中上、マルク・マルケス不在のなかホンダ勢トップライダーとしての活躍/MotoGP第6戦スティリアGPレビュー

 MotoGP第6戦スティリアGP予選でMotoGPクラスのベストグリッドとなる2番手を獲得し、初めてフロントロウからスタートした中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)。

「MotoGPクラスで初めてのフロントロウを獲得しました。ポールポジションまでもう少しでしたが、ポールポジション争いをするとは思ってもいませんでした。レースウイークを通してマシンのフィーリングはとてもいいので、フロントロウを獲得できてよかったです。決勝は今日とは違う戦いが待ち受けています。しかし、準備はできています。表彰台争いをする自信はあります。もし優勝争いをするチャンスがあればチャレンジしますが、まずは表彰台に上がることです。この調子でがんばります」と、予選を終えて語っていた。

 この言葉どおり、決勝でもスタートからトップ争いに加わり、当初28周の予定で行なわれたレースの15周目にはジャック・ミラー(プラマック・レーシング)との接戦を制して2番手に浮上。この時点で約1秒6先行していたトップを走るジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)を追い始める。ところが、続く16周目のメインストレートでブレーキトラブルに見舞われたマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が自ら転倒し、マシンが1コーナーのエアフェンスを直撃して炎上したため、赤旗が出てレースは中断となってしまい、レースは12周で仕切り直しとなった。

 MotoGPクラスは1レースウイーク中、フロント10本、リヤ12本、トータル22本のスリックタイヤがミシュランより供給されている。スリックタイヤにはフロント、リヤ共に3種類のコンパウンドがあり、この中からライダーはタイヤを選択し、フリー走行から決勝に向けてのタイヤを決める。中上は最初の決勝ではフロントにミディアム、リヤにソフトをチョイスして臨んでおり、これはQ2のアタックラップで使った組み合わせと同じだった。

 ところが、中上にはこの組み合わせのニュータイヤがレース2に向けて残っていなかった。そのため、レース2ではQ2で9周使用したフロントと、4周使用したリヤのユーズドタイヤを装着して臨まざるを得ず、ニュータイヤを選択した回りのライバルたちに対してハンディを負うことになる。

 レース2でもスタートから果敢にトップ集団の中で善戦した中上だったが、ユーズドタイヤでは無理が効かず、オープニングラップを7番手で終了。それでも12周のレース中、常にトップ争いが見える位置で周回を重ね、8周目にはブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)を交わして6番手に浮上するも、11周目にアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)の先行を許し、7位でゴールとなった。

■レプソル・ホンダチームのマネージャー「今週末の一番の注目は、中上貴晶の走り」

 トップから7位の中上までのタイム差は1.864秒。決勝レース中のファステストラップでは、6番手となる1分24秒110を記録。ニュータイヤで出たレース1では2番手となる1分24秒209だったことからも、前後ユーズドタイヤながら、中上が健闘したことを物語る。

「7位という結果にがっかりました。赤旗中断は残念でしたが、でも、これがレースです。仕方がありません。中断になるまでは完ぺきな走りでした。ジャックを抜いて2番手に上がってからは、ミルに追いつけると思ったし、優勝も可能だと感じました。レース2は12ラップで行われましたが、2レースともにベストをつくしました」

「残念ながらレース2は表彰台争いができませんでしたが、次戦に向けて大きな自信になるレースでした。2週間のインターバルを経て、また3連戦となります。次の連戦では表彰台に立つために今まで以上に全力をつくしたいです。すばらしい仕事をしてくれたチームとすべてのスタッフに感謝します」とレースを終えて語った中上。

 昨年はオランダGPでバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)の転倒に巻き込まれて右肩を負傷。シーズン中盤以降、肩の状態が悪く、ホームグランプリの日本GP後のレースを欠場して治療に専念することを選択。十分に治療に時間をかけたその判断は正しく、MotoGPクラス3年目となる今シーズン開幕前のテストから上位にその名を連ねるようになった。

 新型コロナウイルスの影響で変則的なシーズンとなったが、リスタート後の5レースをすべてトップ10でフィニッシュ。5戦を終了してランキング6位につける。2戦目のアンダルシアGPではMotoGPクラスベストとなる4位に入賞し、今レースでは赤旗中断さえなければ、表彰台フィニッシュは確実だった。マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)をケガによる欠場で欠いた中、中上はホンダ勢のトップライダーとして活躍を収めており、レプソル・ホンダチームのマネージャーであり、中上をMotoGPアカデミー時代より見ているアルベルト・プーチは今回のレースを次のように振り返った。

「今週末の一番の注目は、中上貴晶の走りでした。彼は自身の潜在能力を遺憾なく発揮し、今やトップライダーのひとりとしての地位を確立しています。残念ながら第2レースでは運が悪く、再び表彰台に挑戦することができませんでした。私たちは彼が今年行った改善に満足しています。彼が常にトップ10に入り、トップ5のために戦うというポジティブな走りを続けることを願っています。中上は間違いなく最高峰クラスの3シーズン目でレベルを上げたということです。赤旗中断がなければ、タカはMotoGPで初の表彰台を獲得していたでしょう。残念ですが、これがレースです」