ロールス・ロイス ゴーストが2代目にフルモデルチェンジ! 新型の知的な進化を小川フミオが解説

Rolls-Royce Ghost

ロールス・ロイス ゴースト

変化したユーザーの嗜好に合わせて開発

ロールス・ロイス・モーター・カーズが、「ゴースト」をフルモデルチェンジ。2020年9月1日に、オンラインで公開された。

起業家のためのビジネスツールとされる位置づけはそのままに、ユーザーのテイストの変化に合わせて開発されたのが、最大の特徴という。

新型ロールス・ロイス ゴーストのリヤビュー

アルミ製フレーム+4輪操舵+4輪駆動

「ゴーストのユーザーは、たとえエクステンデッドホイールベース仕様に乗っていても、週末は自分でステアリングホイールを握ることを好むひとたちです。新しいゴーストはアルミニウムのスペースフレームを使い、かつ4輪駆動システムと4輪操舵システムで、オーナーの要求に応えます」

ロールス・ロイス(以下RR)が用意したプレスリリースには上記の事柄が書かれている。「現行ゴーストから引き継いだものは、スピリット・オブ・エクスタシーと傘だけ」とするように、新時代のサルーンとして誕生した。

新型ロールス・ロイス ゴーストのスピリット オブ エクスタシーイメージ

ファントムとは明確に異なるプロファイル

スタイリングも現行モデルとはだいぶ印象が異なる。「パンテオングリル」の扱いが従来とやや異なり、ボディと一体化した印象が強くなった。現行モデルには、戦前から続いていたボンネットのパーティションラインの名残を表すクロームのモールが、スピリット・オブ・エクスタシーからウインドシールド手前まではめ込まれていたものの、新型ではそれも廃された。ラジエターマスコットの「スピリット・オブ・エクスタシー」は、独立してボンネット上に。電動で格納させると、新型ゴーストの流麗なシルエットが際だつ。

プロファイル(橫からの眺め)では、キャビンはやや薄く見えるうえに、前から後になめらかにつながるシルエットが、スポーティさを強調しているように思える。ラインナップの頂点に位置するファントムが後席重視のモデルであるのに対して、新型ゴーストは明確に異なるキャラクターを与えられた印象だ。

新型ロールス・ロイス ゴーストのスカッフプレートイメージ

これみよがしの装飾よりも“ホンモノ”で勝負

RRのデザインチームは、いまのゴーストオーナーの価値観の変遷を注視しながら、今回のモデルチェンジを行ったという。大きくいうと、これみよがしのけばけばしさを避けつつ、ここでしか手に入らないホンモノを提供する。

「よけいなものは削ぎ落としてシンプルにすることと、内容を充実させること。そのために、他にはないような素材も選んでいます。デザインは、知的であり、限定的であり、かつでしゃばらないことを旨としました」

新型ロールス・ロイス ゴーストのフェイシアイメージ

表層的な飾り立てに対するアンチテーゼ

ロールス・ロイスは、新型ゴーストのデザイン哲学を説明する。

「開発哲学は、ファッション・コニョセンティ(ファッション業界の目利き)が作り出した造語であるプレミアム・ミディオクラシー(プチぜいたく)に対する反証、です。大きなブランドロゴのように、表層的な飾りたてをするプロダクトはプレミアム・ミディオクラシーの代表的なもの」

そんなトレンドから離れることが、新型ゴーストの出発点だったそうだ。

「クルマだと、ステッチのめったやたらの多用や、さまざまなデバイスの採用。それが内容のないプロダクトを飾りたてることで、存在しない本当のラグジュリーの幻想を作り出してきたのです」

ファッションといえば、羊毛ひとつとっても、市場で最高品質のものを買い付けるパリのメゾンを連想した。えも言われぬ着心地を実現するために、世界中から最高の素材を集めて服をつくる。見かけでなく、着心地。それに似て、本質を追求することが、RRのクルマづくりだと、強調される。

新型ロールス・ロイス ゴーストのパネルイメージ

パネルの精度に見るものづくりの姿勢

新型ゴーストのばあいは、サイドパネルがいい例といえよう。Aピラーからルーフ、そしてリアフェンダーにいたるまでが1枚の鋼板で成型されている。全長5.5メートルを超えるクルマでこの凝りかた。しかも外板をプレスする精度は高く、写りこむ景色がゆがんでみえることはない。

これを実現するために、4人の熟練工がかかりきりで溶接を行う。パネルのつなぎ目が見当たらないことは、いいものを見慣れているひとならすぐわかるようだ。これがRRのいう“内容の詰まった”プロダクトのあかしである。

1961年製シルバークラウド 2のロングホイールモデルのフロントイメージ

シルバードーンやシルバークラウドに通じる美肌

RRでは、この継ぎ目がないようなきれいな面は、「シルバードーン」(1949年-59年)や、その後継車である「シルバークラウド」(1955年-65年)といった往年のモデルとのつながりを感じさせると示唆している。

RR社内のデザイン(ジョン・ブラッチュリー)によるシルバークラウドは、とりわけ美しいボディをもっていたため、それまでは外部のコーチビルダーにボディを依頼していたオーナーたちが、このお仕着せのボディでもじゅうぶん満足したという“史実”も残している。

新型ロールス・ロイス ゴーストの俯瞰目イメージ

10年の歳月をかけた渾身のアシ

「プラナーサスペンションシステム」も、見えない“内容”の一例だ。そもそも低重心化をしっかり守った車体設計であるゴースト。さらに縦方向と橫方向の動きをしっかり制御すべく、新しいプラナーシステムを開発した。

フロントサスペンションのアッパーウィッシュボーンにダンパーを組み合わせるのが、ゴーストで採用された新システム。全体の開発に10年かけた、とRRでは主張する。アッパーウィッシュボーン・ダンパーユニット単体にも、新型ゴーストに搭載できるまでに5年の開発期間を要したそうだ。

新型ロールス・ロイス ゴーストのコクピットイメージ

GPSと連動して最適のギヤを選ぶ「フラッグベアラー」を採用

これに「フラッグベアラー」なるカメラで路面の表面の状態を読み、サスペンションの調整するシステムと、さらに、GPSの地図と連動してコーナーの手前で最適のギアを自動で選択するシステムが組み合わされている。

結果、実現したのは、ロースルロイスが標榜する「マジックカーペットライド」(空とぶじゅうたんのような乗り心地)のさらなる進化と説明されるのだ。

こちらも、RRの製品にすでになじみのあるひとなら、期待も出来るだろうが、知らないひとには想像がむずかしい。でも実際に体験すると、そのフラットな乗り心地に驚くだろう、RR車だから持っている“真価”といえる。走らせてみて、わかる。新型ゴーストで強調されるのは、その点だ。

REPORT/小川フミオ(Fumio OGAWA)

【SPECIFICATIONS】

ロールス・ロイス ゴースト

ボディサイズ:全長5546 全幅2148 全高1571mm

ホイールベース:3295mm

車両重量:2490kg

エンジン:V型12気筒DOHC48バルブツインターボ

総排気量:6748cc

最高出力:420kW(571ps)/5000rpm

最大トルク:850Nm/1600rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:AWD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン/エアスプリング 後5リンク/エアスプリング