「これがカプチーノのトラックスタンス仕様だ!」『低くて走れる』を追い求める若きオーナーの情熱

「これがカプチーノのトラックスタンス仕様だ!」『低くて走れる』を追い求める若きオーナーの情熱

カプチーノでシャコタンを極めるとこうなる

度重なる仕様変更の末に辿り着いたトラックスタンス仕様!

街道レーサーやVIP、スタンス系など数多くのジャンルが存在するカスタムカーシーンにおいて、クロスオーバー的な立ち位置として存在するのが”トラックスタンス”。簡単に言うと「走れるシャコタン」を指すものだが、今回紹介するカプチーノはその究極形とも呼べる仕様だ。

実車を前にまず感じたのは、ノーズやルーフといった各パートが異様に低いということ。しかし、徹底的に計算し尽くされた足回りのメイキングによって、走行には一切支障が出ない。まさにトラックスタンス仕様という言葉がピッタリの1台だが、ここに行き着くまでには様々な仕様変更があった。

今年で27歳を迎えるオーナーがカプチーノを購入したのは、今から3年前。当時はある程度のチューニングが施され、そのままスポーツ走行を楽しめる中古車が100万円程度という相場観だったそうだ。

「元々乗ってたアルトワークスは攻め過ぎて横転。廃車にしちゃいまして(笑) そこからの乗り替えだったので、完全に走り重視の選択でした。何より、家のガレージに入るクルマが軽自動車くらいしか無くて…。2シーターのオープンに憧れがあったのと、どうせならターボだろってことでカプチーノに決めました」。

購入後、すぐに走行性能を引き上げるチューニングを開始。そして、純正フェンダーでは不可能なサイズのタイヤを履くためにフェンダー周辺のリメイクを考えるのだが、「どうせフェンダーをやるんだから…」と、このタイミングでオールペンも敢行することに。ところが、この仕様変更がオーナーの抱いていたマシンコンセプトに大きな影響を与えることとなる。

「作業はスタンス系マシンの製作で有名な“J,beat”さんにお願いしたんですが、仕上がりが綺麗すぎて(笑)。もう走るのが勿体無いって思ってしまったんです」。

そう、仕上がった愛車を目にした瞬間、方向性を走り系から完全な“置き系”へとシフトさせることを決意したのだ。そして、フロント7度、リヤ8度のネガティブキャンバーを付けた極低スタイルを作り上げていった。

ワイド&ローへの想いはエスカレートしていき、勢いそのままにワイドボディ化も実行。この時の仕様はホイールがワークCR-01。前後ともに16インチでフロントが9Jマイナス16、リヤが9Jマイナス28という強烈なサイズを履きこなしていた。

当時の仕様を「カプチーノだったら僕が一番深いリムを履いてた自信があります」と、オーナーは振り返る。

ところが、ある日「ドレコンはキャンバー付けてないと勝てない」という言葉を耳にし、オーナーは「だったら、きちんと走れてイベント映えするマシンを作ったらカッコ良いんじゃないか」と考えた。そうして辿り着いたのが現仕様というわけだ。

オーナーが拘ったのは「フェンダーからホイールリム下部にかけてのラインの見せ方」だ。いくらワイドボディ仕様と言えども、カプチーノがベースでは絶対的な迫力で普通車に勝てない。

そこで、”ボディラインを上から下に絞るように作り、タイヤのトレッドを見せてボリューム感を演出する”という手法(ワンオフ)で独特のシルエットを創り出している。

足回りはトラストの車高調を組み込み、フロントにGTカープロデュースの調整式アッパーアーム、リヤにも調整式のロアアームを投入する。

ホイールはボルクレーシングTE37V。前後とも14インチの8J±0通しで、そこに185/55サイズのポテンザRE-01をセット。フロントに15mm、リヤに25mmのスペーサーを合わせて絶妙なプロポーションを実現している。

ちなみに、このホイールサイズではタイヤハウスに干渉してハンドルが45度程度しか切れなくなる。そのため、オーナーは純正のタイヤハウスを全て撤去。鉄板を用いて、車内側へ30mmほど入り込んだ形状へと作り変えることで対応している。

フェンダーは前後ともにトヨシマクラフト製。ただし、既製品をそのまま装着しているわけではなく、さらなるワイド化とアーチの加工を実施。現在のワイド幅はフロントが片側40mm、リヤが片側60mmだ。

走りも意識しているため、パワーチューニングも抜かりなし。心臓部のF6Aは、ファイターエンジニアリングのコンプリート“クラフトマンハイシールド”を搭載。そこにモンスタースポーツのF100ターボキットを組み込み、トラストのeマネージによって現車セッティングが施されている。

アルミブロックのK6Aとは異なり、鋳鉄ブロックを採用するF6Aエンジン。モンスタースポーツのF100キットは、通常0.9キロのブースト圧で使用するものだが、このカプチーノではそれを1.4キロまでアップ。強度に優れたエンジンであるため、これでも全く問題は出ていないそうだ。

冷却系もアルミ2層ラジエターの投入やインタークーラーの大型化、モンスタースポーツのオイルクーラー投入によって強化。純正の2倍近い出力を発生させる仕様ではあるが、夏場でも不安なく乗れる環境が整えられている。

斜め出しでリヤビューのアクセントとなっているマフラーは、オートジュエルのN1ストリートマフラーだ。

ロールケージはクスコのクロモリ製で、シート後方までバーが伸びる8点式だ。シートはブリッドのローマックスシリーズ“ゾディア”をセット。ステアリングはNRG製。ダッシュボードに並ぶ追加メーター(油温・水温・油圧・ブースト計)は全てデフィで統一されている。

特徴的なボディカラーは、日産キューブの純正色であるビームグレーをベースに青パールを混ぜたスペシャル。この系統のカラーでは、アウディのナルドグレーやランボルギーニのグリジオテレストが人気だが、日産のビームグレーが最もリーズナブルだったそうだ。

「完成度は現状5割くらい。エンジンはもっとパワーが欲しいですし、バネレートを含めたサスセッティングもまだまだ甘いです。魅せ要素でも、エンジンルームをスムージングしてボディ同色にしたいし、室内も作り直したい…。本当に道半ばという感じです」。

明確な理想があるほど、クルマ作りというものは終わらない。オーナーとカプチーノの二人三脚はまだまだ続いていきそうだ。
 

PHOTO:堤 晋一