ルノー・メガーヌRSトロフィーRが鈴鹿サーキットでタイムアタック! 先代を3秒も上回る2分25秒454の大記録達成!!

■ニュルで市販FF車最速の座に君臨する最強ウエポン「トロフィーR」

●カーボン製アイテムを随所に採用して130kgの軽量化を実現

ルノー・メガーヌRSトロフィーRが鈴鹿サーキットでタイムアタックを実施し、2分25秒454を叩き出しました。先代モデルを実に3秒も上回る好タイムで、1.8LターボエンジンのFFモデルが市販状態のまま記録したタイムとしては驚異的なものです。

トロフィーR
鈴鹿サーキットでタイムアタックを行なったメガーヌRSトロフィーR。

メガーヌRSトロフィーRは、ルノーが誇る最強ウエポンです。メガーヌのスポーツモデルであるRSをベースに、21psのパワーアップ(最高出力300ps)を果たしたエンジンやハードな味付けが施されたシャシー(シャシーカップと呼ぶ)、トルセンLSDなどが与えられたハイパフォーマンスモデルが「トロフィー」なのですが、「トロフィーR」はさらにその上を行きます。ルノー自身が「エクストリームなモデル」と表現するほど、速さにこだわったモデルとなっています。

エンジン
1.8L直4ターボエンジン「MR18」を搭載。300psという最高出力はトロフィーと同様。
トロフィーRのリヤビュー
トロフィーに対して130kgの軽量化を果たしています。

トロフィーRの大きな特徴は、130kg(!)もの軽量化です。ライザップばりのダイエットを行ったわけですが、その主なメニューは以下の通りです。
・カーボンボンネットの採用
・カーボンホイールの採用:-16kg(4輪分)
・アクラポビッチ製チタンマフラーの採用:−6kg
・後輪操舵機構の取り外し:−38kg
・ポジションランプ(RSビジョン)の取り外し:-2kg
・軽量バッテリーの採用:-4.5kg
・サベルト製バケットシートの採用:−14kg(2脚分)
・リヤシートの取り外し:-25.3kg

カーボンボンネット
わずか8kgの軽さを誇るカーボンボンネット。裏側の仕上がりも美麗!
バッテリー
キャパシタとリチウム電池を組み合わせた軽量バッテリー。
インパネ
トロフィーRのトランスミッションは6速MTのみ。EDCを選ばなかったのは、軽量化を重視したため。
シート
タイトに身体をホールドするサベルト製シート。リクライニング機構はありませんが、取り付け高さは3段階から選べます。
荷室
荷室の床には、「R」の文字が刻まれています。オプションのカーボンホイールをオーダーすると、リヤシートが取り除かれたスペースに4本が収まって納車されるそうです。

このほかにもリヤドアウインドウの上下機構が取り外れていたり、リヤワイパーがなかったりと、ボディの隅々に至るまで軽量化のための変更が施されています。驚きなのは、マルチメディアスクリーンの液晶画面サイズをノーマルの8.7インチから7インチに変更していること。わずか250gが削られただけなのですが、減量に対するルノー・スポールの執念、恐るべし! 戦いのために極限まで体重を絞った力石徹(あしたのジョー)の姿が一瞬、頭に浮かんだのでした。

●トロフィーRならではの専用装備の数々

さて、トロフィーRのシャシーはトロフィーを基本的にベースとしているのですが、後輪操舵機構の取り外し以外にも細かく手が加えられています。

ブレーキは390mmという大径のカーボンセラミックディスクをフロントに採用(オプション)。タイヤはトロフィーがブリヂストン・ポテンザS001なのに対して、トロフィーRはS001の後継タイヤである最新のS007を履きます。

サスペンションはオーリンズで、前後ともに16mmの車高調整機構が備わるだけでなく、減衰力を伸び側と縮み側で個別に調整することが可能となっています。また、フロントキャンバーは1度ほどトロフィーよりもネガティブ寄りにセッティングされているのも特徴です。

カーボンホイール
カーボンホイールはオプションで用意。標準装備のアルミホイールがトロフィーのものから1本あたり2kg軽くなっており、カーボンホイールではさらに2kg軽くなっているそうです。ブレーキディスクもカーボンセラミック製となっていますが、こちらもオプション。
鍛造ホイール
こちらが標準のアルミ製ホイール。タイヤはブリヂストン・ポテンザS007。

そして、エアロダイナミクスの要素もトロフィーRを語る上では欠かせません。カーボンボンネットにはレーシングマシンなどではお馴染みのNACAダクトを配して、空気抵抗を増やすことなくクーリングエアをエンジンルームに導きます。また、メガーヌRSやトロフィーに装着されているRSビジョンと呼ばれるポジションランプは取り外され、代わりにエンジンの吸気口まで通じるエアダクトが設けられました。

