新型ホンダ アコードに込められた「大人への憧れ」を、アーバンクルーズを通して山田弘樹が味わう

新型ホンダ アコードに込められた「大人への憧れ」を、アーバンクルーズを通して山田弘樹が味わう

Honda Accord EX

ホンダ アコード EX

電気モーターで走行するスポーティセダン

ホンダのDセグメントセダンであるアコードに試乗した。もっともすでに初試乗は今年の春に済ませていたが、改めて都内でのゆっくりとした試乗ができたことも含め、その全貌とキャラクターをGENROQ Web読者のみなさんにお伝えしようと思う。

ホンダ アコード試乗、サイドビュー

「セダン」とは共に成熟していくべきクルマだ

1976年の登場から数えると既に10代目。その長い歴史を振り返れば、“見渡すと常にどこかにいる存在”というのが筆者にとってのアコードだった。それがはたと見かけなくなったのは、いつ頃からだろうか? 感覚的に7代目「ユーロR」あたりまではツウのスポーティセダンとして生きながらえ、8代目からその影が薄くなっていった記憶がある。

実際日本は経済的にもデフレが長らく続き、セダンよりも多様性のあるミニバンと、小さくてもスペース効率に優れ経済性の高い軽自動車が市場を席巻した。そしてここ10年でSUVがポストセダンの旗手として台頭を表せることによって拍車がかかり、アコードのような良質セダンが日本市場から追いやられたのは事実だ。そしてホンダ自身も、Nシリーズやヴェゼル、CR-Vといった人気車種でセダンを追いやった張本人だ。

だからといって筆者は、ありがちな「セダンの復権」を謳うつもりはない。そもそもセダンとは大人のたしなみであり、余裕のない社会でヒットする方がおかしいのだ(ちなみに北米や中国では、アコードやそのライバルであるトヨタ カムリは高い人気である)。敢えて復権という言葉を使うならば、「憧れ」や「威厳」を取り戻した方がいい。そう、セダンとは本来大人になることへの憧れとして選び、共に成熟していくべきクルマなのだと私は思う。

ホンダ アコード試乗、リヤスタイル

メーカー自ら「大人への憧れ」を込めたアコード

そしてホンダ自身も、この新型アコードには「大人への憧れ」を込めたという。乗り込むときに洒落ているなと思ったのは、そのもてなし感だ。暗闇ではキーレスエントリーの解錠に応じてフォグランプが点灯し(パワーオンで消灯)、ドアもLEDライトがノブを照らしてくれる。「おもてなしフォグライト」というネーミングはどうも・・・だが、これが実にストレスフリーでしょっぱなから心地良い。

行き届いたホスピタリティは乗り味にも受け継がれる。日本仕様はハイブリッド「EX」のワングレード。スターターボタンを押すとエンジンは掛からず動力系がアクティブとなり、アクセルを踏み出せばその場から音もなく走り出した。

もちろんここから少し走れば、2.0リッター直列4気筒エンジンは目を覚ますが、その始動はとても静かだ。バッテリーだけで走るEVモードはP-HEVのそれに遠く及ばない。現実的な走行ではすぐにエンジンが始動し電力を蓄えにかかるが、それでもアコードの遮音性は非常に高く、ここにケチを付ける気持ちにはなれなかった。これならたとえエンジンが掛かっても夜の帰宅や早朝の出発などで困ることはない。

ホンダ アコード試乗、エンジン

ホンダ最新のハイブリッドシステム「e:HEV」

さてこのハイブリッドシステムを少し説明すると、それは今まで「i-MMD」(インテリジェント・マルチ・モード・ドライブ)と呼ばれていた機構そのものである。そして現在このi-MMDはホンダの主力ハイブリッドシステムとして、その総称を「e:HEV」(イー・エイチ・イー・ブイ)に改められた。

というのもホンダはこれまでに先代フィットに搭載した「i-DCD」(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)、NSXやレジェンドで「SH-AWD」(スーパー・ハンドリング オール・ホイール・ドライブ)と合計3つものハイブリッドシステムを用意していた。しかし主力システムとしてはi-DCDではなく、i-MMDを選んだのである。

その理由はモーター走行の良さを全面に押し出すためだろう。実際このiーMMDは走行のほとんどをモーター駆動でまかなう。2.0リッターの自然吸気エンジン(145ps/175Nm)はVーTECの名前がもったいないほど黒子に徹し、発電機として機能。このエネルギーが発電用モーターを経由してバッテリーに蓄電され、走行用モーターでアウトプットする、というのが通常のドライブモードとなる。

ホンダ アコード試乗、メーター

既存のガソリン車から違和感なく移行できる

こう聞くと思い出されるのはニッサンの「eーPOWER」だが、その表現は真逆。現状エンジンを発電機と完全に割り切ったeーPOWERは電力供給に応える形でエンジンを回すが、e:HEVはアクセル開度との違和感をなくすように、回転を同調させるのである。

どちらが良いのかと言われれば、それは好みの問題だ。e-POWERのエンジン制御は一見粗野だが、それを搭載するノートやセレナもほどよく庶民派だから、慣れてしまえばその平坦なサウンドも許せてくる。がさつであるほどにモーターによるリニアなレスポンスが際立つのも面白い。

