914から718へと繋がる、ポルシェ・ミッドシップスポーツのフィロソフィー

914から718へと繋がる、ポルシェ・ミッドシップスポーツのフィロソフィー

Porsche 914 & 718 Cayman GT4

ポルシェ 914 & 718 ケイマン GT4

50年前に登場した初の生産ミッドシップ「914」

50年前、ポルシェはモータースポーツから持ち込んだミッドシップレイアウトを市販モデルに落とし込んだ「914」を発表した。リヤアクスル前にエンジンを搭載した「718ケイマンGT4」と「718ボクスタースパイダー」は、914から続くミッドシップ・ポルシェの最新モデルである。

視界に入ってくる前から、そのサウンドは明らかに違う。最初は少しくぐもった、続いて空気を震わせるようなエキゾーストノートがその場に響く。それはポルシェ製ボクサー6だからこそ実現できた美しいシンフォーニーと言えるだろう。最新ポルシェと914の間には半世紀という月日の開きがあるが、そこには共通のコンセプトが存在している。

ポルシェにおいてGTカーのディレクターを務めるアンドレアス・プレウニンガーは、ミッドシップ・ポルシェは他にはない魅力を持っていると指摘する。

「ポルシェのミッドシップスポーツカーは、現在まで変わらない魅力的なキャラクターを備えています。まずはコクピットがエンジンに近いことで、よりエモーショナルなドライビングが可能です。個人的に、これこそがミッドエンジンの最も大切な要素になります」

Porsche 914/6

ポルシェ 914/6

ミッドシップの採用で911よりも短く低いディメンション

1969年まではすべての市販ポルシェがリヤエンジン・リヤ駆動であり、そこには一切の疑問はなかった。

しかし、取り外し可能なタルガルーフとポップアップヘッドライトを備えた914の登場により、その常識が覆されることになった。914はレーシングカーのように、リヤアクスル前方に4気筒か6気筒のボクサーエンジンを搭載。1967年製911 Sよりも短い全長ながら、逆にホイールベースは24cmも長かった。全高は1.23mと911よりも9cm低く、全幅は4cmワイド。この結果、非常に軽い車重と低い重心が実現した。

最高出力110hpを発揮する2リッター水平対向6気筒エンジンを搭載した「914/6」でさえ、重量はわずか980kg。そして重心はクルマの中心部にあった。80hpの4気筒仕様「914/4」は俊敏に気持ちよく走るスポーツカーであり、特に路面へ吸い付くようなコーナリングが高く評価された。ちなみにこの914/4はイグニッションが右側にあり、ハンドブレーキは運転席の左側にある。

718の開発ディレクターを務めたジャン・ロスは、「ミッドエンジンのスポーツカーは、狭くてツイスティなコースにおいてベストと言える存在です。軽快なハンドリングと俊敏性は特筆すべきレベルです」と説明する。

1976年までに、4気筒仕様の914/4はドイツ・オスナブリュックのカルマン社で11万5631台を生産。トップモデルの6気筒仕様・914/6は、ツッフェンハウゼンのポルシェ本社工場において1972年までに3338台が製造されている。また、210hpまでにパワーアップした「916」が11台、レース用に開発された「914/6 GT」が12台、8気筒レーシングエンジンを搭載した2台のプロトタイプがフェルディナンド・ピエヒとフェリー・ポルシェのために製作された。

914以前にも存在したミッドシップ・ポルシェ

914の成り立ちはフォルクスワーゲンとポルシェによる協力関係の賜物だったが、残念ながら両社のコラボレーションはすぐに終わりを告げてしまう。今となっては、短いスカートや長いもみあげが流行した1970年代カルチャーを代表する1台となった。

ポルシェにとってミッドシップレイアウトは、914から始まったものではない。実際、フェルディナント・ポルシェは1930年代には早くもミッドシップのコンセプトを導入。彼が携わった1934年製「アウトウニオン タイプ22」は、ミッドシップレーシングカーとして登場している。

そして1948年に登場したポルシェ初のスポーツカー「356-001」は、1131cc空冷水平対向4気筒エンジンをリヤアクスルの前方に搭載。ミッドシップレイアウトを採用していた。

しかしこの2シーターコンバーチブルは、フェリー・ポルシェが要求したラゲッジスペースを確保することができなかった。その結果、クーペモデルではエンジンが後方へと移動。フロントシートの後ろにエマージェンシーシートと荷物用のスペースが設けられている。これが古典的なRR(リヤエンジン・リヤ駆動)ポルシェ誕生の瞬間だった。

ミッドエンジンは、市販モデルでは914の誕生まで待たなければならなかったが、レースの世界では大活躍を見せた。特に1954年にデビューした「ポルシェ 550」は水平対向4気筒エンジンをミッドに搭載し、その時代を象徴するレーシングカーとして知られている。特にジェームズ・ディーンが所有した「550/1500RS」は、そのドライブ中に彼が事故死したことで人々の記憶に刻まれている。

Porsche Boxster(1996)

ポルシェ ボクスター(1996)

20年ぶりにボクスターで復活を果たしたミッドエンジン

914の生産終了後、ポルシェは約20年にわたりミッドシップスポーツカーから離れることになった。ツッフェンハウゼンのエンジニア達は、924、928、944、968など、フロントにエンジンを搭載したトランスアクスルスポーツカーに集中した。そして1996年に久々のミッドシップスポーツ「ボクスター」がデビューを飾る。

水平対向6気筒エンジンはリヤアクスル前に搭載され、コクピットに響き渡るエキゾーストノートはマーケットに大きなインパクトを与えた。そして2005年にはクーペ仕様の「ケイマン」もラインナップに加えられている。

「1990年代、ミッドエンジンを再びラインナップに加える決定は、911とは異なるレンジを作りたいという目的がありました。ボクスターは明らかに911とは異なるアピアランスに加えて、中央に重量物を配置したバランスのとれた重量配分により、洗練された運動性能を実現しています」とジャン・ロスは振り返る。

Porsche 718 Cayman GT4

ポルシェ 718 ケイマン GT4

ドライビングプレジャーの追求という変わらない精神

ボクスターとケイマンは大ヒットを記録。2016年には第4世代となる現行モデルの「718」がデビューした。718の外観は550スパイダーを思い起こさせ、当時と同じ4気筒エンジンをミッドに搭載するが、そのパワーユニットは最新のターボチャージャーで武装される。

そして2019年、420hpを発揮する水平対向自然吸気4.0リッター6気筒エンジンを搭載した「718ケイマンGT4 」と「718ボクスタースパイダー」が登場した。

この2台は、911 GT3やカップカーでの経験がフィードバックされ、大幅に鍛えられた足まわりやシャシーを採用。アップデートしたエアロダイナミクス、ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)やポルシェ・スタビリティ・マネージメント(PSM)などの最新デバイスを採用し、よりレーシーなドライビングプレジャーが提供される。

「私たちは、真のポルシェ・ファンのためにこの2台を開発しました。彼らはスペックだけに注視することはありません。純粋なドライビング性能に惚れて、手に入れるのです」と、アンドレアス・プレウニンガーは自信たっぷりに語った。

914から50年。ポルシェのミッドシップスポーツは当時では考えられないほどの安全性と高性能を手に入れた。しかしドライビングプレジャーを追求するという基本精神は、パイオニアの914も最新の718も少しも変わらないのである。