NACAダクト
ボンネットに設けられたNACAダクト。スバルWRXのボンネットダクトはインタークーラーの冷却用ですが、トロフィーRのエアダクトはエンジンルーム後部のタービン部付近に導かれているようです。
エアダクト
LEDのポジションランプがなくなり、エアダクトとなっているのがわかります。

さらに、フロントからフロア下を流れる空気がよりスムーズに流れるように配慮されるとともに、F1マシンのような湾曲したディフレクターを備える大型のリヤディフューザーがダウンフォースを発生させることで、高速域でのスタビリティを大幅に向上させています。

ディフューザー
大型化されたリヤディフューザーの中央部に、アクラポビッチ製マフラーのテールエンドを配置。

ルノー・スポールが本気を出すとここまでやるのか…と畏怖すら覚えるほどのマシン、メガーヌRSトロフィーR。そのポテンシャルを日本に知らしめるために、トロフィーRは今回、鈴鹿サーキットまで遥々空輸されてやってきたというわけです。

●4月にはニュルで市販FF車最速タイムをマーク

そんなトロフィーRのステアリングを握ったのは、ルノー・スポールのトップガン・ドライバーであるロラン・ウルゴンさんです。実はウルゴンさん、4月にはニュルブルクリンクの北コースでもタイムアタックを行なっていました。「緑の地獄」と呼ばれるほどの過酷なコース(1周20.6km)を走り切って記録したタイムは、7分40秒100。それまでホンダ・シビックタイプRが保持していたFF市販車最速の称号を見事に奪い返してみせました。

ウルゴン
ルノー・スポールの開発ドライバーであり、サーキットでのタイムアタックを担当するロラン・ウルゴンさん。気さくですごくいい人!

ちなみにメガーヌRSは、2008年からモデルチェンジなどの節目ごとにニュルブルクリンク詣をしています。そのタイムの変遷は以下の通りですが、約10年の間に37秒もタイムを削り取っているのですから、技術の進歩には驚かされます。

・2008年:メガーヌRS R26.6…8分17秒
・2011年:メガーヌRSトロフィー…8分07秒97
・2014年:メガーヌRSトロフィーR(先代)…7分54秒36
・2019年:メガーヌRSトロフィーR…7分40秒100

●先代のタイムを上回るのは当たり前!?

さて、今回鈴鹿サーキットでタイムアタックを行うにあたって、ターゲットとなったのは先代モデルが2014年11月にマークした「2分28秒465」です。じつは前日のテスト走行の際にウルゴンさんは2分27秒台で走行しており、あっさりと新記録は樹立されていたのでした。ところが、ウルゴンさんをはじめとするルノーのスタッフは険しい表情を崩しません。はて? もっと喜んでもいいはずなのに…。

ストレート
本番の前日、テスト走行を重ねるトロフィーRですが…。

じつは、メガーヌRSトロフィーRは2月にこの鈴鹿サーキットで極秘テストを行なっており、レーシングドライバーである谷口信輝さんのドライブで2分25秒7を切るタイムをマークしていました。ルノーのスタッフはメディアに公言していませんでしたが、じつは彼らの今回のミッションは、その2月のタイムを超えることだったのです! そのためには、あと2秒削り取らなければなりません。気温が2月よりも高いという不利な条件の中、果たして大団円を迎えることはできるのでしょうか。

ジャン・カルカ
ウルゴンさんと話しているのは、ルノー・スポールの国際営業マネージャーを務めるジャン・カルカさん。セールス部門の偉い人です。ルノー・スポールにとって、日本のマーケットはフランス、ドイツに次ぐ第3位。来年は、日本がナンバー1になるという目標を掲げています。そんな背景もあって、鈴鹿のタイムアタックも失敗するわけにはいかないのです。

そして迎えた、タイムアタック本番の11月26日。ウルゴンさんに与えられたのは、2時間の占有走行枠です。いつも温和な表情のウルゴンさんですが、ヘルメットを被ってシートに座るとスイッチオン。ルノー・スポールの開発ドライバーとして、自身が手塩にかけて鍛え上げた最強マシンのポテンシャルをフルに引き出すために集中力を高めて、いざコースインです。

シケイン
インリフトさせながら、トロフィーRに鞭を振るウルゴンさんのアタック。

ピットの我々は、モニターに表示されるタイムを固唾を飲んで見守ります。ホームストレートに戻ってきたウルゴンさんとトロフィーR。記録は…2分25秒749! ミッションクリアはなりませんでしたが、素晴らしいタイムです。グッジョブ、ウルゴン!