対してホンダはアコードに(ひいては全ての搭載車に)上質感を求めているから、その音と操作のズレ感をよしとしない。ただこれだとせっかくモーターで走らせているのに、エンジンで走らせている錯覚が生じる、という贅沢な問題がある。

だから煩くても、eーPOWERの方がわかりやすいとは言えると思う。「ワンペダルドライブ」もそうだが、こうした飛び道具的発想においてニッサンはやり手だ。対してホンダは奥ゆかしく、既存のガソリン車から違和感なく移行できることを念頭に置いた。

ホンダ アコード試乗、インテリア

一種独特なドライブフィールを体感

果たしてその回答は、筆者も色々と思いを巡らしたが正しいと思う。なぜなら完全にエンジンの作動音を遮音することはできないし、懸命に遮音しても小さく音が漏れ、アクセルに連動しない作動で違和感を出すくらいなら、これをシンクロさせた方がメリットは多いからだ。

実際アコードはアクセルを踏み込むと、パーシャルスロットルにも見事にエンジン回転を追従させ、フラットアウトではVーTECサウンドを響かせながら吹け上がっていく。つま先から感じる加速感はモーターそのものなのに、エンジンサウンドがきれいに呼応する運転感覚は一種独特だが、それこそがハイブリッドなのだと思う。また人間というのは不思議なもので、少し乗っていれば体がこれに慣れてしまう。

グランツーリスモの実写版とでも言えばよいだろうか? モーター駆動にエンジンサウンドを被せるこの逆転現象はなかなかに面白く、その制御の素晴らしさはe:HEVがピュアEVへの架け橋となる優れた制御システムだと感じさせられた。ちなみにそのエンジンは、ハイブリッドでは燃費効率が悪いとされる高速巡航時の低負荷領域において初めて直結となる。

ホンダ アコード試乗、走行シーン

リアルタイムセンシングを行うダンパーシステムを搭載

これを支えるシャシーも、ホンダらしい骨格の確かさを持っている。基本的な乗り味はコンフォート。モーターのシームレス感をふんわりとしたサスペンションで支えるタイプである。電動パワーステアリングのねっとり感は上質で、ゆっくりとだが確実にボディの向きをコントロールしてくれる。

スポーツモードボタンを押せばアダプティブ・ダンパーは引き締まり、ハイブリッドシステムとEPSが協調制御で鋭さを増すが、基本的には紳士的な乗り味。この乗り心地の良さに慣れきってしまうと、自分がダメになってしまう気さえする。回生を含むブレーキのタッチから曖昧さが消せたら、このソフトライドにもメリハリが出せるのではないだろうか。

ステアリングに付くパドルは回生ブレーキを4段階で調整可能。一番効かせてもe-POWERほどガッツリ減速Gを立ち上げないあたりにも、アコードのキャラクターが良く表れている。シフトノブはなくなり、「P」「R」「N」「D」が全てボタンとなった。リバースボタンの向きがドライブと逆になっているのは誤操作を防ぐひと工夫だが、にわかオーナーではブラインドタッチの域にまでは到達しなかった。とはいえセンターコンソールがスッキリしているのは見た目もいい。

ホンダ アコード試乗、リヤスタイル

まだまだセダンには可能性があると感じさせた1台

総じて乗り味に攻撃性はまるでないが、北米好みかと思えばこのシャシーは日本仕様としてリセッティングされているのだという。ワインディングを走ったときの印象からしてもシャシーには高い潜在能力があり、もう少しだけコシのあるダンパー&スプリングを与えた仕様があってもいい。そう、ユーロRのように!

デザインにしても然り。SUVにファミリーカーの市場を奪われたとはいえトランク容量は573リットルもあり、後部座席もラクにアシを伸ばせるほどの居住性を確保した4ドアクーペなのだから、もっと自信をもってそのシルエットにエッジを立ててもいい。シビックほど子供っぽくなっては困るが、今は木目調のインテリアも含め、まだまだ古風に過ぎる。敢えてクチ悪く言えばオヤジくさい。

マーク・ニューソンがデザインするような(アイクポッドやアップルウォッチのデザイナーだ)、毎日使えるシンプルさを持ちながらもキレのあるデザインがi-MMDのシームレスライドには似合うと感じた。その走りを信じて、もっと大胆に攻めて欲しい。アコードに乗って、まだまだセダンには可能性があると強く感じることができたからこその提案だ。

REPORT/山田弘樹(Koki YAMADA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

ホンダ アコード EX

ボディサイズ:全長4900 全幅1860 全高1450mm

ホイールベース:2830mm

車両重量:1560kg

エンジン:直列4気筒DOHC

総排気量:1993cc

ボア×ストローク:81.0×96.7mm

最高出力:107kW(145ps)/6200rpm

最大トルク:175Nm/3500rpm

電気モーター:交流同期電動機

最高出力:135kW(184ps)/5000-6000rpm

最大トルク:315Nm/0-2000rpm

トランスミッション:電気式無段変速機

サスペンション:前マクファーソン 後マルチリンク

駆動方式:FWD

タイヤサイズ:前後235/45R18

車両本体価格(税込):465万円

【問い合わせ】

Honda お客様相談センター

TEL  0120-112010