欧州2年目の挑戦で大きく“成長”した角田裕毅。ランド・ノリスに勝ったシルバーストンで真価を発揮できるか

 角田裕毅と最後に会ったのは、昨年9月のモンツァだった。それから10ヵ月が経って、F2ドライバーになった角田はひと回りがっしりした体つきになったように見えた。聞けば3月のバーレーンでの開幕戦が中止になってからはイギリスで暮らし、そのあいだ筋トレに励んでいたという。

 ただし角田とはレッドブルリンクやハンガロリンクで直接会ったわけではない。コロナ禍で現地取材が原則禁止なのはF1もF2も同じで、たくましくなったと思ったのは、日本からのリモート取材の際に送ってくれた写真を見たからだ。

 とはいえ音声だけのやりとりでも角田の変化は感じられた。まず少し驚いたのは、去年のF3時代に比べて自分の考えや意見、感想をどんどん言うようになったことだ。それも、かなり饒舌に。

 昨年、サーキットで話を聞いた際には、ときに口ごもることもあったし、全般的にシャイな印象だった。

 面と向かってない分、言いたいことが言える? それもたしかにあるかもしれない。しかし、たとえば自粛中にふたりのマクラーレンF1ドライバーとF3マシンで一緒に走った経験を聞いた際など、カルロス・サインツJr.やランド・ノリスのドライビングの違いや、彼らのどこがすごいのかを、じつに生き生きと語ってくれた。

 そしてF2マシンの独特な挙動、18インチホイールの採用による変化についても、説明がとにかく具体的だった。何より圧倒されたのは、今季の抱負を尋ねたときだ。「初年度が勝負だと思ってます」と、きっぱり答えたのだ。

「今年しかないと思ってます。F1に行ったノリスや(ジョージ)ラッセルは、1年目から頭角を現した。そういう実績が、F1で戦うためにも重要だと思います。1年目から戦う気、満々です」

「え、こんなにはっきりモノを言う青年だったっけ?」というのが、正直な感想だ。昨年、お世辞にも戦闘力があるとは言えないチームでシーズン前半大いに苦しみ、それでも後半には走りに磨きをかけて、チームと一緒に成長しながら結果を出して行った。

 その自信が、言動に表れていることはたしかだろう。そして今季所属するカーリンが、既存のトップチームに負けない実力を持っているという手応えも、開幕前からしっかり感じていたに違いない。

 しかしF1直下のカテゴリーは、ルーキーをそう簡単に勝たせてはくれない。開幕戦はフリー走行でいきなりトップタイムを出したが、予選は大失敗。レースもチームメイトに追突と、散々な結果に終わった。

 第2戦で初戦のミスを繰り返さず、ポールポジションを獲得したのはさすがだったが、無線トラブルで勝てたはずのレースを失った。そして第3戦は予選での不運、レースでのタイヤ戦略の失敗を跳ね返せず、ノーポイントに終わった。

 序盤3戦を終えて選手権暫定12位という成績は、本人が一番不本意だろう。ただしこの結果は各ドライバーの実力を、必ずしも忠実に反映したものとは言い難い。

 選手権首位に立つ昨年のFIA F3覇者ロバート・シュワルツマン(プレマ・レーシング)は、たしかに頭ひとつ抜けた走りを見せ、何より勢いがある。所属するプレマは、シャルル・ルクレールがタイトルを獲ったチャンピオンチームでもある。

 しかしもし第2戦で角田が無線トラブルに見舞われず、シュワルツマンを抑えて順当に優勝していたら、その後の展開は少なからず変わっていたはずである。

 シュワルツマン以外の選手権上位にいるドライバーを見ても、決して角田とカーリンがかなわない相手ではない。

 その意味で最も避けなければいけないのは、焦りから来る自滅であろう。F2は予選で失敗するとレース1で挽回するのは至難の業で、レース2もその結果を引きずる。

 それを何度か繰り返し、本来のドライビングができないまま消えて行った優秀なドライバーを、残念ながら何人も見て来た。

 もちろんいまの角田にまだそんな焦りはないはずである。しかし、目標とする選手権4位を成し遂げるには、次戦でそろそろ勝っておきたいところだ。

 舞台となるシルバーストンは先述のF3テストでノリスに勝ち、サインツJr.にも1000分の1秒差まで迫ったコース。角田が真価を発揮してくれることを期待しよう。

2020年FIA-F2選手権に参戦している角田裕毅(カーリン)
2020年FIA-F2選手権に参戦している角田裕毅(カーリン)