F1初開催のムジェロに向け、チームは高精度のシミュレーションシステムで準備

 ムジェロ・サーキットは2020年第9戦トスカーナGPとして、F1を初めて開催する。F1初開催地が登場するのは、2016年のアゼルバイジャン・バクー以来のことだ。全長5.245kmに15カ所のコーナーを備えるこのコースでのレースに向けて、各チームはどのように準備を行ってきたのだろうか?

 ほとんどのF1チームにとって、最近ムジェロ・サーキットを訪れる機会を得たのは2012年5月の3日間にわたるF1テストの時だ。それ以降、マシンとエンジン、タイヤには大きな変化があり、コースにも小規模な改修が行われた。そのためチームはムジェロをまったく新しいサーキットとしてとらえている。

 ムジェロは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによるカレンダー変更により急遽F1を開催することが決まった。ドイツ・ニュルブルクリンク、ポルトガル・アルガルベ、イタリア・イモラ、トルコ・イスタンブールも同様だ。

 メルセデスは、初めてのレースに向けてどのような準備を行ったかについて、次のように説明した。

2020年F1第9戦トスカーナGP メルセデスのガレージ
2020年F1第9戦トスカーナGP メルセデスのガレージ

 新たなレースに向けた準備の最初のステップは、高精度のライダーマップを入手することだ。この3Dマップは、コース幅やコーナリングの勾配といった一般的なレイアウトの特徴だけでなく、縁石の構成やコース表面といった重要な詳細を反映する。マップはドライバー・イン・ループ(DiL)シミュレーターで使用できるほどに正確であり、ドライバーは周回における最適なレーシングラインを見つけることができる。ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスの両名は、ブラックリーのファクトリーにあるチームのDiLシミュレーターでムジェロ・サーキットを走り、準備を整えてきた。

 DiLで得られたレーシングラインは、オートシミュレーターによるさらなるシミュレーション作業の基礎を形成する。チームはそれを使用してマシンのセットアップの方向性の理解を深めるのだ。こうした高精度シミュレーションツールによって、エンジニアは初めてのサーキットに向けてファクトリーで多くの準備作業を行うことができる。一方でトラックサイドのスタッフは、セットアップだけではなく、タイヤと戦略作業に集中することができる。

 F1が定期的に開催されるコースでのレースウイークの準備については、チームは前年のデータを見て過去の経験から学ぶ。しかしながら、このデータにも一定の有効期限がある。たとえば、レースに向かう前にチームが理解しようとする側面のひとつが、そのトラックレイアウトに必要な特定のエネルギー管理やデプロイメントのマップである。その場合、ハイブリッド時代以前のデータはこれからのレースへの準備には古すぎて活用することができない。

 ドライバーにとっては、初めてのコースを走ることはいつもとは少々異なる経験になる。ドライバーはレースウイークエンドの過程でラップタイムを削っていく。初めてのコースの場合、シミュレーターを使用してコースのレイアウトを学んでから臨むことになるが、それでも実際のコースを走り出すと、通常のレースウイークエンド以上に大きなタイム向上を成し遂げていく傾向にある。実際のコースを走るなかで、ブレーキングポイント、レーシングライン、コーナリングスピードなどについて実験を繰り返していくからである。