インディ500優勝後は4時間の取材が待ち受けていた琢磨「脱水症状みたいになったけど今年は余裕があった」

 インディ500の2度目の勝利を挙げたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨には、チェッカーフラッグを受けた後、また恐ろしいほどの仕事の山が待ち受けていた。

 3時間近くレースを戦った後に、ビクトリーサークルのセレモニーから始まり、そのままテレビ、ラジオのインタビューやオンラインの記者会見、撮影などは4時間にも及んだ。500マイルのレース時間よりも長かったわけだ。

 2017年に初優勝した時は、これがわからずにあちこちへと連れ回されることになり、「レース後、僕の体は僕のものじゃなくなった」と笑っていた琢磨だったが、2度目のインディ500優勝は、こんなところにも余裕があったようだ。

「もう一度経験していたからね。レース後に何があるかはわかっていたから、もう驚かない」とレース後のミルクを浴びたレーシングスーツのまま語っていた。

 今年はコロナ禍で取材の対応もリモートで行うことも多く、チームPRにはひっきりなしに連絡が入る。日曜日最後の仕事はメインゲート前でボルグワーナー・トロフィーとの記念撮影だった。すでに夜10時。夕陽も落ちて暗くなっていたが、ウイナー撮影があると聞きつけたレースファンがそれを見ようとずっと待っていた。

 琢磨は熱心なファンの気持ちを汲んで、ひとりひとり撮影後にサインや写真に応じていた。

琢磨を待ち続けサインをもらう熱心なレースファン
琢磨を待ち続けサインをもらう熱心なレースファン

 翌月曜日も朝早くからウイナーの撮影会が恒例だ。

 琢磨の30号車は、レース後の状態をそのまま保っており、ウインドスクリーンの上にこぼれ落ちたミルクの後もそのままだ。

 撮影会は琢磨とマシン、そしてボルグワーナー・トロフィーをコースのブリックの上に停め、そこにボビ-・レイホール、マイク・ラニガンといったチームオーナーやチームクルー、そしてスポンサーなどが代わる代わる並んで撮影をしていく。

 コロナの影響はここにもあり、ソーシャルディスタンスを保っての撮影は、2017年の時とはまったく違うものだったが、琢磨はシャッターを切り続けるフォトグラファーたちに、笑顔を見せ続けた。

 ポーズを取る琢磨の指は、ナンバー1の一本指だったり、2勝目のVサインだったり忙しく切り替わっていた。その中にも2度目の撮影会ということで琢磨には余裕さえ見えた。

 長い撮影会が終わると、再びメディア対応が続く。個別のインタビューやリモートのインタビューが延々と繰り返された。

「それでも前の時よりはぜんぜん楽。コロナのおかげでレース後のメディアツアーがなくなったから助かった」と苦笑い。

 3年前は撮影会の後にドライバーが一堂に会してのバンケット。その後に飛行機に乗ってニューヨークで一日、その後テキサスに移動して一日。ずっとメディアに対応してアメリカを回らなくてはならなかったのだ。

 例年ならインディ500の翌週にデトロイトのレースが控えており、メディアツアーを回ったおかげで体力を回復する時間すらも取れなかった。

 今年もゲートウエイのレースが週末に控えており、メディアツアーがないぶん、時間的にも体力的にも楽になるだろう。

「レース終わってからずっとレーシングスーツのままメディアの対応をしていたので、最後の方で熱中症なんだか脱水症状みたいになっちゃっいましたが、今朝はもう大丈夫です。レースの前に軽く食事をしてから、全然食べ物を口にする時間がなかったですからね」

「3年前はレースが終わった後、何があって、何をしたら良いかぜんぜんわからなかったけど、今年は余裕がありました。何をやれば良いのかわかるし。もちろん忙しいのは変わりないですけどね」

 その後、日本メディアにも対応しレースでの出来事やチームの様子なども丁寧に答えてくれた。

 インディ500はそのイベントの大きさゆえメディアの興味が集まるのも必至。さらに今年は無観客でメディアの取材人数も制限されたこともあり、現地で取材できないメディアはリモートインタビューで琢磨の時間を消費することになった。

 それでも英語であろうと日本語であろうと、ひとつひとつ丁寧に対応するのは、コロナ禍であろうといつもの琢磨の姿だった。

笑顔を見せる佐藤琢磨とボルグワーナー・トロフィー。トロフィーの像にも小さなマスクが……
笑顔を見せる佐藤琢磨とボルグワーナー・トロフィー。トロフィーの像にも小さなマスクが……