F1ベルギーGP木曜会見(3):人種差別問題で団結を強調。GPDA理事ベッテル「ボイコットを考えるのは時期尚早」

 第7戦ベルギーGPが開幕する1週間前の日曜日の8月23日、アメリカのウィスコンシン州ケノーシャで、ジェイコブ・ブレークさんが警官に撃たれ、重症となるという痛ましい事件が起きた。アメリカでは、今年5月にもアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが警官から必要以上の暴行を受けて死亡した事件が起きており、各地で警察に対する黒人への差別を撤廃する抗議の声がこれまで以上にあがっている。

 プロバスケットボールリーグ『NBA』の一部チームの選手たちが試合出場を拒否したため、プレーオフ3試合が延期された。そのほか『MLB』などでも同様のボイコットが起き、試合が延期されている。

 テニスの全米オープンの前哨戦とされる『Western & Southern Open』に出場していた大坂なおみ選手も、8月27日に控えていた準決勝を棄権すると自身のツイッターで表明したほどだ。その後、大会を主催する女子テニス協会(WTA)が大坂の決意を尊重し、予定していた27日の試合を中止して翌日に順延することを決定したため、一転して出場することを決めた。ちなみに大坂選手はハイチ人の父と日本人の母を持つ。

 この大坂選手の行動を、自身の『Instagram(インスタグラム)』で「とても誇らしく思う」と称賛したのが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)だ。彼もまたグレナダ出身のアフリカ系イギリス人の父親とイングランド人の母親を持つ。

 そのため、木曜日の会見では、ハミルトンに対してボイコットに関する質問が飛んだ。これに対して、ハミルトンは「まず、主催者、コメンテーターらをはじめとした、アメリカのスポーツに関わる人たちが行っていることは素晴らしいと思う。みんな、今回は本気で変化を促しているんだよ。そこまでしなければいけないというのは本当に残念だね」と語った後、こう続けた。

「ただ、それはアメリカだから。いま僕たちはアメリカじゃなく、ベルギーにいる。僕がここで何をしても、そんなに影響は出ないだろう。まだ(アメリカにいる選手の)誰とも話をしていないけど、僕の心は彼らと同じ、ひとつだ。だから、今後何ができるかを考えたい」

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2020年F1第7戦ベルギーGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)の理事の1人であるフェラーリのセバスチャン・ベッテルは、ボイコットするかどうについて、次のように語っている。

「もしその話題があがったら、みんなで話し合わないといけない。僕らは何かあれば、必ずみんなで話をする。経験豊富なドライバーもいれば、若いドライバーもいる。意見を共有することが大切なんだ。でも、いまはまだ何もテーブルの上に出ていない。だからボイコットを考えるのは時期尚早だと思う。いまはまだレースをボイコットする理由もないと思うしね。でも、それが必要だという声があれば、みんなで話して、それに応じて行動していく」

 その上で、ベッテルはボイコットはしないが、差別を撤廃する運動は続けると強調した。

「大事なのは僕らが一致団結し、メッセージを送り続けること。ドライバーが膝をつくかつかないか、それは関係ない。大事なことは、メッセージを送り続けたいという気持ちだ」

シャルル・ルクレール&セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
2020年F1第7戦ベルギーGP シャルル・ルクレール&セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)

 いつもは明るいダニエル・リカルド(ルノー)も、この話題に対しては、神妙な面持ちだった。

「それは重い問題だ」

 リカルドはそう語った後、しばらく沈黙し、こう続けた。

「こういう事件がまた起きた。いつになれば終わるのか? いったい、いつまで続くのか? 今回彼ら(アメリカで選手たち)がドラスティックな手段を選び、ボイコットしたことは理解できる。変化が起こるまではドアをたたき続けるしかないからね」

 ベルギーGP前に今年のカレンダーが最終戦まで正式に決定した。そこにはアメリカでのグランプリは掲載されていない。2021年にアメリカGPが復活し、人種差別問題が収束していなかったら、そのときF1はこの問題とどう向き合うのか。

ダニエル・リカルド(ルノー)
2020年F1第7戦ベルギーGP ダニエル・リカルド(ルノー)