ロールス・ロイスの「ブラック・バッジ」が魅せる世界観:前編【Playback GENROQ 2017】

ROLLS-ROYCE GHOST BLACK BADGE × WRAITH BLACK BADGE

ロールス・ロイス ゴースト ブラック・バッジ × レイス ブラック・バッジ

黒の美意識を表現した新時代ロールスの提案。

ヤング・カスタマーへ向けたロールス・ロイスの新たな回答。それが内外装を特別に仕立て上げたブラック・バッジ・シリーズだ。手作業で塗布される漆黒のボディカラーを纏った、クーペのレイスとサルーンのゴーストの世界観に清水和夫と佐藤久実が触れた。(前編/後編

ロールス・ロイス レイス ブラック・バッジの走行シーン

清水和夫「2台のキャラクターは明確に異なる。走りのレイスか極楽浄土のゴーストか」

若い富裕層は日本にも存在する。プレミアムカーの世界ではフェラーリの平均年齢が50歳代だが、ランボルギーニは30歳代、ベントレー・ベンテイガは40歳前後のユーザーが主な購買層だという。そこで伝統と格式を重んじるロールス・ロイスもついにヤングセレブリティ向けのモデルを手掛けた。レイス、ゴースト、ドーンに用意されるブラック・バッジ・シリーズだ。

私にとってロールス・ロイスと言えば高級車の王様。例えば銀座のクラブ街で見るファントムはとても風格があって、気品に満ちている。いったい、どんな人が乗っているのだろうかと覗きたくなるのだ。ロールス・ロイスだけは、サーキットもあまり走りたくないし、ダイナミックテストも憚られる。「そんなことをするクルマではありませんよ」とクルマから言われそうだ。急なハンドルと加減速とは無縁の存在である。近年のロールス・ロイスはBMWが開発しているので、昔よりも走りやすくなったとはいえ、である。

ロールス・ロイス レイス ブラック・バッジのインテリア

「ドライバーズカーに変身したロールス・ロイスのブラック・バッジ」

以前、東京で活躍するイギリス人と、日本人のビジネスマンを対象としたゴルフ・コンペに私も参加したことがあった。そこで知り合った英国大使館の職員はこんなことを言っていた。「かつてのロールス・ロイスは信号待ちのときに、エンジンの振動で自分の腕時計の金属ベルトからカチャカチャと音がしていました。でもBMW製エンジンになってからカチャカチャ音が消えたのです」。当時の技術力はおしなべてその程度だった。その後スタートしたロールス・ロイスとBMWの“ちょっといい”関係はV型12気筒を供給していた1992年頃からの付き合いだ。今では完全にBMWの傘下になったが、お互いに航空機エンジンを開発する歴史を持つ会社なので相性は悪くないだろう。

話が脱線したが、ともかくロールス・ロイスのクーペモデルであるレイスとサルーンのゴーストのブラック・バッジ・シリーズを箱根で走らせてきた。不思議なことに約300kmのドライブ中、後席でリラックスするよりも、ハンドルを握りたい衝動を抑えられなかった。ドライバーズカーに変身したロールス・ロイスのブラック・バッジとは、果たしてどんな高級車なのか、興味は尽きない。

ロールス・ロイス レイス ブラック・バッジのインフォテインメントスイッチ

「このクルマの助手席に乗るマダムか姫達は、身も心もとろけるに違いない」

用意されたレイスとゴーストをじっくりと観察する。両モデルとも気品に満ちた「黒」を基調とするが、細部にわたって光沢を抑えたダーククロムを随所に使うなど、工業製品としても、あるいは芸術品としても見事だ。インテリアは惚れ惚れするほど上品だが、アルミ合金製糸とカーボンの編み物をインパネに使用するなど、ちょっとヤンチャな雰囲気を残している。その微妙なバランスがさすが英国流だと納得した。

6.6リッターのV12ツインターボは870Nm(ゴーストは840Nm)のトルクを絞り出すと、ドライブシャフトがリファインされたという8速ATとの見事な制御と相まって、ちょっとスポーティに走れたのには驚いた。伝統的なロールス・ロイスをドライバーズカーに仕立てるのは、むしろBMWの得意とするところ。スポーツカーのDNAを持つ兄弟車だったベントレーを失った今、ブラック・バッジでドライバーズカーを造るのは、むしろロールス・ロイス自身が願っていたことかもしれない。箱根の山岳路をビッグなトルクでスムーズに走るレイス。このクルマの助手席に乗るマダムか姫達は、身も心もとろけるに違いない。

ロールス・ロイス レイス ブラック・バッジとゴースト ブラック・バッジと清水和夫氏

「最高の気持ちよさを提供する2台のブラック・バッジの世界観は極楽浄土だ」

さて、二台のレイスとゴーストをどう捉えるべきか。走りのキャラクターは見事に差別化されている。乗り心地がしなやかなゴーストは、後席に乗るか、自分でステアリングを握るか迷ってしまった。一方のレイスは積極的にハンドルを握りたくなる。というのは、ついアクセルを床まで踏み込みたくなるからだ。870Nmのトルクがリヤタイヤで駆動力に変換される瞬間に、アドレナリンが噴き出し、思わず声を漏らしてしまった。「気持ちいい〜〜」と。今の私のライフスタイルならゴーストを手に入れたいが、遊び心がある粋な人にはレイスがいいだろう。レベル2に近い運転支援も備わり、安全性も抜かりはない。

今年はレクサスLS、メルセデス・ベンツSクラス、アウディA8と高級車サルーンが続々と登場している。ポルシェ・パナメーラのプラットフォームで開発される次期ベントレー、Sクラスベースのマイバッハ、そしてロールス・ロイス。英国の衣装を纏っているが、その裏側では熾烈な欧州メーカーの威信をかけたブランド競争が行われている。そんな産業論的な考察はともかく、最高の気持ちよさを提供してくれた二台のブラック・バッジの世界観は、紛れもなく「西洋の極楽浄土」だった。その存在は依然として孤高だ。

(後編へ続く)

REPORT/清水和夫(Kazuo SHIMIZU)

PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

ロールス・ロイス レイス ブラックバッジ

ボディサイズ:全長5280 全幅1945 全高1505mm
ホイールベース:3110mm
車両重量:2430kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:6591cc
最高出力:465kW(632ps)/5600rpm
最大トルク:870Nm(88.7kgm)/1700-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40R21 後285/35R21
最高速度:250km/h(リミッター介入)
車両本体価格:3990万円

ロールス・ロイス ゴースト ブラックバッジ

ボディサイズ:全長5400 全幅1950 全高1550mm
ホイールベース:3295mm
車両重量:2490kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:6591cc
最高出力:450kW(612ps)/5250rpm
最大トルク:840Nm(85.7kgm)/1650-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/40R21 後285/35R21
最高速度:250km/h(リミッター介入)
車両本体価格:3795万円