ランボルギーニ ウラカン EVOを富士スピードウェイで試乗。4つのキーワードで進化の度合いを測る 【Playback GENROQ 2019】

Lamborghini Huracan EVO

ランボルギーニ ウラカン EVO

新境地を切り拓いた新世代ウラカンの進化系

矢継ぎ早に登場するウラカンの新バージョン。今回試乗したのは年初に発表されたばかりのウラカン EVOである。空力性能を高め、より洗練されたAWDとRWSを統合制御するという新境地を切り拓いた新世代ウラカンに富士スピードウェイで乗った。

ランボルギーニ ウラカン EVOの走行シーン

「快音を轟かせる5.2リッターV10エンジン。サウンドもトルクの出方も完璧だ」

デビューから早5年が経過したウラカンにニューバージョン、ウラカン EVOが登場した。先代のガヤルドが、2003年に登場して10年あまりのモデルライフだったことを考えると、このウラカンもちょうど折り返し点を過ぎたことになるのだろうか。

5.2リッターV10エンジンに7速DCTを組み合わせるミッドシップAWDという大枠は不変だが、進化版と名付けられたウラカン EVOのハイライトは4つある。空力効率が向上したエアロダイナミクス、高出力化が図られたV10エンジン、制御が高度化したビークルダイナミクス、そしてハイテクがふんだんに盛り込まれたHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)である。本邦初試乗の場となった富士スピードウェイ(FSW)での試乗を通じてその印象をお伝えしよう。

エクステリアデザインから空力性能の向上は簡単に見てとれる。もっとも特徴的なのはエキゾーストパイプをリヤバンパー上部にレイアウトしたこと。テールパイプを上方に移動したお陰でリヤディフューザーを大型化できた。新デザインのフロントバンパーはY(イプシロン)字のエアスプリッターを内蔵し、ここからアンダーボディに空気を流し込むことでボディ上面のエアフローとバランスをとり、高いダウンフォースを発生させている。ただし、やみくもにダウンフォースを高めるのではなく、洗練されたデザインを損なうことなく空力効率を向上させた。

ランボルギーニ ウラカン EVOのリヤウイング

「ダウンフォースは7倍に増えたが、空気抵抗の増加はわずか」

つまり、その主眼は空力の前後バランスを整えることとみていい。空力といえばウラカン ペルフォルマンテで採用されたALAが記憶に新しい。左右可変ウイングによるエアロベクタリングを実現し、独特の運転感覚をもたらしたが、今回はそれに代えてランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング(LDS)と呼ばれる後輪操舵とトルクベクタリング(TV)を採用した。詳しくは後述する。ともあれダウンフォースは7倍に増えたが、空気抵抗の増加はわずか。結果、空気抵抗とダウンフォースの比率である空力効率は6倍になったという。

さっそくピットレーンに並べられた新色オレンジの試乗車に乗り込む。ランボルギーニの試乗はいつもインストラクターが運転する先導車を試乗車が追走する、いわゆるカルガモ走行だ。今回は試乗車が2台になるが、先導車はこちらのスキルを見てペースを徐々に上げていく。先導するのは元F1テストドライバーの福田 良氏など錚々たるインストラクターだから、走りの精度は折り紙付きだ。反対に先導車についていけなければペースが落ちる。なお先導車はウラカン ペルフォルマンテで、タイヤが同じならALA対LDS&TVの効果がどういった関係になるのか興味深い。

ピットアウトまでのわずかな時間でHMIをチェックする。近年流行のタッチパネルは8.4インチの縦型でタブレットのように直感的に操作できる。前後トルク配分や後輪操舵の状態などを表示可能で、エアコンや細かいところではアンビエントライトの色や明るさなども調整できるようだ。

