タイプ991最終モデルは伝統の「スピードスター」! もっともピュアな911をイタリアで試乗 【Playback GENROQ 2019】

タイプ991最終モデルは伝統の「スピードスター」! もっともピュアな911をイタリアで試乗 【Playback GENROQ 2019】

Porsche 911 Speedster

ポルシェ911スピードスター

タイプ991、最後の贈り物

ついにスピードスターがタイプ991に登場した。低く構えたフォルムも魅力的だが、そのリヤに搭載されるのは、あのGT3譲りの510ps/470Nmを発揮する4.0リッターNA。そして組み合わされるトランスミッションは6速MTというから、胸が高鳴る。タイプ991の最後を飾るスピードスターを、モータージャーナリストの藤原よしおはどう感じたか?

ポルシェ911スピードスターの走行シーン

「単なるスタイルコンシャスではない。これは本気のスーパーマシンだ」

正直に告白すると、いくらGT3のエンジンを積むとはいえ、991型の最終モデルとして登場した新型911スピードスターも、歴代モデル同様、スタイルコンシャスの“プロムナードカー”みたいなものだろうと思っていた。

しかし実態はまったく違っていた。

“ロー・プロファイル・フライングライン”と呼ばれるリヤフードと、50mm低いウインドスクリーンをもつ特徴的なデザインのボディは、911カレラ4 カブリオレをベースとしたもの。しかしながらフロントスポイラーはGT3(フロントリップは専用デザイン)から、片側で2.8kgしかないカーボンコンポジット製のフロントフェンダーは911Rのものを流用しているほか、フロントフード、リヤフードもフルカーボンコンポジット製となっており、その単体重量はそれぞれ6kg、10kgと、随所に徹底した軽量設計が施されている。

シャシーはGT3由来のもので、リヤアクスルステア、ダイナミックエンジンマウントを標準装備するほか、PTV、PSM、PASMといった電子デバイスも標準装備。またミシュラン・パイロットスポーツカップ2を履く20インチのセンターロック式鍛造アロイホイールには、お馴染みのPCCBが奢られる。

ポルシェ911スピードスターの走行シーン

「“911Rスパイダー”、もしくは“911GT3スパイダー”と呼びたくなる」

一方エンジンも、すでにアナウンスされているとおり、GT3の4.0リッターフラット6 NAユニットを流用しているのだが、まったく同じものではない。ディナーで同席したパワートレイン担当のマークス・ヘンデスによると、燃料噴射を最適化した250bar(従来は200bar)の高圧フューエルインジェクター、個別スロットルバルブ付きインテークシステムの採用で、従来比10psアップの510ps/8400rpmを実現できたという。また2基のガソリンパティキュレートフィルターを備えることで欧州排出ガス基準EU6DGをクリアしているほか、10kgの軽量化を果たしたステンレス製の新型エキゾーストシステムを装着するなど、スピードスター専用に細かな改良が施されている。ギヤボックスはGT3と同じ6速MTのみとなるが、これについてもマークスは、PDKよりも25kgほど軽いこと、また7速MTに比べても1速分軽量なうえにシフトフィールも良いなどの理由で採用したと説明してくれた。

まさに“911Rスパイダー”、もしくは“911GT3スパイダー”と呼びたくなる内容をもつ新型911スピードスターの国際試乗会が行われたのは、地中海に浮かぶイタリア・サルデーニャ島。島中がワインディングだらけという絶好のステージではあるのだが、道幅が狭いうえに路面状態も安定せず、ミューも低い。「今日はウェットだしコーナーも多いから、くれぐれも気をつけて」と念押しされスタートして、すぐに気づいたのは、とても510psをリヤに抱えているとは思えない扱いやすさと乗り心地の良さだった。

ポルシェ911スピードスターのルーフ

「オープンでも荒れた路面でシャシーが音を上げることはなかった」

エンジンは2速アイドリングからでもしっかり加速し、ヒルアシストのついたクラッチペダルは軽く、ミートもイージー。それでいて、ひとたび右足に力を込めれば淀みなくレッドゾーンの9000rpmまで吹け上がるレスポンスの良さをみせる。また6速MTのフィール、マッチングは文句なし。そのうえシフトダウン時のブリッピング機能が完璧な出来で、ヒール&トウを駆使する必要はまったくない。この機能は任意でオン、オフを選べるのだが、最後までオンのままにしていたほどだ。

またオープンモデルで最も気になるシャシー剛性に関しては、カブリオレから特に強化していないという話だったが、300kmあまりワインディングを走った限りでは、510psのパワーに対してもまったく不足はなかった。確かに様々な軽量化を施したにも関わらず、車両重量が1465kgとPDK仕様のGT3より35kgほど重いことからも、元々のカブリオレのシャシーが相当余裕を持ってしっかりと造られているのは想像に難くない。あわせてスポーティなドライビングの時はハードに変化するダイナミックエンジンマウントも効いているようで、荒れた路面を飛ばしていてもシャシーが音を上げるようなことはなかった。

ポルシェ911スピードスターのシート

さらにリヤアクスルステアも効果的で、タイトなコーナーでも安定した姿勢でくるりと向きを変えてくれる。その際のステアリングフィールも適度な手応えのある自然なものだ。

カットスリックと言ってもいいミシュラン・パイロットスポーツカップ2でウェット路面を走るのは、少々気を遣う(万が一テールが流れても、素早く収束してみせる電制デバイスの出来は秀逸)が、ひとたび路面がドライになればスピードスターは無敵だ。

ポルシェ911スピードスターのスタイリング

「幸運にも手に入れたオーナーを、心底羨ましく思う」

半手動ながら簡単に開閉できるソフトトップを開くと、屋根のない開放感(風の巻き込みも最小限だ)と耳にダイレクトに入ってくるNAサウンドもあって、感覚的にはGT3よりも軽やかに感じるほど。少し腕に覚えのあるドライバーならば、高いグリップを誇るパイロットスポーツカップ2と、4.0リッターユニットの持てる能力を余裕を持って引き出して楽しむことができるはずだ。

そういう意味で新しい911スピードスターは、550スパイダー譲りの4カム・ユニットを搭載したホモロゲモデルとして、サーキットで数々の栄冠を手にした356カレラGS・G Tスピードスターの正統な後継車といえるかもしれない。幸運にも手に入れることのできた1948人のオーナー(既に完売だという)を、心底羨ましく思う。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/Porsche AG

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911スピードスター

ボディサイズ:全長4562 全幅1852 全高1250mm
ホイールベース:2457mm
車両重量:1465kg
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3996cc
最高出力:375kW(510ps)/8400rpm
最大トルク:470Nm(67.0kgm)/6250rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(9J) 後305/30R20(12J)
最高速度:310km/h
0-100km/h加速:4.0秒

※GENROQ 2019年 7月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。