プリウスG’sに10万km乗ってみたら、トヨタの本気が見えてきた!

2010年に国内導入された、トヨタのスポーツブランドG’s(現在はGRに改編)は、クルマの走る楽しさにフォーカスした、トヨタにとって非常に攻めたブランドでした。このG’sモデルを10万km以上乗った筆者が、G’sから見えるトヨタの本気を解説していきます。

■そもそもG’sとは何か

トヨタの本気のスポーツブランドG’sは、市販車のパワートレインには一切手を加えず、スポット溶接の打点増しや、専用の補強パーツの追加、サスペンション、ショックアブソーバーの変更、タイヤの変更を中心に、走行性能を大きく引き上げたモデルです。

メーカーの生産工場で改造を施すことにより、アフターパーツとしては大きなコストのかかる補強工程を、安価にかつ緻密に計算された場所に行えるのが最大のメリットです。出荷状態ではメーカー届け出を行っている通常状態と、エアロパーツの取り付けにより全長が変わったり、専用サスペンション設計で最低地上高の変更などがあることから、すべてのクルマが持ち込み車検での登録となります。

無駄を省き、効率を重視するトヨタが、なぜこのような面倒とも思えるクルマを作ったのか、このクルマに長く乗ると、その意味合いが強く見えてきます。

●様々な部分の剛性が高いクルマは、長くエコロジーに乗り続けられる

トヨタディーラーの営業マンとなって、すぐに購入したのが現在も所有するプリウスG’sです。当時は86などのスポーティカーも未発売、G’sブランドもノア/ボクシー、ヴィッツに続いてプリウスに設定された程度で、認知度も高くありませんでした。営業としての話題作り半分で購入したのを覚えています。

そこから5年で10万kmを乗り、数々の通常のプリウスと比べてG’sが優れている点が多くあります。

まず、足まわりがヘタりません。専用チューニングされたショックアブソーバーとダウンサスは、13万kmを超えてなお、ミシリとも言わず安定した走行を続けています。もちろんオイル漏れや滲みなども皆無です。

足まわりの部品が劣化してくると、ボディ全体に細かな歪みが出てきますが、そのようなこともありません。補強部品が非常に効率よく働いているのでしょう。クルマの健康診断と思い、新車時にアライメント測定を行ったタイヤ館に、10万kmを走破した後、アライメント調整をお願いしたところ、「新車当時から寸分違わず同じ状態で、調整の必要がありません」とそのままクルマを返されました。

多くのプリウスを見てきていますが、10万km走ってアライメントにずれのないクルマを見るのは初めての事でした。もちろん、タイヤの編摩耗などもなく、消耗部品のライフも長くなっています。

現在7年を超える所有期間で14万kmオーバーですが、大きな部品の交換はありません。エンジンオイルやエレメントなどの定期交換部品(油脂類)と、補機バッテリー、タイヤ交換程度の必要最低限の消耗部品の交換で済んでいます。ブレーキパッドも無交換で、4.4mm以上の残があるのも驚きでした。

●モアパワーではなく、素性を伸ばすチューニング

G’sを見ていると、トヨタというメーカーが考える楽しい走りが何なのかが分かってきます。チューニングはエンジンパワーを上げたり、エアロパーツで見た目を変えたり、マフラー交換で音を変えたりと、目や耳で楽しむ部分が多くありますが、G’sは見えない部分に非常に細かく手を入れています。

リフトアップしなければシャシー下の補強部品は見えませんし、スポット溶接の打点増しもわかりません。ステアリングギア比が変わり、ロックトゥロックの回転数が少なくなっていることも見た目ではわかりません。ただ、運転席に乗り込み、タイヤをひと転がしすれば、「おや? 違うぞ」ということは必ずわかります。それは見て聞いて楽しむよりも奥深い、感性に働きかけるチューニングです。

普段の道路で、クルマが意のままに進み、止まり、曲がっていく喜びは、いつでも感じることができます。サーキットなどの特別な環境下で走らなくても、日常のドライビングを気持ちのいいものにしてくれる、これがトヨタの本気のクルマ作りなのだと感じました。

●まとめ

G’sの技術は、その後のマイナーチェンジでG’sグレード以外の通常グレードにも使われることが多く、トヨタのクルマ作りの先頭を走り続けるブランドです。現在はGRブランドに変わり、モータースポーツで培われた技術も多く採用されています。トヨタの技術者が本気になったクルマ作りをGRブランドで体感してみてください。

(文:佐々木 亘)