立川祐路×石浦宏明、ダンプ用タイヤに赤福パワーで……ポール獲得の楽屋裏話【スーパーGT第4戦もてぎ予選】

 雨が降ったり止んだりのダンプコンディションで見事、今季初のポールポジションを獲得した38号車ZENT GRスープラ。予選Q2を担当した立川祐路は通算24回目のポール獲得で歴代最高記録を更新するメモリアルな結果となったが、今回のZENTの予選を振り返ると、いかに今回の予選が複雑で難しい展開だったかが読み取れる。予選後の立川祐路、そして石浦宏明に聞いた。

 予選Q1の最後にハプニングは起きた。Q1セッション終盤、ほぼ全車、最後のアタックに入っていたところでRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが90度コーナーでコントロールを失い、サンドエリアにスタック。これでダブルイエローが振られ、ZENT GRスープラで予選Q1を担当していたその時点で8番手の石浦は、タイム更新が見えていたものの黄旗を見てスローダウン。

 そして翌周もアタックに入ったが、すでにタイヤのグリップは失われ、タイム更新はならなかった。すると、黄旗中にCRAFTSPORTS MOTUL GT-R、そしてMOTUL AUTECH GT-Rの2台がタイムを更新して石浦は10番手となり、一時Q1ノックアウト圏内に順位を下げてしまう。石浦は状況がわからず、Q1落ちしたと思い、ピットに戻って来た時には自分自身に対する怒りを抑えられなかった。インタビューはそこから始まる。

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──石浦選手はアタック後、怒ったままマシンを降りてすぐトランポの部屋に向かったと聞きました。

石浦「帰りましたね」

立川「すぐにどこかに行っちゃった」

石浦「状況がよくわかっていなかったので・・・・・・」

──立川選手はイエローフラッグの状況を見て、38号車はQ2に残る可能性が高いことは把握していた。

立川「まあ、状況はモニターで見てたのでね。黄旗で2台最後に上がったのはわかっていたので、きちんとジャッジをしてくれれば8番手だなと思っていました。そこで石浦にクルマの様子を聞こうかなと思ったら、どっか行っちゃって(苦笑)」

石浦「その後、エンジニアが部屋に来てから話して、リヤのスタビとかを変更しました」

立川「その後は来てくれましたね」

──そして予選Q2は最初、ドライタイヤでコースインして、その後ウエットタイヤに交換しましたが、他のチームより1周遅れての交換になってしまいました。

立川「コースインして最初に『ヤバイ! これはちょっと厳しいかな』と思ったんですけど、路面はそんなに濡れていないので雨が止むとすぐ乾く。ですので雨が止むのを待つのか……一応、ピットには無線で『結構濡れてきている』と伝えたら『準備はしている』と言うので、もう少し我慢して行ってみるかと思っていたら、最終シケイン曲がったところで『入って!』って言われて『そのタイミングで!?』みたいな(苦笑)」

──立川選手以外の全7台が先にピットに入ってタイヤ交換しましたが、他の全員がピットに入ったというのはどの段階でわかったのですか?

立川「ストレートでミラーで後ろを見たら、誰も来ないなあって」

石浦「実は立川さんが無線でタイヤについて話したタイミングで、エンジニアがメカニックと話していて……『ごめん!聞いてなかった!』と。コミュニケーションミスが起きてしまいました」

立川「ただ、結果的にドライでも、もしかしたらそのまま行けたかもしれない。ウエットに替えて出て行ったけどセッションの最後はほぼドライ。もしかしたらドライでも行けたかもしれないけど、みんなウエットなら同じでいいかなって。自分ひとりだけリスクを負って違うことする必要もないのでね」

──1台だけドライでステイアウトして、不安にはなりませんでしたか?

立川「いや、ピットに入ろうと思いましたからね。もしそこで後ろから来ているクルマがいたらドライタイヤでステイするのもありかなと思っていたんですけど」

石浦「テレビの実況では『立川だけステイアウト!!』って話題になっていて、『このまま行くのか!?』『やっぱり入った!!』みたいな騒ぎになっていましたね(笑)」

立川「『ここで入ると、ちょっとかっこ悪いぞ』とは思いました。『ただ単に一周遅れただけ』『焦って入ったみたいでかっこ悪い』みたいな(苦笑)」

──ひとりだけ残ってドライでタイムを出していら、とてもカッコよかったと思いますが……。

石浦「『やっぱ入んのかい!』みたいな展開でしたね」

立川「格好的には『このままドライで行ったろうか!』と思ったんですけど、みんな来ないし、これでタイヤが温まりきらなかったら……」

石浦「『ダサい!』っていう」

──結果的に、他の7台より1周分ウォームアップの時間が足りなくなったわけですが、その点は心配になりましたよね?

