ブレーキ問題が決勝で表面化。とっさの判断でマシンを飛び降りたビニャーレス/MotoGP第6戦レビュー(2)

 MotoGP第6戦スティリアGPのMotoGPクラス決勝中、17周目の1コーナー進入でマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が自ら転倒。ライダーを失ったマシンは直立したまま1コーナー先のエアフェンスに激突して炎上し、レースは赤旗中断となってしまった。

 このアクシデントは、ブレーキのオーバーヒートによるトラブルが原因で、レース序盤からその兆候がありながら、その中でベストをつくしていたビニャーレスだったが、17周目の1コーナー進入で止まり切れないと判断。自らマシンから飛び降りる決断を下した。このときの速度は約218km/h。転倒時の衝撃は23.45Gに達し、路面を約4.8秒滑走して止まったビニャーレスは、エアバックシステムに守られて大きなケガを負うことなくピットに戻って来たが、再開されたレースには出走しなかった。

 レッドブルリンクはブレーキにとって厳しいコースで、1コーナー、3コーナー、4コーナーとハードブレーキング区間があり、カタルニア、もてぎ、セパンと並んでグランプリ開催コースの中でも最もブレーキに対する負担の高いコースとして知られている。

 ヤマハ勢は前週のオーストリアGPからブレーキのオーバーヒートの問題を抱えていた。特にファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は決勝レース1では4コーナーでオーバーランを喫し、赤旗中断後のレース2ではブレーキキャリパーを交換して臨んだが、問題は改善しなかったという。

2020年MotoGP第6戦スティリアGP ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)

 これに対して、ブレーキシステムを供給するブレンボは、スティリアGPでは対策を施した新しいシステムを供給。クアルタラロ、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)がこの新型ブレーキを採用したが、オーストリアGPではブレーキに関して問題を抱えていなかったビニャーレスは、新型ブレーキを試してみたものの、フィーリングの面で従来型を選択し、予選までブレーキが問題となることはなかった。

 しかし、フリー走行や予選と異なり、決勝レースでは他車とのバトルとなり、ブレーキングもよりハードになったことで、ブレーキシステムの冷却面に問題が発生したようだ。ビニャーレスは序盤は6番手を争っていたものの、4コーナーや3コーナーで止まり切れず、ワイドラインとなるなど、ブレーキの問題により次第にポジション後退を余儀なくされた。

「4ラップ目ごろからブレーキがうまく効かない状態だった。それでもベストをつくし、(アンドレア・)ドヴィツィオーゾに仕掛けて前へ出ることができたが、ストレートで一気に抜き返されてしまった。この3戦とてもいい仕事をしていながら決勝では苦戦し、自分たちのミスによって上位を逃してしまったことは残念だ」

「今日の転倒は驚くような出来事で、あんな感覚は今まで一度も味わったことがない。ブレーキが完全に効かなくなり、マシンから飛び降りなければならなかった。ブレーキがオーバーヒートした結果だけど、これは決して普通のことではないね」

「幸い、僕自身は無事だった。次のミサノにはまた100%の状態で臨むよ。僕たちは常にポジティブな気持ちを維持し、次のレースに集中していかなければならない。ミサノはヤマハと相性のよいコースで、昨年はいいレースができた。今年はもっと上を目指せると思う」とビニャーレス。

 2週続けて衝撃的な転倒が発生したレッドブルリンク。今回は転倒時に先行車もおらず、ビニャーレスの適切な判断で他のライダーを危険に巻き込むことがなかったことが幸いだった。

2020年MotoGP第6戦スティリアGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)
2020年MotoGP第6戦スティリアGP マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)