続いて、谷口信輝さんがコースインしました。今回のタイムアタックのメインはウルゴンさんでしたが、スペシャルゲストとして谷口さんも控えていたのです。鈴鹿サーキットを熟知しているという点では、ウルゴンさんよりも谷口さんに分があります。その地の利を生かした谷口さんが出したタイムは、2分25秒656! 2月のタイムを自身のドライブで上回ってみせたのでした。少ないラップ数、限られた時間にも関わらず、本番できっちりとタイムを出すあたりはさすがというほかありません。

谷口信輝
谷口さんの好タイムを称えるウルゴンさん。この日のイベントはめでたく終了したかと思いきや…。

●ウルゴン、最後にトレビアンなアタック!

いやぁ、よかったよかった。いいタイムアタックが見られたし、コース上での記念撮影も終わったし、ぼちぼち暗くなってきたから帰る準備を始めようかな、と思い始めたそのときです。さっきまでコーヒーを飲んで談笑していたウルゴンさんが、再びヘルメットを被りはじめたではありませんか。谷口さんの好タイムを笑顔で称えていたウルゴンさんですが、「自分に課せられたミッションは、自分でかたを付ける」とでも言わんばかりに、再び真剣モードに突入です。

S字コーナー
S字をクリアするトロフィーR。イン側のタイヤが縁石の内側にはみ出すほど攻めています。

とはいえ、残り時間はわずか。今回ばかりはウルゴンさんも谷口さんに花を持たせることになるのか…。しかし、ルノー・スポールのトップガン・ドライバーの称号は伊達ではありませんでした。タイミングモニターに表示されたタイムは、2分25秒454!! 慣れない右ハンドル車というハンディキャップをものともせず、ウルゴンさんは素晴らしいタイムを叩き出し、見事にミッションクリアを果たしたのでした。

ほっとするウルゴン
ベストタイムを出してホッとした表情のウルゴンさん。この日一番の笑顔!

今回印象に残ったのは、一発のタイムの速さはもちろんですが、ドライビングスタイルの異なるウルゴンさんと谷口さんがそれぞれアタックした結果、両者のタイム差がほとんどなかったということ。この事実こそ、メガーヌRSトロフィーRのパフォーマンスの高さと懐の広さを物語っていると言えるのかもしれません。

谷口さんは、今回のタイムアタックを終えて次のように語りました。
「トロフィーRは、加速する、曲がるがめちゃくちゃ楽しいクルマです。運転手を補佐してくれる電子デバイスはABSくらいですが、素性の良さが際立っています。エンジンは1.8Lとは思えないほどパワフルで、なおかつレスポンスもいいですね。

トロフィーRに限らず、全般的にメガーヌRSシリーズはめちゃくちゃ良くできています。中でも、ほとんどの人にオススメできるのはトロフィーですね。トロフィーRは、腕に自信がある人向け。限界の向こうに行ったときにクルマが助けてくれませんから。でも、腕とおカネに覚えがある方は、トロフィーRにぜひチャレンジしてほしいですね」

谷口信輝
スーパーGTほか、数々のレースでチャンピオンに輝いた実績を持つ谷口さんからも、メガーヌRSシリーズの素性の良さに関しては絶賛の言葉しか出てきません。

●トロフィーRは東京オートサロン2020に出展

なお、ルノー・メガーヌRSトロフィーRは、2020年1月10日(金)〜12日(日)に開催される東京オートサロン2020(幕張メッセ)のルノーブースに展示されることが決定しました。

サイドシル
サイドシルのプレートにはシリアルナンバーが刻まれます。

メガーヌRSトロフィーRは全世界で500台限定で、カーボンセラミックブレーキを含む「カーボンセラミックパック」は30台のみが用意されるそうです。そのうち、日本での割当が何台になるのか、また気になる価格はいくらになるのかは、東京オートサロン2020の会場で明らかにされるとのこと。市販車FF最速マシンをその目で確かめたい方は、ぜひ会場に足を運んでみてください。

記念写真
トロフィーRとルノーのスタッフで記念撮影。素晴らしいタイム、おめでとうございます!

【主要諸元】
メガーヌ ルノー・スポール トロフィーR

エンジン種類:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1,798cc
最高出力:300ps(220kW)/6,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3,200rpm
トランスミッション:6速MT
車両重量:1,306kg
タイヤサイズ:245/35R19
最高速:262km/h
0-100km/h加速:5.4秒
※数値はすべて海外仕様

トロフィーRのサイドビュー
フランス本国でのトロフィーRの価格は、55,000ユーロからとなっています(日本円で約660万円)。日本での価格がいくらになるのか気になりますが、東京オートサロン2020での発表を待ちましょう。

(写真:前田惠介/ルノー・ジャポン、文:長野達郎)