立川「雨の雨量が多い状況だとウォームアップの周回がある程度必要ですけど、雨の降り方で言うと軽く路面が湿るくらいだったのでそんなに心配していませんでした。あの路面状況ならウエットタイヤならすぐヒートするので、ウォームアップよりもタイムが出るのは1周しかないなと思っていました」

──石浦選手もその状況をわかっていたから、残り時間が少なくてもあまり心配はしてなかった。

石浦「いや、心配してましたよ。『間に合うのこれ?』『温まるの?』って(笑)。そうしたらアウトラップのセクター2が速かったんです。それで『よかったよかった』と。結果的に2周しましたが、ベストタイムはその1周目のタイムでしたよね」

立川「全然、コースに出たときからウォームアップは問題ないなと思いました」

──予選後の会見では、このようなダンプコンディション用のタイヤを選択していたと話していましたが、ダンプ用タイヤというのはどのようやタイヤなのですか?

立川「でかいクルマ用です。10トンのダンプ用の」

──…………。立川選手、会見でも通算24回目のポール獲得に『23(ニッサン陣営の象徴的なナンバー)という数字を抜けられた』と話していましたが、今日はとても饒舌ですね。

立川「ひさびさに機嫌がいいですから。まあ、ダンプ用はゴムとかを新しく開発して、少ないウエットなら大丈夫ですね」

石浦「今回、オートスポーツwebで『ブリヂストンはウエットに自信あり』みたいな記事が出ていましたね」

──記事を見て頂いてありがとうございます。ブリヂストン陣営はウエットコンディションを楽しみにしていたようですね。

立川「今日の予選Q2のコンディションをウエットというのか、微妙なところだけど」

石浦「あの記事で『自信あり』って言っていたスタッフは『この雨量のことじゃねぇぞ』って言っていると思います」

──もっと雨量の多い、フルウエットの雨のことですね。

石浦「そうです」

立川「『ドライに自信あり』というコメントは聞いていないので」

石浦「そうですね。聞いてないですよね」

──前回の第3戦鈴鹿では一時トップを奪うなど上位争いをしている最中、セーフティカー中にギヤトラブルでリタイヤしてしまって、2人とも相当悔しい思いされたと思います。

立川「そうですね。僕はもう、ピットに戻ってすぐに帰りました」

──レース後、取材させてもらおうと思ったら、すでにサーキットにいませんでした。

石浦「僕もすぐに帰りましたね」

立川「7時には家について晩飯を家で食べていましたね。ピットに戻ってからすぐにクルマに乗って、刈谷パーキングエリアで赤福を買って帰りました」

石浦「立川さん、鈴鹿の帰りには絶対、お土産に赤福を買うんですよ」

──オートスポーツwebのスタッフも鈴鹿のお土産には赤福をよく買います。

石浦「そうですかっていやいや、何の話? 刈谷で赤福買った話、この話、必要なんですか?」

立川「『赤福パワーで〜』とか(笑)。まあ今回、ウチはもう追い込まれているから。チャンピオンシップを考えると、もう追い込まれていて、むしろ若干、土俵から溢れている状態なので勝つしかない」

石浦「とりあえず今日は目立つことができてよかったです」

──明日ドライになる予報もありますが、ドライの手応えも十分ですか。

立川「これからというか、ドライのコンディションも朝に走っているので……まあ、予想より気温が低くて予選はドライタイヤだと厳しいかなと思っていたんですけど、レースを考えれば別に問題ないと思います。クルマはもう少しやりたいことがあるので、これからですね」

──石浦選手としては、これまでなかなかクルマのセットアップがしっくりこないなかで、今回はどのような部分がよくなっていると感じますか。

石浦「よくなっている部分……最初の富士が悪過ぎたので(苦笑)」

──よくなったというより、まずは通常状態に戻せたという感触でしょうか。

石浦「そうですね。今回もおそらくウエイトハンデなりに順位が並んでいると思うのですけど、それだけちゃんと今はパフォーマンスを出せているのかなと」

立川「前回の鈴鹿のクルマは結構よかったですけど、もてぎに関してはもうちょいかな。予選Q1の石浦の順位を見ていても、もう少しクルマのパフォーマンスを上げないと、と思いました」

石浦「朝セッションはドライで走っていて、専有走行で8番手でしたからね」

立川「あのあたりだと思う」

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 ふたりの話はまだまだ続きそうな勢いだが、まずは今季これまで大低迷ぶりを見せていたチーム・セルモが第3戦鈴鹿のどん底から、見事に第4戦でポールを獲得するV字回復ぶりを見せて、ふたりの手応えも十分の様子。決勝がドライになろうと、ウエットになろうと、そしてダンプコンディションになろうと、この明るいテンションがあれば、決勝でも強かったチーム・セルモが改めてお目見えすることになる……かもしれない。