まるで1000kmのような濃厚な未知の300kmレース。WH以上に影響したタイヤ選択とセットアップ《第4戦もてぎGT500決勝あと読み》

 例年の最終戦のタイミングとは異なる、まだまだ暑さの残る9月に行われたスーパーGT第4戦のツインリンクもてぎ戦。時期も違えば、レース距離も250kmから300kmと長くなったなか、GT500クラスの戦いは46kgのウエイトハンデを搭載したKEIHIN NSX-GTがセーフティカーの影響で2位ZENT GRスープラと4秒差でトップチェッカーを受けたものの、実質、独走といっていい内容で今季4戦目で2勝目を挙げる結果となった。

 昨年の11月のもてぎ戦では最終戦のためウエイトハンデはゼロ、そして当然、コンディションも今年は9月と異なるため、クルマも違えばタイヤセレクトやもちろんセットアップも違うと、まさに未知の戦いとなった。

 さらに今回、状況を複雑にしたのが、予選日のダンプコンディションだった。ブリヂストン(BS)開発責任車の山本貴彦氏が話す。

「9月のまだ暑い時期にしては予選日は涼しくて(Q1開始時で気温25℃、路面温度29℃)、ブリヂストンユーザーとしてはソフト目のタイヤとハード目のタイヤのちょうど中間あたりの温度領域でした」と山本氏。

 事前のタイヤテストはなく、夏のもてぎの走行データもないため、チームもタイヤメーカー側も、推測で持ち込みタイヤを決めざるを得ない状況だった。結果として、「ほとんどのチームがコンサバな傾向になった」とBS山本氏。

 予選日は結局、練習走行最後の10分間のGT500専有時間にドライタイヤで走行できたが、その後のドライだったQ1を含め、当然ロングランができたチームはなし。予選Q2に進出したほとんどのチームが予選Q1と同じドライ用タイヤでコースインしたが、すぐに雨が降ってウエットタイヤに交換するなど、データのない9月のもてぎ戦にも関わらず、タイヤ評価がほとんどできない予選日になってしまった。

 その影響は、当然、決勝日に大きくのしかかってくる。スタート前のウォームアップを終えてグリッドに着いたマシンは、多くのチームでセットアップを変更。チームによってはダンパー交換、スタビ、車高変更など、ボンネットやリヤハッチを開けてメカニックが大慌てで作業する光景が各所で見られることになった。

 9月にしては涼しい気温27℃、路面温度34℃のコンディションで行われた決勝はフォーメーションラップから各車大きくマシンを左右に振ってタイヤのウォームアップを行った。もてぎはタイヤへの負荷は大きくなく摩耗は問題ないが、デグラデーション(性能劣化)、そしてピックアップ(タイヤカスが自分のタイヤに付着して取れずに振動とグリップダウンを招く症状)が課題になる。それまでどのチームもロングランが行われていないため、レースがスタートしてからタイヤだけでなく、さまざまな問題が発生することになった。ここからは各チームのコメントとともにレースを振り変える。

「伊沢(拓也)さんのスティントも最後が厳しそうでしたが、僕のときもウォームアップ性はよかったですが、6周目くらいからピックアップが起きてブレーキングでも真っ直ぐに踏めないくらいになって、ラップタイムも3秒くらい落ちてしまいました」と話すのは、Modulo NSX-GTで後半スティントを担当した大津弘樹。

 Modulo NSX-GTはスタートを担当した伊沢もスティント前半のペースはよかったが、その後失速。ピックアップとともに、でグラデーションも早く、結果的に予想外の2ピットでレースを走ることになってしまった。

 ピックアップは多くのマシン/ドライバーで起きており、今回のレース展開を大きく左右する要素となってしまった。

 また、タイヤの次に特徴的だったのが、ウエイトハンデ(WH)の重いマシンがレースで次々とオーバーテイクを重ねて順位を上げていったことだ。平坦な地形でストップ&ゴーのレイアウトのもてぎは、WHが鈴鹿、富士以上に、もっとも効くサーキットでもある。

