MotoGPの軌跡(9):ロッシがタイトルを逃す原因となった2015年のセパンクラッシュ

 2001年までの世界GP(WGP/World Grand Prix)の略称で行われていたロードレース世界選手権。2002年から最高峰のバイクが4ストローク990ccとなり、シリーズの名称もMotoGPへと変更された。しかし、MotoGP初年度は2ストローク500ccマシンと4ストローク990ccマシンが混走する状況でのスタートとなった。2002年から2019年までの『MotoGPの軌跡』を連載形式で振り返っていく。

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 2015年シーズンはホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が逆転でタイトルを獲得。シーズン最多の7勝、12回の表彰台、通算3回目のタイトルを獲得したが、シーズンの大半をリードしたのはチームメイトのバレンティーノ・ロッシだった。

 シーズン序盤にロレンソ、ホンダのマルク・マルケスとダニ・ペドロサの3人が出遅れた一方、ロッシはそのチャンスを生かして、18戦中17戦でポイントリーダーの座をキープ。しかし、最後の最後で逆転されてタイトルを失った。

MotoGP 2015年第17戦マレーシアGP
MotoGP 2015年第17戦マレーシアGP

 その原因が終盤のマレーシアで起こったセパンクラッシュと呼ばれるマルケスとの接触だ。きっかけは1戦前のレースのオーストラリアでのマルケスのレース展開に対して、マレーシア入りした直後にロッシが、マルケスがロレンソをサポートしたと非難したこと。

 マルケスはこれを否定したが、決勝では序盤からロッシとマルケスがサイドバイサイドの接戦を展開。その結果、両者は接触し、マルケスは転倒。マルケスはロッシに蹴られたと主張、ロッシはこれを否定。そして、レースディレクションでの審議の結果、ロッシにペナルティが下され、ロレンソとの最終戦決着のレースを最後尾からスタートすることになり、追い上げたものの、タイトルにあと一歩届かなかった。

 連覇を逃し、ランキング3位に終わったマルケスは、シーズン5勝、通算表彰台9回、ポールポジション8回、決勝ファステストラップ7回。6戦のノーポイントによりタイトル争いから脱落したが、速さではナンバーワンであることは記録の上でも証明している。

 ペドロサは開幕戦カタールGPで左腕の腕上がりを訴え、序盤の3戦を欠場して手術を行なった。シーズン終盤の日本GPでは初優勝を達成、マレーシアGPでは、スタートから独走してシーズン2勝を記録し、ランキング4位を獲得した。

 そして、2015年にその4強にあと一歩と迫ったのがアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)だ。第6戦イタリアGPではMotoGPクラス初ポール獲得、勝利こそできなかったものの、3回の表彰台を獲得。ドゥカティはレギュレーション上の優遇措置を生かしてマシン開発を進めてきたが、まだ勝てるレベルまでには至っていなかった。一方、2015年から復帰したスズキは、第7戦カタルニアGPで アレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレスが予選ワンツーを獲得するなど、復帰初年度で手ごたえを残した。

 2015年でブリヂストンがオフィシャルタイヤサプライヤーの使命を終了。2016年は新たな時代の幕開けとなる。

■2016年からミシュランがタイヤ供給を開始

 2016年シーズンのMotoGPクラスは、タイヤがミシュランのワンメイクとなり、ECUのソフトウエアが共通となった。ミシュランは2008年以来となるMotoGPクラスへのタイヤ供給、タイヤ内径も17インチに変更(2015年までは16.5インチ)となり、2015年から各ファクトリーのテストライダーを主体にタイヤ開発を続けてきた。ECUのソフトウエアが共通となったことで、2015年までのオープン、ファクトリーオプションの区分けはなくなった。

2016年MotoGPチャンピオンとなったマルク・マルケス(ホンダ)
2016年MotoGPチャンピオンとなったマルク・マルケス(ホンダ)

 前年、タイトル連覇を逃したマルク・マルケス(ホンダ)だが、2016年は通算5勝と年間勝利数こそ前年と同じだったが、トータル12回表彰台に立ち、勝てるレースでは勝ち、そうでないレースでは確実にポイントを獲得するクレバーな戦い方で、MotoGPクラス通算3回目となるタイトルを獲得した。

 ランキング2位にはバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が続いた。ロッシはシーズン2勝を記録したが、4回のノーポイントレースが響いた。チームメイトのホルヘ・ロレンソがランキング3位に続いた。ロレンソは開幕戦カタールで勝ち、好スタートを切ってマルケスとチャンピオン争いを展開したが、中盤のチェコGPではロッシにランキング2位を逆転されて後退してしまった。ヤマハ勢は共通ECUソフトの合わせ込みに苦戦を強いられたが、ロッシのランキング2位、ロレンソのランキング3位で、チームタイトルを獲得し、ホンダの3冠を阻止した。

 2016年は各メーカーのマシンへのミシュランタイヤへのマッチング、共通ECUソフトへの適応などによるマシンパフォーマンスの接近したシーズンとなった上に、天候不良によって荒れた展開となった決勝レースも多く、マルケスが5勝、ロレンソが4勝、ロッシが2勝、マーベリック・ビニャーレス(スズキ)、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)、ダニ・ペドロサ(ホンダ)、カル・クラッチロー(ホンダ)、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)、ジャック・ミラー(ホンダ)が1勝ずつと、18戦で9人のウイナーが誕生する混戦となった。