真面目なリファインで熟成されたマセラティ クアトロポルテ、6世代目が到達した極地とは?【Playback GENROQ 2016】

Maserati Quattroporte × Quattroporte GTS GranLusso × Quattroporte GTS GranSport

マセラティ クアトロポルテ × クアトロポルテ GTS グランルッソ × クアトロポルテ GTS

リファインの真相。

マセラティの最上級サルーン、6代目クアトロポルテも登場から3年が経過。ここに来て遂にマイナーチェンジが施され、さらなる熟成が図られた。2つのスタイルに多くの安全対策など、最新らしい装備が際立つ。イタリアの伊達男も、ようやく知的になったと感心するばかりである。

マセラティ クアトロポルテ GTS グランスポーツの走行シーン

「環境対策に安全装備などを追加。知的な伊達男のようである・・・」

2013年に華々しいデビューを飾った6代目クアトロポルテ。マセラティが掲げる“年産5万台”計画の第一弾としてリリースして以来、世界各国で大ヒット、この日本でもマセラティの名を広めることに成功したこの1台が今回マイナーチェンジされた。思えば3年という月日が経過していただけに、リファインされて当然の時期だ。しかしそう思わせなかったのは、流行りを追わないその個性ゆえだろう。

とはいえ、今回の変更点は当然、エクステリアやインテリアが中心。そのスタイルには、「グランルッソ」と「グランスポーツ」という2つのトリムオプションが用意され、前者はエレガントを強調し、フロントバンパーのデザインを上品に仕立て、さらにインテリアにはエルメネジルド・ゼニアによるシルク素材を用いるなど、その名の通り“ルッソ=贅沢”という仕様。後者は、フロントバンパースポイラーをアグレッシブなデザインで主張し、エキゾーストエンドもスポーティに、インテリアはハイグロス仕上げのピアノ・ブラックのウッドトリムをはじめ、スポーツ・ステアリングやスポーツシートなどが装備される。

外観上は一見すると大きな違いこそ見出せないものの、ボディカラーによっては、だいぶ印象は異なるからいずれを選択するか悩むかもしれないが、特に走行性には違いがないから自身のスタイルと照らし合わせて選べば後悔はないだろう。いずれも魅力的であるのは間違いない。

マセラティ クアトロポルテ GTS グランスポーツのインテリア

「今のマセラティが如何に環境意識が高いかを伺わせる」

ラインナップは、530ps&710Nmを誇るV8ツインターボを搭載するGTSをトップグレードとし、V6ツインターボに3グレードを用意。410ps&550NmのクアトロポルテSには後輪駆動と4WD仕様のQ4の2モデルを、そして350ps&500Nmのベーシックグレードを揃える。その上で先の2つのトリムオプションを選択することになるから意外にも選択肢は広い(ただし、ベーシックグレードの場合、日本仕様はグランスポーツの選択は不可能とのこと)。

実はこのラインナップ自体は前期モデルと変わらない。しかし、今回よりユーロ6規制に適合し、排ガスと燃料消費量が最大で12%改善されているのが大きな違いだ(ベーシックモデルに関しては、同時に20ps向上している)。もちろん、それには新たにラジエーターに設けられた、電動エアシャッターの効果が大きい。これは、エンジン温度の最適な制御や車両の空気抵抗の低減を電子制御によりコンントロールし、ラジエーターに備わるエアベントを必要に応じて開閉し効率化を図るというもの。すでにSUVのレヴァンテやライバル車の一部には採用されている新技術だが、さほど定番化されていないから今のマセラティが如何に環境意識が高いかを伺わせる一例だろう。

その他、新しい装備としては、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=ストップ&ゴー機能付き)やレーン・デパーチャー・ワーニング(70km/h以上で作動。走行中、レーンを逸脱しそうになった場合、警告表示と警告音で知らせる)、エマージェンシー・ブレーキ(衝突の危険があると車両が判断した場合、警告表示と警告音にて知らせる。それでもドライバーが反応しなかった場合は、システムが自動的にブレーキをかけ減速させることにより、衝突の被害を最小化する)やフォワード・コリジョン・ブレーキ(ブレーキ操作による制動が不十分な場合、アシストが作動し、制動力を高める)など運転支援装備や安全対策が追加されている。

マセラティ クアトロポルテ GTS グランルッソのインテリア

「マイナーチェンジとはいえ、変更点が多く乗り味自体は各部が熟成された」

また、インフォテイメントシステムが一新されたのも話題だ。タッチパネル式の8.4インチと前期型と変わらないものの、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応し、手持ちのスマートフォンと連動することによって様々な機能が使えるうえ、音声認識機能を活用できるようになった。それに加え、各種機能もセンターコンソール上に新設されたロータリーコントロールにより操作が可能となったから機能性は格段に向上している。

