【レースフォーカス】2勝挙げたKTM、2020年型RC16は「スムーズになった」。コンセッション適用外の影響は/MotoGP第6戦

 2020年シーズン、KTMの躍進が続いている。MotoGP第6戦スティリアGPで、KTMとしては今季2勝目を果たした。KTMはこの優勝により、これまで受けていたコンセッションを外れることになる。

 マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の負傷欠場を筆頭に、2020年シーズンはここ数年とは違った展開となっている。KTMの飛躍にはある程度の期待感があったとはいえ、第6戦までに挙げた2勝は、トピックスのひとつと言って差し支えないだろう。

 2017年シーズンからMotoGPクラスにフル参戦を開始したKTM。激しい雨のなかでのレースとなった2018年シーズン最終戦バレンシアGPで、ポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が3位表彰台を獲得はしたものの、2019年シーズンのポディウム獲得は、ファクトリーチーム、サテライトチームともになし。そこから2020年シーズン、MotoGPクラスとしては5戦を終えてKTMが2勝を挙げているのだ。

 第4戦チェコGPではレッドブル・KTM・ファクトリーレーシングのブラッド・ビンダーが、KTMの母国グランプリとなった第6戦スティリアGPではレッドブルKTMテック3のミゲール・オリベイラがそれぞれ優勝。スティリアGPでは、エスパルガロも3位表彰台を獲得した。

 ここまでのシーズン全体として、KTMが上位に食い込む実力を見せていることは間違いない。第6戦までを終え、KTMはスズキやホンダを抑えて、コンストラクターズランキングで3番手につけているのだ。

 今季、KTMはファクトリーチーム、サテライトチームの4台のマシンに同スペックを供給しており、そのポテンシャルを証明したと言える。そのKTM RC16について、今季からKTMに加入したビンダーは、2019年シーズン最終戦後のバレンシア公式テストで初めてRC16を走らせたとき、「なんてこった」と思うほど難しかったという。しかし、今年2月上旬に行われたセパン公式テストでは、RC16は以前よりもずっと乗りやすくなっていたとコメントしている。

 オリベイラは2年目となるKTMのシーズンで、今季のRC16の印象を「確かに、今シーズン、このバイクは大きく進化した。僕たちはバイクに対し、乗りやすくなったと感じることができたし、スムーズになったと感じてもいる」と述べた。

 今季のマシンインプレッションに加え、2019年シーズンのRC16に対する印象も付け加えたい。2019年シーズン、ヨハン・ザルコ(現エスポンソラーマ・レーシング)にインタビューを実施した際、KTMのマシンについて質問したところ、「走らせるのに多くのエネルギーが必要なのに、マシンからは満足な反応が得られない」という答えが返ってきた。

 この話を聞くことができたのは最終戦バレンシアGP。ご存知のとおり、ザルコは2019年、KTMのマシンに苦戦し、シーズン途中でKTMから離脱した。よってコメントに好意的なものが含まれないことを加味するとしても、2020年型RC16が、乗りやすく進化したととらえるには役に立つ。

 こうしたRC16の進化の背景には、しばしば言及されているところではあるが、テストライダーであるダニ・ペドロサの存在がある。オリベイラは上記のコメントのあと、「(テストライダーの)ダニ(・ペドロサ)はすごくたくさんの仕事をして、このバイクにとてもすばらしいインプットを与えているんだ。乗りやすくするためにね」とも語っていた。

 2018年シーズンをもって現役を引退したのち、テストライダーとしてKTMに加入したペドロサ。その存在について、KTMのモータースポーツディレクターであるピット・ベイラーは、8月11日にオンラインで実施された取材でこのように述べている。

「昨年からはダニとともにバイクに取り組んでいます。ダニ、それからミカ(・カリオ)。ミカはここまでバイクを持っていくプロセス全体としてすばらしい仕事をしました。一方、ダニは少し違った方向性を与えてくれました。これまでになかったことだったので、エンジニアは昨年、多くを学んだと言います」

「私たちのシャシー、サスペンション、そしてエンジンは独自のものですから、他のメーカーからコピーすることはできませんでした。ですから、自分たちで学んでいかなければならず、それは困難なことでした」

■2勝により、コンセッションの適用外に

 さらなる活躍が期待されるKTMではあるが、第6戦スティリアGPのオリベイラがKTMにもたらした今季2度目の優勝により、コンセッションから外れることになった。KTMは、無制限で実施可能だったプライベートテストの権利を失う。これはすぐに適用されることになる。

 レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング、レッドブルKTMテック3に所属する4名のライダーは、公式テスト以外は参加することができなくなる。また、テストライダーであっても、来季の開催サーキットではテストは実施できない。KTMは、来季のテストサーキットを3つ、選択する必要がある。

 来季のエンジンアロケーションについても、9基から7基に減らされる。なお、今季はレース数が通常よりも少ないため、コンセッション適用外マニュファクチャラーは5基、適用マニュファクチャラーは7基のエンジンでシーズンを戦っている。KTMは来季から、ホンダやヤマハ、ドゥカティ、スズキと同様の条件で争うことになる。

 コンセッション適用外となることについて、オリベイラは「KTMは何をしようと失う物はないことを証明したと思う」と、前向きな姿勢だ。第6戦スティリアGPの決勝レース後、プレスカンファレンスのなかでこう語った。

「KTMがMotoGPでこのような短期間で達成したのは素晴らしいことだ。物事を行うための財源があるだけではなく、こうした争いのなかで、プロジェクトに取り組むために適切な人たちのグループを集めることについても、うまくいっていると思う。マイク・レイトナー(KTMレースマネージャー。元ダニ・ペドロサのチーフメカニック)はとても責任があるのだけど、経験が豊富な人だ。プロジェクトを次のレベルにまで引き上げた」

 次戦サンマリノGP以降、マルケスが復帰すれば、勢力図はまた違ったものになるはずだ。そのとき、KTMはどのような戦いを展開していくことになるだろうか。