【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第6回】ミディアムでの走行はほぼ完璧。入賞届かずも、レースペースの良さが光る

 2020年シーズンで5年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニリングディレクター。第4戦イギリスGPは予想通り厳しい週末となったが、今回もレースペースの良さが光った。決勝レースではライバル勢とは異なる戦略を採用したハースだが、そんな現場の事情を小松エンジニアがお届けします。

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2020年F1第4戦イギリスGP
#8 ロマン・グロージャン 予選18番手/決勝16位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選16番手/決勝リタイア

 第4戦イギリスGPは厳しい週末となり、ポイント獲得とはなりませんでしたが、前戦同様にレースペースは良好でした。今回は、決勝レースでのロマンの戦略について解説しようと思います。

 12周目に2回目のセーフティカーが出る前、ロマンは14番手を走っていました。もしみんなと同じようにあのタイミングでピットに入った場合はそのまま14番手でコースに戻ることになり、順位を上げることができません。また残り40周ということで、ハードタイヤが最後まで保つかどうか疑問でした(実際、保たなかったクルマがありましたよね)。ですから、ステイアウトすることに躊躇はありませんでした。

 もちろん、ステイアウトしたからといってポイントを獲れると思っていたわけではありません。ただ、ウチのクルマのスピードでポイントを獲るチャンスを作るには、あれしかないのです。

 レース再開後のロマンの速さには、良い意味で驚きました。マクラーレンの2台には抜かれたものの、ランド・ノリスにはずっとDRS圏内でついていくことができ、想定以上の成果でした。30周を過ぎてもあのペースで走れたので、この段階からポイント獲得のチャンスが現実的に見えてきました。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP ロマン・グロージャン(ハース)

 データ上では、36周目にロマンがピットに入った時の状況から想定されるレース終了時のポジションは9位だったのですが、この時アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)が11位と予想されていました。本当にアルボンの前でレースを終えられるとは思っていませんでしたが、とはいえアルボンの前後を走っていたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)やエステバン・オコン(ルノー)とレース終盤に10位をかけて争える可能性はあったと思います。

 しかし、肝心のピットストップでロマンがミスをして通常よりも5秒ロスしてしまったのです。これでゲームオーバーでした。とても残念ですが、第3戦ハンガリーGPのように、レースチームとしてやれるだけのことはやれたと思います。今回のレースもやっていてとても緊張感があって楽しかったですし、正しい決断を下せたと思っています。

 16位という結果に終わりましたが、最終スティントのペースも良く、前のクルマを追い上げることができました。もしピットでミスをせずに予定どおりキミ・ライコネン(アルファロメオ)のすぐ後ろでコースに戻っていたら、やはり10位あたりでレースを終えられていた可能性もあったのでもったいなかったです。

■タイヤのマネージメントに自信。ミディアムでの走行はほぼ完璧

 決勝レースではタイヤのマネージメントに苦労するドライバーが多かったですね。もちろんウチも大変でしたが、想定内でした。これが12周目のセーフティーカーでピットインしなかった理由のひとつです。ミディアムタイヤでは、ほぼ完璧に走れたと思います。

 ミディアムを履いたロマンのペースが良かった具体的な理由は、前にノリスしかいない状態でDRS圏内を走りながら、自分のペースでタイヤをマネージメントすることができたことだと思います。またクルマのセットアップもレース用に合わせていたので、タイヤのマネージメントにはある程度自信がありました。うまくいってよかったです。

 ただピットインは1周早い、35周目にするべきでした。今年のクルマは速さに欠けますが、タイヤマネージメントやセットアップなどの能力はチームとして確実に良くなってきていると思います。

ランド・ノリス(マクラーレン)&ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP ランド・ノリス(マクラーレン)&ロマン・グロージャン(ハース)

 シルバーストーンはブダペスト以上に厳しい週末になるだろうと予想していましたが、先に書いたように、その予想通りでした。これは、予選結果を見て頂ければ一目瞭然です。ロマンはミスをしたので考慮しないとしても、ケビンの予選位置(16番手)は、残念ながら今のVF-20のシルバーストンにおける一発の速さのほぼ限界を表しています。

 ただ、どうあがいても予選でこれよりも大幅に順位を上げることは無理だと金曜日の段階でわかっていたので、完全に焦点を予選からレースへと切り替えることができたのはある意味良かったと思います。とはいっても、このレースは確実に1ストップレースになるという予想だったので、“何か”がなければポジションを上げることが難しいというのも明白でした。

その“何か”が12周目のセーフティカー導入という形で起こってくれたので、このチャンスを最大限に利用しました。結果には繋がりませんでしたが、レースチームとしてちゃんと動けたと思います。

 しかし、VF-20には通常のレースでポイントを獲るだけの速さはありません。はっきり言って、予選では中団争いにも入れていません。これが厳しい現実ですが、とにかく今は先を見て、今あるVF20の性能を最大限に引き出しながら、チャンスをモノにするだけです。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP 木曜日にコースを歩く小松エンジニア(左から2番目)やロマン・グロージャン(左から4番目)ら
ケビン・マグヌッセン&ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP ケビン・マグヌッセン&ロマン・グロージャン(ハース)
ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第4戦イギリスGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)とケビン・マグヌッセン(ハース)が接触
2020年F1第4戦イギリスGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)とケビン・マグヌッセン(ハース)が接触