「次元が違う」セットアップをつかんだKEIHIN NSX-GT。第5戦以降、ホンダ陣営の出方にライバルたちは戦々恐々

 ZENT GRスープラは、KEIHIN NSX-GTよりもほんの少しストレートエンドの車速の伸びが良かった。それに立川祐路のうまさが効いていたこともあり、序盤はポジションをかろうじて守っていた。

 しかし、明らかにポテンシャルに勝るKEIHIN NSX-GTが相手ではそれも長くは続かず、やがてトップを奪われてしまう。後半を担当した石浦宏明も逆転を狙うが、ライバルの安定かつ速い後ろ姿に為す術なし……。

「第2戦富士からそうだけど、あのクルマは空力とメカニカルのおいしいところを見つけているんだと思います。空力のバランスも、スープラとは違う次元にあるように見えます」

 セーフティカー(SC)明けのワンチャン狙いも、相手のタイヤの温まりの良さで封じられた石浦は、ライバルの戦闘力をそう分析した。

 一方、それをドライブしていた塚越広大は、フロントタイヤを不必要に使わないようケアしながら走らせていた。前半、ベルトラン・バゲットが立川の後ろで本来の走りができず、またSCランの後にタイヤをロックさせるなどしたために、マシンは多少バランスを崩していたが、最初からトップで走ることができた後半スティントのバランスはバッチリだった。

 まさに完勝と言えるレースだったが、この結果には「自分たちもビックリ」と塚越は言う。何しろウエイトは46kgも積んでいる。さらにもてぎはストップ&ゴーのレイアウトで、もっともウエイトの影響を受けるコースだ。

 予選の2番手は、悪コンディションに乗じて技で奪い取ったようなもの。ウエイトを考慮すれば実質ポールポジション(PP)ではあったが、予選後の塚越はそれに浮かれることもなく、「明日の決勝は耐え忍ぶ展開になると思う。重いときに強いレースをしないといけない」と語っていたのだ。

 しかもマシンバランスを聞けば、しっくりきていない表情を見せる。「まだアンダーがあるのでそれを直したい。でも直そうとするとバランスが崩れるので難しい。昨年後半の調子が良いときを100とするならば、いまはまだ70~80%くらい」と、まだまだであることを強調していた。

 ところが、決勝直前のウォームアップ走行で、自分たちの本当の実力に気づくことになる。田坂泰啓エンジニアが笑いながら言う。

「あれ、なんか速いぞ、って。そのままレースやったらホントに速いじゃんって」

 ウォームアップで見せたその速さは、ライバルを牽制するには充分すぎた。この後PPからスタートする予定のZENT GRスープラ陣営は「軽くパニック」(石浦)を起こしていたのだ。

 もてぎに来る前、田坂氏は「46kgも積んでるんじゃ、止まんねーよ」と思っていた。そのとおり止まりづらくなっているのだが、ライバルはもっと止まっていないことに気づかされた。マシンバランスの追求は、終わりがあるようでないようなもの。いつまでたっても不満は残るが、「どうやら俺たちはみんなよりこのへん(上)で悩んでいたみたい」と田坂氏は言う。

 今回持ち込んだセットは、富士と鈴鹿をベースに、もてぎの特徴である小さいコーナーでよく止まり、よく曲がる仕様だという。投入された新しいタマは「4つ」。そのうちのふたつが採用され、残りはボツになった。メカニカルグリップを確保する方向のこのもてぎ仕様は、重いときの速さがライバルよりも際立った。この重くても速いマシンは、スーパーGTでタイトルを獲得するうえでの絶対条件だ。その勘どころを、KEIHIN NSX-GTはつかんでいると言える。

「いつも悩んでいるので自覚はないけど、(重くても速い理由を)薄々感じているのはある。でもそれが何かは内緒」と田坂氏。パドックでは、「17号車のセットをホンダ内で展開されたら困る」とライバルの声。KEIHIN NSX-GTのドライバーはふたりとも速さを持ち、ピットワークも早い。マシンは重くても速く、2勝したサーキットがそれぞれ違うことも大きい。それも棚ぼたではなく実力で勝ち獲ったものだ。

 いまのところ同マシンには死角が見当たらない。そして次戦あたりからいよいよ2基目のエンジンが投入される。それに上乗せされるパワーに、ライバルたちは戦々恐々としている。KEIHIN NSX-GTが気をつけるべきは、あとは油断だけだろうか。最後に「チャンピオンが見えてきたのでは?」と投げかけると、ドライバーもエンジニアも同じ言葉を口にした。

「いやいや、そんな甘いもんじゃない」