F1ロシアGP木曜会見(3):シューマッハーに並ぶ最多91勝目を目前に控えるも、複雑な思いを抱くハミルトン

 2020年F1第9戦トスカーナGPで今シーズン6勝目を挙げ、通算90勝目を達成したルイス・ハミルトン(メルセデス)。もし、この第10戦ロシアGPで優勝すれば、皇帝ミハエル・シューマッハーが持つF1史上最多勝記録『91勝』に並ぶ。

 そこでロシアGPの木曜日の会見では、この91勝についても多くの質問が寄せられた。

 シューマッハーがアイドルだったというエステバン・オコンは「あの記録は誰にも破られないと思っていたから、信じられない」と語る一方で、ハミルトンならそれも可能だと言う。

「僕は昨年、メルセデスの一員としてルイスを間近で見てきたから、彼ならそれも可能だと思った」

 2017年からチームメイトとしてハミルトンを見てきたバルテリ・ボッタスは「チームメイトである前に、ひとりのライバルとして、今週末、彼に記録を達成させないように努力する。僕は勝つために来ているんだから」と語った上で、ハミルトンの偉大さを次のように語る。

「とはいえ、いずれルイスが記録を達成するのは時間の問題だ。それはすごい記録だと思う。とてつもない数字だよ。誇りに思っていい」

バルテリ・ボッタス(メルセデス)
2020年F1第10戦ロシアGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)

 ダニエル・リカルド(ルノー)は、ハミルトンの記録はメルセデスだから達成するという批判的な見方を否定する。

「確かに最強チームのメルセデスに乗っているんだから、ポディウムに上がる可能性が高いのは確かだ。でも彼は楽をして、勝利を積み重ねてきたわけじゃない。それだけの期待とプレッシャーを毎年のようにかけられながらも、しっかりと結果を出し続けてきた。それは誰にでもできることじゃない。すごいことだよ」

 多くのドライバーがハミルトンに賛辞を贈るなか、ハミルトンとライバル関係にあるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、ほかのドライバーほど意に介さなかった。

「すこい数字だと思うけど、僕は自分のことしか考えていない。だれが何勝して、何回タイトルを獲るかなんて、気にしていない」

 昨年までハミルトンとライバル関係にあったベッテルは、少し複雑な心境だという。なぜなら、シューマッハはベッテルにとって、最も尊敬するドライバーだからだ。

「ずっと、絶対に手の届かない数字だと思っていたけど、ここ数年のルイスの勝ちっぷりを見ていると、いずれ近づくことはわかっていた。でも、もし記録が抜かれたら、間違いなく悲しく思うだろうね。だって、マイケル(シューマッハーの愛称)はいまでも僕のヒーローだから」

「ただ、その一方で、一緒に戦ってきたルイスが記録を達成することも僕にはうれしいことなんだ。だから、悲しい気持ちとうれしい気持ちが半々なんだ。複雑な気分になると思う」

 そして、当のハミルトンは、91勝という数字の意味について尋ねられると、こう答えた。

「正直なところ、それが何を意味するか僕にもわからない。僕はまだしばらく引退するつもりはないから、きっといつか破る日が来るんだろうけど、その時どんな気分になるか、それが何かを意味するのかをいま答えることはできない。もちろん光栄だけど、世界ではいま、それよりも大きなことが起きているから」

 それは、今年続いている黒人への差別であることは言うまでもない。トスカーナGPでは表彰式に『ブリオナ・テイラーを殺した警察官を逮捕せよ』と書かれたTシャツを着て、抗議したハミルトン。しかし9月23日、事件があったアメリカのケンタッキー州ジェファーソン郡の大陪審は、警察官の銃撃によりテイラーさんが死亡した事件で、発砲によってテイラーさんの隣人を不当に危険にさらした罪で元警察官を起訴したものの、テイラーさんを死亡させた責任は問われなかった。

 ハミルトンにとっても、ロシアGPでの大記録挑戦には複雑な思いがあるようだ。

2020年F1第9戦トスカーナGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)、ブレオナ・テイラーさんを殺害した警官への抗議の意向を示すTシャツを着用
2020年F1第9戦トスカーナGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)、ブレオナ・テイラーさんを殺害した警官への抗議の意向を示すTシャツを着用