【自動車用語辞典:吸排気系「吸気マニホールド」】エンジンに空気をできるだけ多く、均等に吸い込む仕組み

■エンジンのトルク向上に効果的

●吸気の慣性や脈動を活用する

吸気マニホールドの役割は、エンジンの各シリンダーに吸入空気をできるだけ多量かつ均等に供給することです。そのためには、吸気マニホールドの吸気ポート内に発生する吸気の慣性や脈動を効率よく活用することがポイントです。

吸気マニホールドの最適化の考え方について、解説していきます。

●高出力を実現するには

エンジンのトルクを向上するためには、吸入空気量を増やす、充填効率を高めることが最も効果的です。吸気流れの動特性を利用して充填効率を上げる手法として、慣性効果と脈動効果があります。

そのためには、吸気系全体、特に吸気マニホールドの吸気ポート径や吸気ポート長、サージタンク容量などを最適化することが重要です。

サージタンクは、スロットルの下流に設けられ、吸入空気はそこから吸気ポートを通して各気筒のシリンダーへ分配されます。

サージタンクには、吸入空気の気筒間干渉を避け各気筒へ均一に分配するために、ある程度の容積が必要です。ただし、大きすぎると吸入空気の応答性が悪化するので、一般的にはエンジン排気量程度の容積が設定されます。

●充填効率とは

吸気効率の指標として、一般的なのは充填効率です。

体積効率は、1回の吸気行程で吸入した実質的な空気量を排気量(行程容積)で割った値です。これを標準状態(大気圧760mmHg、20℃、湿度60%)における値に正規化したのが充填効率です。

排気量と同量の空気がシリンダー内に供給された場合、充填効率は100%です。

吸気マニホールド
吸気マニホールドの仕組み
吸気の慣性効果
ピストンが下死点を過ぎても慣性によって吸気は入ってくる

慣性効果は、吸気の慣性力を利用してより多くの空気をシリンダー内に押し込む方法です。

吸入行程で、ピストンが下降し始めると空気がシリンダー内に入ってきます。気柱(管の中の柱状の空気)の慣性によって、ピストンが下死点を過ぎて上昇し始めてもまだ入ってくるので、吸気ポート内の正の圧力が最も高くなった(空気の密度が高い)時に、吸気弁を閉じます。

こうすることで、充填効率は最大になり、条件によっては充填効率が100%を超えることもあります。

●脈動効果

エンジンは燃焼に必要な空気を間欠的に吸入するため、吸気弁付近で発生した負圧が吸い込み口へ伝播し解放端で反射することによって、吸気ポート内には吸気脈動が発生します。この脈動の正の圧力波が吸気弁閉時期に合致した時に、充填効率が最も向上します。

脈動効果は、解放端で反射した正の圧力波を次の吸気行程で利用するため、実用回転を超えた高回転でしか利用できず、さらに圧力波は振動によって減衰するので慣性効果に比べると効果は小さく、期待できません。

●吸気マニホールドの最適化

慣性効果を最大限利用するためには、吸気マニホールドはどのような仕様にすべきでしょうか。

吸気マニホールドは、シリンダーが共鳴器で吸気ポートが連通管で構成される「ヘルムホルツの共鳴器」と考えることができ、吸気行程1サイクルで共鳴現象が成立する条件で慣性効果が発揮されます。慣性効果を発揮するエンジン回転速度Nは、以下のように表されます。

N = cθ/12π x √(S/VL)
(c:音速、θ:吸気弁の作動角、S:連通管(吸気ポート)面積、V:共鳴室(シリンダー容積)、L:連通管(吸気ポート)長さ)

以上より、慣性効果が発生するエンジン回転数は吸気ポート径に比例し、長さの平方根に反比例し、またシリンダー容積の平方根に反比例することが分かります。

一般的に言われるように、吸気ポートを細く長くすれば低速トルク型エンジン、吸気ポートを太く短くすれば高速トルク型エンジンになることを示しています。

吸気ポートによるトルクの違い
吸気ポートの形状を変えることでエンジンのトルク特性を変えることができる

吸気の慣性効果を利用すれば効果的にエンジントルクを向上させることができますが、脈動のためエンジン回転によっては、トルクの谷も発生してしまいます。

これを解決するのが、次頁で解説する可変吸気システムです。

(Mr.ソラン)