前置きが長くなってしまったが、このようにマイナーチェンジとはいえ、意外にも変更点が多く乗り味自体は各部が熟成されたようで実に好ましい走りを披露してくれた。大きな違いこそ見られないものの、さすがはマセラティ、スポーティさを基本にしつつも、乗り心地は以前にも増して良くなっているのは確か。お家芸とも言えるスカイフックサスペンションは、とにかく良い仕事をする。フロントにダブルウイッシュボーン、リヤにマルチリンク、そして前後重量配分は50対50を継承しているとあって、とにかく全体のバランスは見事というほかない。

マセラティ クアトロポルテ GTSのリヤスタイル

「全体的にシャシー関連が熟成されたことで、より磨きがかかった印象だ」

中でも最上級グレードのV8ツインターボを搭載するGTSは、フェラーリ製ユニットらしい活気溢れるパンチ力に魅了されてしまった。特にトルクの立ち上がり方が俊敏で、追い抜きなどで一気にアクセルを開けた時など、オーバーブースト機能が働くとあって、まさにワープ的な一面を見せるから頼もしさを感じる(オーバーブースト時は710Nm。通常は650Nm)。スペック的には前期型と変わらないとはいえ、全体的にシャシー関連が熟成されたことで、より磨きがかかった印象だ。

もちろん、V6ツインターボのクアトロポルテSも同様。限られた時間ですべてのモデルに乗れた訳ではないが、軽快感という点では確実にV8を凌ぎ、レスポンスの良いエンジンゆえに大きな不満もない。逆にドライバーはひと昔前に若返ったように元気いっぱいな走りを楽しんでしまうかもしれない。とにかくエンジンを回すことに快感を覚える類で、ノーズの軽さと相まって峠などではこちらの方が楽しさを感じられる。電動油圧式パワーステアリングもアシスト量が見直されただけのことはあり、正確性が増していたのも特筆すべき点だろう。狙ったラインが描きやすくなり、スポーツモードではその機敏性に拍車をかけるから、腕のあるドライバーなら必ずやその期待に応えてくれるはずだ。

それにしても今のマセラティは生真面目だと思う。これだけ環境対策や安全を考慮し、さらに熟成を試みてくるのだからひと昔前とは大違いだ。“知的な伊達男”になったとでも言おうか。そんな印象に尽きる。

REPORT/野口 優(Masaru NOGUCHI)
PHOTO/MASERATI S.p.A.

【SPECIFICATIONS】

マセラティ クアトロポルテ

ボディサイズ:全長5264 全幅1948 全高1481mm
ホイールベース:3171mm
トレッド:前1634 後1647mm
車両重量:1860kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2979cc
ボア×ストローク:86.5×84.5mm
圧縮比:9.7
最高出力:275kW(350ps)/5500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1750-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径/キャリパー:前345×28mm/4ピストン 後330×22mm/シングル
タイヤ&ホイール:前245/45R19 後275/40R19
最高速度:270km/h
0-100km/h:5.5秒
燃料消費率(NEDC複合):9.1リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):212g/km

マセラティ クアトロポルテ S

ボディサイズ:全長5264 全幅1948 全高1481mm
ホイールベース:3171mm
トレッド:前1634 後1647mm
車両重量:1860kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2979cc
ボア×ストローク:86.5×84.5mm
圧縮比:9.7
最高出力:302kW(410ps)/5500rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/1750-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径/キャリパー:前345×28mm/4ピストン 後330×22mm/シングル
タイヤ&ホイール:前245/45R19 後275/40R19
最高速度:286km/h
0-100km/h:5.1秒
燃料消費率(NEDC複合):9.6リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):223g/km

マセラティ クアトロポルテ S Q4

ボディサイズ:全長5264 全幅1948 全高1481mm
ホイールベース:3171mm
トレッド:前1634 後1647mm
車両重量:1920kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2979cc
ボア×ストローク:86.5×84.5mm
圧縮比:9.7
最高出力:302kW(410ps)/5500rpm
最大トルク:550Nm(56.1kgm)/1750-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径/キャリパー:前360×32mm/6ピストン 後345×28mm/4ピストン
タイヤ&ホイール:前245/45R19 後275/40R19
最高速度:286km/h
0-100km/h:4.9秒
燃料消費率(NEDC複合):9.7リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):226g/km

マセラティ クアトロポルテ GTS

ボディサイズ:全長5264 全幅1948 全高1481mm
ホイールベース:3171mm
トレッド:前1634 後1647mm
車両重量:1900kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3799cc
ボア×ストローク:86.5×80.8mm
圧縮比:9.5
最高出力:390kW(530ps)/6800rpm
最大トルク:710Nm(72.4kgm)/2250-3500rpm※
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径/キャリパー:前380×34mm/6ピストン 後345×28mm/4ピストン
タイヤ&ホイール:前245/40R20 後285/35R20
最高速度:310km/h
0-100km/h:4.7秒
燃料消費率(NEDC複合):10.7リッター/100km
CO2排出量(NEDC複合):250g/km

※オーバーブースト時

※GENROQ 2016年 9月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。