ランボルギーニ ウラカン EVOのエンジン

フィードフォワード制御の効果

無線の指示に従い、まずはドライブモードのANIMAはストラーダのままコースインする。市街地走行モードだがスロットル操作に反応し、すばやく低いギヤに変速してくれる。2周目はスポーツモードに切り替える。ダンパーはストラーダよりも固められるが不快ではない。プレイフル&エキサイティングと銘打たれたモードは国際試乗会で試乗した本誌編集長によれば、かなりのオーバーステアというが、試しに低速のダンロップコーナーでリヤの挙動を確かめるべく、アクセルを踏み込むと思いの外リヤが出ない。あえて振り出すような操作をすればもちろんオーバーステアとなるが、高いトラクション性能でタイヤの性能を使いきって加速できるのが確認できた。

ストレートでは自然吸気エンジンをかみしめて走る。珠玉の5.2リッターV10エンジンはサウンドといい、トルクの出方といいほれぼれする出来だ。最高出力640ps、最大トルク600Nm。ペルフォルマンテと同じくチタン製バルブや吸排気系を改良するなどした逸品である。今回はメインストレートで全開にし続けることは叶わなかったが、それでも最初のゲートまでに270km/h近く出ていたことを考えると、ひょっとすると最高速は300km/hに到達するかも知れない。

ランボルギーニ ウラカン EVOの走行シーン

「ブレーキは強烈な減速Gと剛性感のある硬いペダルタッチで安心感がある」

試乗会である以上、安全面は厳格に保護されており、特に1コーナーはリスクが高いため先導車は早めにスロットルペダルを戻して減速を開始する。そこで220km/hからのフルブレーキで進入するダンロップコーナーでその制動力を確かめると、強烈な減速Gと剛性感のある硬いペダルタッチで安心感があった。

次の周はサーキット用のモードであるコルサに切り替えた。デジタルメーターパネルがタコメーター主体になり、変速はパドルを引いて手動でシフトアップする。スポーツとコルサの最大の違いはコーナリング性能を高めた車両制御だが、前述の通りスポーツモードでもすでに高いスタビリティを実現している。今回の走行ペースならばスポーツでもまったく問題なかった。

ランボルギーニ ウラカン EVOの走行シーン

「タイヤの性能を使いきる高いトラクション。そして恐ろしいほどの旋回性能」

ウラカンEVO最大の特徴とも言えるビークルダイナミクスの性能向上はランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ(LDVI)によるものだ。これはステアリングとブレーキ、アクセル操作から次の操作を予想して、エンジン、AWD、LDSを統合制御する。つまり従来は姿勢変化あるいはスリップなどが発生してから制御を行うフィードバック制御だったが、操作や車両の状態から予測して行うフィードフォワード制御となった。モードに応じてドライバーの望む操作をさらに拡張している点で、ウラカンの進化の幅はかなり大きいといえる。

2枠目の試乗は旧知の腕利きジャーナリストとペアを組めた。先導車のラインをきちんとトレースし、インストラクターの信頼を得て、徐々にペースを上げてもらう。コルサではなくスポーツで走行する。調子よくペースを上げて100R後半でリヤをじわじわスライドさせるが不安感はない。スポーツモードでもスタビリティは恐ろしく高く、簡単にスライドを楽しめるようなイージーさはない。だが、なんと先導車のペルフォルマンテもわずかにリヤをスライドさせているではないか。あとで調べると両車ともPゼロコルサを装着していた。ALAとLDS&TVのコーナーリング性能はほぼ同等ということだ。これはなかなか興味深い現象である。巨大なウイングがないぶんEVOのシャシー性能が高いのは明確だ。

ランボルギーニ ウラカン EVOの走行シーン

ウラカンEVOは高いスタビリティで、サーキットを余裕でこなせるスーパースポーツカーの階段をまたひとつ上がったように感じた。ペルフォルマンテといい、コンセプトモデルとはいえオフロード走行もこなせるステラートといい、このウラカンは様々な進化の可能性を秘めたモデルである。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ・ウラカンEVO
ボディサイズ:全長4520 全幅1933 全高1165mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1422kg
エンジン:V型10気筒DOHC
ボア×ストローク:84.5×92.8mm
総排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/30R20(8.5J) 後305/30R20(11J)
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:2.9秒
車両本体価格:3223万736円

※GENROQ 2019年 9月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。