「人生の半分以上をシルビアに捧げる“アンダー鈴木”という男」WTACでの大クラッシュを経て、世界最速のサラリーマンは今何を思う!?

「人生の半分以上をシルビアに捧げる“アンダー鈴木”という男」WTACでの大クラッシュを経て、世界最速のサラリーマンは今何を思う!?

世界最速サラリーマン“アンダー鈴木”という男

筑波最速アタッカーとして、誰もがその名を知る存在となっているアンダー鈴木。しかし、その人気の根源はただ速いからではなく、そのプロセスに心を引かれる人が多かったからに他ならない。筑波1分が大きな壁として立ちはだかっていた時代から、筑波最速まで登り詰め、今ではアスリートのごとく世界の頂点を目指す存在に。

その性格は気さくで人懐っこく、人を引きつけるものを持っている反面、クルマ作りに関しては貪欲でとことんストイック。サラリーマンとして働き続けながら毎晩愛車を作り続ける生活は、今も昔と変わっていない。

今年のWTAC(ワールドタイムアタック選手権)では、世界ナンバー1の称号を目指すも、練習走行でまさかの大クラッシュを演じて車両は大破、本人も病院に運ばれるという最悪の結末を迎えてしまった。あれから約2ヶ月、アンダー鈴木は今何を思っているのだろうか。胸の内を語ってもらった。

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「順位にこだわりはないんだけど、世界一にはなりたい理由がある」

WTACのクラッシュの件ではご心配かけましたが、この通り元気です。軽い打撲やムチウチはありましたが、生活に支障が出るような怪我はありませんでした。ドクターヘリで運ばれたなんて噂が立って、皆さんに心配をおかけしましたが、ボクはヘリには乗っていませんので!

たしかにクラッシュ直後、ドアが開かなくてクルマから出るのが遅くなりましたが(そこでチームに心配させた…)、それよりも事故の状況を確認したサーキットとWTACの主催者が、真っ先にドクターヘリを要請したそうです。打ち所が悪かった場合、一刻の遅れが万事になりかねない。最悪の事態を想定して動いたんでしょうね。

安全、人命が第一という姿勢を僕たちも学ばなくちゃいけないですね。危ないことやっているわけですから。

精魂込めて製作したクルマが本番前にクラッシュしてしまったことに対し、周囲から「悔しいでしょ」とか「がっかりして落ち込んでいるでしょ」なんて言われますが、そんなことはありません。…というより、落ち込んでも何も生まれないので、早く次のことを考えて夢中になりたいと思っていますよ。

ちなみに、今回のマシンアップデートには数年かかるであろうことは最初から覚悟もしていたし、現仕様は作業スタート時に考えた2019年〜2020年の最先端スペック。想定するタイムは筑波47秒台。セットアップを決めたらいけたのか? 気になりますね。ちなみに僕の頭の中ではもういってますよ、今、脳内で48秒台(笑)。

「日本のチューングが世界一であってほしい、だから僕は走り続ける」

シルビアを走らせようにも、まだフレームの状況とか分からないんですが、修理できるとしても持ち時間や予算を考えると1シーズン以上走れなくなるかもしれません。となると、筑波の王座は本当に危ういでしょうね。でも、それで良いんです。切磋琢磨してみんなで競っているんだから、一度出したタイムが抜かれない方がつまらない。

そして僕…、実はランキングにはあまり興味がないんです。ただ、自分は速くなりたい。だから、いろいろ考えて努力する。結果が出ればひとつ満足、出なかったらその理由を考える。レベルや次元は全く違いますが、筑波1分をなかなか切れなかった時も、世界一を目指している今も、基本的な姿勢や気持ちは変わってないと思うんですよね。

でも、世界一にはなりたい。順位を気にしていないことと矛盾するように聞こえるでしょうが、僕なりの思いがあるんです。これは、自分が世界一になりたいっていう感覚とは違って、僕はね、自分が信じて憧れてきた日本のチューニングが世界一であって欲しくて、世界の人に一目置かれる日本であって欲しいから一番になりたいんです。もしかしたら、僕じゃなくて、どこかの大きなメーカーさんでも良いと思います。

というのも、最近、世界のチューニングレベルが非常に高くて、逆に日本のチューニングが旧態依然としている。段々と日本のチューニングなんて…と、世界の人が振り向かなくなってきているのを感じるんです。これ、悲しいですもん。

だから、僕は全てを費やして世界一を取りたいんです。近年、WTACの優勝者は海外勢続き。さらに、自分が取り入れたい部品の大半も今では外国製ばかり。欲しい技術や情報も海外から伝わってくるものが多いん

ですよ。それも悔しいんです。

「僕の人生の半分以上はシルビアを速くすることに捧げてきた」

「 マシンはずっとシルビアで行くんですか?」ってたまに聞かれるんだけど、それは分からない。今のシルビアは、ノーマルのストリート仕様から乗ってきてコツコツと作ってきたからすごく思い入れもあるし、大切な相棒です。そして、アンダー鈴木=シルビアというイメージが定着しているのも理解しているし、あちこちでシルビア好きから声をかけてもらえるのも嬉しいし。

でも「一生シルビアで行きます」みたいになって呪縛されるのは嫌なんですよね。ところが、じゃあ次にクルマ作り替えるならベースは何にする?となったら、やっぱりシルビアを選ぶでしょうね…。だって、僕の人生の半分以上は、シルビアを速くすることに捧げてきたので、クルマを変えたら今まで蓄えてきノウハウ…半減しちゃいますもん。きっと5年以上後退しちゃいます。

それに、シルビアのカーボンエアロの型も持ってるし(笑)。これをイチから作ったら、それだけで何年かかるか分からない! だから、結局シルビアに乗り続けるんだと思いますよ、考えられる限り。

まぁ、なんだかんだいってシルビアが好きなのも確かです。クルマ作りに関しては、今はWTACへの参戦と世界一になることが前提なので、そのレギュレーションに合わせて作っています。

本音を言えば、筑波をターゲットにしていた頃のように、レギュレーション無しの状態で自分の思うがままにメイキングしていきたいんですけどね。でも、当分我慢です。

話が変わりますが、タイヤの話。僕、今使っているからヨイショするわけではなくて、アドバンが大好きなんです。子供の頃、アドバンカラーに憧れて、土屋圭市さんに憧れて、織戸さんに惚れて育った。だから、オーストラリアで横浜ゴム(オーストラリア)の人たちの計らいで、自分のクルマにアドバンのラインを入れてもらった時、本当に嬉しかった。今でもそのラインは入れたままにしています。

なにはともあれ、世界一の称号はまたしばらくお預けになってしまいました。もちろんこれからも挑戦は続けていきますので、応援よろしくお願いします。(聞き手:OPTION編集部)