WEC:揺れるLMP2ジェントルマンの立ち位置。“義務化”でなければ参戦台数は減少か

 WEC世界耐久選手権のCEO、ジェラール・ヌブーは2020-2021年に開催予定の来シーズンのLMP2クラスについて、ブロンズドライバーの採用義務化を含めた参戦要件の変更を検討していると述べた。

 FIAが毎年発表するドライバー・カテゴライゼーションは上からプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズとなっており、WECのLMP2クラスでは現在、1チームの3名のドライバーのうち、「シルバー、またはブロンズのドライバーを1名」エントリーすることが義務付けられている。

 2019/20シーズンのWEC・LMP2クラスにシリーズエントリーする8チームのうち、ブロンズドライバーを抱えているのは半数の4チーム。つまり、現在は4名のブロンズ・ドライバーがエントリーしていることになるが、彼らのうち何人かは、2021年に他のプログラムへの切り替えを検討していると見られる。

 今シーズンの序盤に浮上した改訂案、すなわちLMP2クラスにおいてブロンズドライバー1名の登録を必須(シルバーでは不可)にするという案については、賛成意見も増加している。

 現状、クラス順位の上位はシルバードライバーをエントリーするチームで固められる傾向にあるが、ブロンズドライバーの登録が義務化されれば、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のLMP2カテゴリーの場合と同様に、すべての“ジェントルマン”ドライバーたちがクラス優勝を争えるようになる。

 世界的な健康危機と景気後退が懸念されるなかで参戦台数を確保するため、来季のこのクラスにおいて可能なアプローチについて、シリーズとLMP2エントラントの間で「優れた議論」がなされているとヌブーは明かした。

「アプローチはチームによって異なるため、誰にとっても100%良いといえる解決策を見つける必要がある」とヌブーはSportscar365に対して語った。

「LMP2においては、ジェントルマンドライバーの地位が重要だ。言うまでもなく、彼らが多くの予算をもたらしてくれるからだ。我々は(参戦台数が減らないために)何らかの予防措置を講じる必要があるが、現時点では何も決定していない」

「(第6戦スパにおいて)LMP2チームと我々のスポーティング部門の間で、優れた対話とミーティングがもたれた。ブロンズドライバーの義務化、ドライバーに関するさまざまなバランス、最低運転時間などについて、何がベストなのかを探るためだ」

「いずれにせよ、シーズンの途中でルールを変えることはできない。だが、この件はチームとの議論における最優先の議題となっている。もし新たなルールを導入すべきであれば、次のシーズンから採用されるだろう」

山下健太の参戦チームではハイクラス・レーシングもブロンズドライバーを抱える。2019/20シーズンのフルシーズンエントリーではこのほか、レーシングチーム・ネーデルランド、クール・レーシング、チェティラー・レーシングがブロンズドライバー込みで戦う。
山下健太の参戦チームではハイクラス・レーシングもブロンズドライバーを抱える。2019/20シーズンのフルシーズンエントリーではこのほか、レーシングチーム・ネーデルランド、クール・レーシング、チェティラー・レーシングがブロンズドライバー込みで戦う。

■「ブロンズ義務化」の場合の課題点

 LMP2クラスにおいてブロンズドライバーの参加を禁止し、シルバー・ゴールド・プラチナのみのクラスとすることを検討しているかと問われたヌブーは、それは現在の計画にはないと示唆した。

「私はそれがいいとは思わない。だが、どんな解決策があるのか、見てみたい。我々はすべてのドアをオープンにしておくべきで、何がベストかを考えなければいけない」とヌブー。

「オーガナイザーとして、オープンかつ持続可能な戦いの舞台を維持することに注意を払う必要がある」

「同時に、経済市場の敏感さにも注意が必要だ。このカテゴリーがジェントルマンドライバーの参入を歓迎するのであれば、彼らの立ち位置を明確にする必要がある」

「彼らは週末のうち40分だけマシンをドライブするために、そして勝負に負けるために、サーキットに来るわけではない。ジェントルマンドライバーのシートを確保するという精神があるのであれば、よい解決策を見つける必要がある」

「これがいま、我々が議論をしていることだ。私は解決策を見つけられると信じている」

現在LMP2クラスで3連勝中のユナイテッド・オートスポーツ22号車の場合、ドライバーはプラチナ・プラチナ・シルバーという組み合わせ。このほかJOTA38号車も同様の組み合わせで、シルバー1名という「最低限の要件」を満たしつつ高い戦闘力を確保している状態だ。
現在LMP2クラスで3連勝中のユナイテッド・オートスポーツ22号車の場合、ドライバーはプラチナ・プラチナ・シルバーという組み合わせ。このほかJOTA38号車も同様の組み合わせで、シルバー1名という「最低限の要件」を満たしつつ高い戦闘力を確保している状態だ。

 LMP2に参戦するレーシングチーム・ネーデルランドのブロンズドライバー、フリッツ・バン・イアードは、彼の来季の参戦計画を決定するために、WECがブロンズドライバーをどの程度受け入れるのかを明確にすることを望んでいる。

 ブロンズドライバーの登録義務化に賛同するイアードは、IMSA・LMP2クラスへの参入を長い間待ち望んでいた。だが現時点では、アメリカへの渡航およびスケジュールが不確実であることが、北米で行なわれるIMSAへの参戦を妨げていると説明する。

「もし『LMP2はブロンズドライバーのためのクラスではない』とWECが言うのであれば、私はそれを完全に理解することができる」とバン・イアード。

「彼らがそうだと言うなら、コンペティティブなクラスとなるだろうね」

 ブロンズ義務化を支持するイアードであるが、同時に課題点も指摘する。

「もしブロンズドライバーが必須となった場合、そもそもブロンズドライバーを入れるつもりがなかったチームは、どこからブロンズドライバーを探してくればいいのか、という問題はある」

「いずれにせよ、WECが決断を下してくれることを望んでいるよ。我々はスタックしており、何をすべきか分からないでいるんだからね」

「WECが『ブロンズドライバーはLMP2の必須要件であり、年間6戦のカレンダーを組む』と決定するなら、それは私の興味を引くものになるだろう」

「10月上旬までには、来季のプログラムを決定する必要がある。もしアメリカでIMSAに参戦するのなら、メンテナンスための場所を探し、現地のスタッフを見つけて……とすべての手配を始める必要があるからね」