 だが、ランキングトップのau TOM’S LC500(82kg)が予選14番手から一時6番手まで順位を上げ、ランキング2位で予選13番手のKeePer TOM’S GRスープラ(WH66kg)も7番手まで順位を上げ、そこでau TOM’S GRスープラと同士討ちして11番手まで順位を下げるも、そこからまた順位を上げて6位フィニッシュするという驚きのパフォーマンスを見せた。KeePer TOM’S GRスープラで前半スティントを担当した平川亮が振り返る。

「クルマのフィーリングは悪くはなかったですね。予選は雨でタイヤ選択が合っていませんでしたが、レース序盤は思ったよりも涼しかったので、選んだハード目のタイヤが硬すぎてグリップもあまりしていなくて苦しかったです。後半、ソフト目のタイヤに換えてニック(キャシディ)のペースもよかったですし、結果的にポイントがたくさん取れてよかったです」と平川。

「欲を言えば、今回ピットストップで時間が10秒くらい掛かってしまったので、もっと上に行けた可能性もあったので、今回うまくいったように見えますが、課題はまだまだあります」と続ける平川。

 いずれにしても、「3番手くらいまで行ける可能性はあった」と平川が話すように、WHの重いクルマであっても、他の多くのマシンがセットアップやタイヤ選択をぴったりと合わせられる展開ではなかったため、上位に進出できる可能性が大いにあった。予選2番手で決勝では独走したKEIHIN NSX-GTは、まさに今回数少ない、セットアップとタイヤ選択をうまく進められた1台になったのだろう。

 ちなみに、平川はキャシディとau TOM’S GRスープラの関口雄飛の同士討ちについては「乗っているドライバーでなければ分からない部分があるので、僕からは同じチームとしてはもったいないと。お互いもっと上位に行ける可能性がありましたからね」と話すに留めた。

 また、今回のレースでもうひとつ象徴的だったのがアクシデントやトラブルの多さだった。WedsSport ADVAN GRスープラは国本雄資が5番手まで順位を上げながら、コントロールを失ったGT300の接触を受けて大クラッシュ。前述のトムスの同士討ちに、8号車ARTA NSX-GTと24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rがヘアピンで接触するなど、サバイバルな様相も見せた。

 ARTAの福住仁嶺が振り返る。

「ヘアピンでGT300に引っかかったところ、前のGT300マシンのライン取りを考えながら24号車を牽制していたんですけど、若干、イン側にスペースがたぶんできたと思うんですけど、そこに24号車が入ってきて、僕の右リヤタイヤに当たってパンクして、足(サスペンション)か何かが壊れて走れなくなってリタイアとなりました」と福住。

 さらに、8号車ARTAは原因不明のトラブルがレース序盤からあったという。

「それでも、そもそもレースでのペースが遅いからそういう結果になっているのであって、今日も最初に野尻(智紀)さんが走っているときから何かのトラブルで真っ直ぐに走りづらい状況になって、僕に代わってからも何か普通じゃない動きになっていました。正直、レースを戦える感じではなかったので、原因を突き止めて次も諦めずに頑張りたいです」と前を向く福住。

 8kgという軽いWHでここ数戦、毎回優勝候補に挙げられるARTA NSX-GTだが、マシンのトラブルが大きな壁となっている。

 その他にも各陣営、ピットミスやタイヤのピックアップ、ピットストップで燃料がうまく入りきらないなど大小さまざまなトラブルやアクシデントがあったようで、もし気温がもっと暑いコンディションだったならば……と考えると、今回はもしかしたら好運な結果だったとも言えるかもしれない。

 300kmのレース距離といえども、まるで同時期に行われていた鈴鹿1000kmを彷彿とさせるように、さまざまな出来事が詰まったスーパーGT第4戦もてぎのGT500クラス。レースのスタートからフィニッシュの出来事だけでなく、予選日から濃密な2日間となった。