドリフトやカーショーの世界ではAE86乗りとしても知られる大東さんだが、もう少しライトに普段乗りできるクルマが欲しいという発想から作ったのがこのS13シルビアだ。運よく極上ベースのQ’s(CA18DE搭載のAT車)が手に入り、大東さんは白紙のキャンバスを前にアイディアを膨らませていった。

最初はSR20DEやVQ37VHRへの換装も視野に入れたが、最終的に選択したのはR34型スカイラインに搭載されていたRB25DE NEOストレート6。

ちなみに、NAに拘った理由としては「圧倒的にスッキリとしたエンジンルームを作りたかったので部品点数が少ないNAの方が良かったんです。あとドリフトもするのにあえてNAで、という意外性も追求してみたかった(笑)」と大東さんは語る。

RB25DEの換装は、R34のサスメンバーごと移植する方法で達成。ヘッドカバーはRB26用で、NVCSの可変プーリーを逃がす加工を施してからポリッシュをかけるなど、細かな職人芸も盛り込まれる。

吸気系にはトラストのサージタンクやチタン製ファンネルを装着。排気系には、ワンオフで製作したステンレス製等長エキマニが備わり、鈍い焼色が美しく光る。

なお、エンジンルームの補機類や各種の機能部品に関しては、新しくて便利なもの、それでいて部品単価がリーズナブルなものを探しては、まず自分のクルマで試すことを心掛けているそう。それらを可能な限り目立たない位置に取り付けたり、配線を工夫したりすることで、ノーマルから見違えるような美しさを導き出すことにも心を砕く。

その信条が現れているのが、例えばVQ35DE用の電子制御スロットルだ。「アクセルワイヤーを無くして見た目をスッキリさせたかった」というのがそもそもの目的だが、ドリフトで使用しても不具合やレスポンスの遅れは皆無とのこと。Linkのフルコンで制御するため、チューニングの幅も広がる。

冷却系は、KOYOのFD3S型RX-7用アルミ3層ラジエターとスバル電動ファン×2のコンビで対応する。

また、自作のサイクルフェンダー(バイク用フェンダーベース!)の内側には、某メーカー純正の電動油圧パワーステアリングポンプやオーストラリア製の電動ウォーターポンプをタッキング。それらもエンジンルームの見た目優先のモディファイだが、電動油圧パワステは重ステより操作性に勝るのは言うに及ばず、電動パワステと比べても意外にコストパフォーマンスに優れるそうだ。

足回りの軸となる車高調は、テイン&アペックスの前後ミックス仕様。アーム類もイケヤフォーミュラやクスコの調整式を使いつつ、車両に合わせてアレンジを加えている。

ハブを5穴化した上で、ホイールにはワークエモーションの20周年を記念して発売されたZR10を装着。サイズは18インチで前後10.5Jのプラス12。タイヤは前後にFLEVA V701とSports V105というアドバンの異銘柄履きだ。

ブレーキはR32型スカイラインGT-R用のキャリパーとローターを移植し、ローターにはスリットとドリルド加工を施した。リヤフェンダーのみ20mmアーチ上げを行っているが、言われなければ分からないくらい自然な仕上がりだ。

インテリアは、大阪府摂津市にある9010 Design(クオイオデザイン)で、ダッシュボードやナルディのステアリング、ルーフライナー、ドアトリムなどをウルトラスエードに張り替える作業を実施。ノーマル感が残る外観とは打って変わって、ただならぬ高級感を醸し出す内装が完成した。

フロントシートは、ブリッドが倉敷市のデニムブランドであるベティスミスとコラボしたビオスIIIの限定モデル。同じ生地を使用したリヤシートの張り替えをブリッドに依頼して、前後のトータルコーディネイトを実現した。

トランスミッションはRB20用の5速MTを使用。「NAなのでそれほど許容トルクも必要ないですし、ペラシャが無加工で付けられたり、シフトレバーがちょうど純正に近い位置に合わせられたり、何かと都合が良かったんですよ」とのこと。

一方のエクステリアは、ヘッドライトもバンパーもS13前期の姿をキープ。純正リヤスポイラーの取り付け位置を若干後ろにスライドさせたり、ボディサイドに装着される“TWIN CAM 16VALVE”のエンブレムを“24VALVE”に変えたりと、同じS13オーナーにこそビビっと来る技を盛り込む。

ボディカラーは純正色かと思いきや、スバルのバイオレットブルーマイカメタリックでペイント済みだ。

「他人と被らないことも重要ですけど、それ以上に誰が見てもカッコ良いと思えるクルマを作ることを大切にしています」と己のポリシーを語る大東さん。

続けて「例えばイベントになんとなく連れて来られた、あまりクルマに興味がない家族や恋人が見ても『このクルマ、なんかカッコ良いね』って言ってもらえるような、そういうクルマを作りたいし、乗っていたい。本当に、ただそれだけのことなんです(笑)」。

その言葉は、全体を俯瞰し、細部に拘る職人気質のビルダーが、普段はひっそりと胸に秘めている真理そのものである。

●Owner Eiji Daito

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI