2020年スーパーGT開幕直前。スープラが抱える唯一の懸念は「傾向が偏る富士のコース特性」

 いよいよ今週末、スーパーGTが開幕する。今シーズンはGT500マシンが3車種ともに新車になり、これまでと異なる様相が見られるはずだ。

 オフシーズンのテストでは、各チームのドライバーやエンジニアたちが「あそこが良さそう」「ここはまだ隠しているのか」など互いに腹の探り合いをしてきた。

 6月末に行われた富士公式テストを経てある程度、各車のパフォーマンスは見えてきたように思えるが、本当の実力はレースになってみないと分からない。
 
 そのなかでもGRスープラは一定以上の評価があるようだ。オートスポーツ本誌No.1533では富士公式テストの前にドライバーたちにアンケートを行ったが、「乗ってみたい車種は?」という設問では堂々の一位を獲得した。

スーパーGT富士公式テストで総合2位につけたau TOM'S GR Supra
スーパーGT富士公式テストで総合2位につけたau TOM’S GR Supra

 これまでのテストを見ていてもスープラは大きなトラブルを抱えている様子はなく、粛々とメニューをこなしてきた印象が強い。その雰囲気からはタイトル獲得へどこか余裕も感じられる。

 ただし、スープラはそのバランスの良さゆえの悩みも抱えているとTCDの湯浅和基氏は言う。

「我々はLC500のときもそうですが、『バランスの良さ』をコンセプトに作っています。ですから鈴鹿のようにいろいろな要素が詰まっている複合的なコースは得意です」

「逆に富士のように極端に傾向が偏っているコースは苦手。だから今年の新カレンダーは悩ましいです」

 今シーズンのスケジュールは当初の予定から変更し、全8戦中、4戦が富士スピードウェイで行われることになった。

 そもそも1戦の予定だったためにトヨタ陣営としてはプライオリティを下げていたが、新カレンダーのスケジュールではチャンピオンシップに富士の結果が大きく関わってくることになってしまった。

 スープラが富士を苦手としているのであれば、ホンダ勢、ニッサン勢にとっては狙い目だ。富士に特化した仕様を用意して、確実に富士を獲る体制を敷いてくる可能性も十分にある。

 トヨタ陣営としては、もちろん富士でも勝つことが必須だろう。一方で、仮に勝てずともいかに多くの自陣営マシンがライバルたちを抑えて上位に食い込むかがタイトルを争う上でポイントになる。

■トヨタ陣営の牙城を崩すのはホンダNSX-GTか、はたまたニッサンGT-Rがトラブルを克服してくるのか

 現状でスープラの対抗馬としてはNSX-GTが有力とみる。NSX-GTは今年、ミッドシップ(MR)からフロントエンジン(FR)へ変更した。

 エンジンの搭載位置が変わるということは、車体全体の前後バランスは大きく変化する。そのため、当然、ドライビングにも大きな影響を及ぼすかと思われた。

 しかし、ホンダ陣営のドライバーに話を聞くと「本当に変わったのかと疑問に思うほど、大きな変化を感じない」という。

スーパーGT富士公式テスト 新型エアロを持ち込み、総合結果でトップタイムを出したRAYBRIG NSX-GT
スーパーGT富士公式テスト 新型エアロを持ち込み、総合結果でトップタイムを出したRAYBRIG NSX-GT

 さらに6月末に富士で行われた公式テストではフリックボックスに新型エアロを持ち込んでいた。その効果はリザルトからも分かる通り、かなり有効であると言えるだろう。

 また、富士でのコーナリング時のフロントの入りは他車と比べてもスムーズであり、特にテクニカルセクションでタイムが伸びていることからもかなり期待値は高そう。

 あえて懸念点をあげるとしたら大きな変更が加わったにもかかわらず、ここまでトラブルが少ないことか。

 開幕戦からトラブルなく上位につけることができたとしたら、今シーズンのチャンピオンシップをNSX-GTがかき乱してくれるはずだ。

スーパーGT富士公式テスト ニッサン勢ではMOTUL AUTECH GT-R以外の3台にトラブルが発生。
スーパーGT富士公式テスト ニッサン勢ではMOTUL AUTECH GT-R以外の3台にトラブルが発生。

 一方、ニッサンGT-R勢はこれまで富士を得意としていたが、富士公式テストではトラブルが多発している上に、ライバルともやや差がついている感が否めない。

「乗ってみたい車種は?」のアンケートでも3位に甘んじた。この結果についてニスモの鈴木豊監督は結果を受け止めつつも、「事実かと思う」とコメントしている。

「近年の戦績を見ても、ドライバーとしても感じると思います。一番感じているのは身内のドライバーかもしれません」

 富士公式テストでGT-R勢に多発していたトラブルはプロペラシャフトの破損と考えられている。今年のGT-Rはプレチャンバーを導入してきたと噂されており、おそらくそれに起因するものだろう。

 今シーズンは5ヵ月間で8戦と短期決戦になるため、早急な対処が不可欠だ。まずは今週末の富士でトラブルを出さずに、どこまでライバルとの差を埋められるかに注目したい。

 開幕戦は日曜日に予選と決勝が行われる1デイ開催が決定。しかも現時点では雨の予報も出ており、開幕戦からレース展開は荒れそうだ。

 2019年の最終戦以降、約8ヵ月の期間を経て新たなシーズンが始まるが、開幕戦を制するのはどのメーカー、どのチームになるのか。7月19日(日)、その火蓋は切って落とされる。

 7月3日に発売したオートスポーツNo.1533ではGT500に参戦している全ドライバー&エンジニアに匿名アンケートを実施。

 全ドライバーは「追いついたときに力を発揮するドライバーは?」や「引き出しの数が多そうなドライバーは?」、「今季のタイトル争いで最大のライバルとなりそうなチームは?」など今シーズンを占う上で鍵になりそうな質問にも回答している。

 アンケートの結果はこれまでと違った視点でレースを見るきっかけになるかもしれない。